ヒル療法(ヒルセラピー)は糖尿病に効く?エビデンスを検証
この記事でわかること
目次
結論から言うと
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症状はいつから続いていますか?
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ヒル療法(ヒルセラピー)は、糖尿病そのものを治す治療法として確立されたものではありません。医療用ヒルは米食品医薬品局(FDA)が2004年に医療機器として承認していますが、その適応は皮弁・移植組織の静脈うっ滞(血流障害)の改善に限られ、糖尿病の血糖コントロールや合併症の「治療」を目的とした承認ではありません[3]。Frontiers in Medicine誌の報告によれば、糖尿病神経障害への応用を調べたランダム化比較試験(RCT)は現時点で世界に1編のみで、参加者数も限られています[6]。
「驚異の治療法」「革新的アプローチ」といった宣伝文句を目にして検索した方も多いはずですが、日本糖尿病学会のガイドラインが示す糖尿病治療の標準は今も食事・運動・薬物療法とフットケアであり[1]、厚生労働省も「効果が証明されていない療法で従来の内科的治療を置き換えないこと」を明確に注意喚起しています[2]。この記事では、ヒル療法の仕組み・現時点でわかっていること/いないこと・リスク・日本での位置づけ、そして糖尿病の足のトラブルに本当に効果が確認されている標準治療までを、出典を明示しながら整理します。
要点まとめ
- 米FDAはヒルを2004年に医療機器として承認済みだが、適応は皮膚移植・皮弁の静脈うっ滞改善のみで糖尿病治療ではない[3]
- Frontiers in Medicine誌の系統的レビューによる糖尿病領域でのRCTは1編のみ(対象は糖尿病神経障害の症状、血糖値そのものではない)[6]
- 日本ではヒル療法を糖尿病の治療法として承認・保険適用している制度はなく、実施施設は限られる
- 国立健康危機管理研究機構の報告によれば、感染症(アエロモナス感染など)や出血のリスクがあり、血流障害のある糖尿病患者は特に注意が必要[4]
- 日本糖尿病学会のガイドラインで科学的根拠が確認されているのは集学的フットケア(大切断リスクを48%減)であり、迷ったら受診が先[1]
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、厚生労働省・国立健康危機管理研究機構・日本糖尿病学会・査読論文(PubMed/Frontiers in Medicine)と照合して作成。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
ヒル療法(ヒルセラピー)とは?唾液成分が働く仕組み
ヒル療法(英語でhirudotherapy、日本語ではヒル療法・ヒルセラピーと呼ばれる)は、医療用ヒル(Hirudo medicinalis など)を患部の皮膚に吸着させ、吸血時に分泌される唾液成分を利用する治療法です。Frontiers in Medicine誌の系統的レビューによれば、ヒルの唾液には、血液を固まりにくくするヒルジン(抗凝固作用)、血管を広げる血管拡張成分、炎症を抑える成分、痛みを和らげる成分などが含まれることが報告されています[6]。
現代医療でヒルが実際に使われている場面は、指の切断による再接着手術や皮弁・皮膚移植の手術後に、静脈側の血流(うっ滞)がうまく戻らず組織が壊死しそうなときです。PMC掲載の総説論文によれば、動脈血は流れ込むのに静脈側の血の戻りが悪い状態で、ヒルに吸血させることで一時的にうっ血を解消し、組織が生着するまでの橋渡しをする、という限定的な使い方です[3]。この用途で米食品医薬品局(FDA)は2004年、Ricarimpex社の医療用ヒルを医療機器(510(k))として承認しました[3]。
上図:Frontiers in Medicine誌の系統的レビューをもとにJHO編集部が作成[6]。ヒルの唾液成分がもたらす局所的な変化と、糖尿病の本態(膵臓のインスリン分泌不足・全身のインスリン抵抗性)は、現時点では別々の仕組みとして理解されている。
一方、「糖尿病を治す」「血糖値が下がる」という文脈でヒル療法が語られる場合、そのメカニズムとして唾液成分による血流改善・抗炎症作用が神経の症状を和らげるのではないか、という仮説が提示されているに過ぎません。Frontiers in Medicine誌の報告でも、血糖値そのものを下げる、あるいはインスリンの働きを改善するという生理学的な機序は、現時点の文献では確立されていません[6]。「仕組みがそれらしく説明されている」ことと「治療効果が証明されている」ことは別の話であり、この違いを混同しないことが重要です。
糖尿病は、膵臓から出るインスリンの量が不足する、あるいはインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことで血糖値が慢性的に高くなる病気です。ヒルの唾液成分が実際に作用するのは主に「血液が固まりにくくなる」「血管が広がる」「炎症・痛みが和らぐ」という局所的な変化であり、膵臓のインスリン分泌そのものや、全身の細胞がインスリンにどう反応するかという根本的な仕組みに直接働きかける経路は、現時点の研究では示されていません。局所の血流改善が神経症状を間接的に和らげる可能性はあっても、それは「糖尿病を治す」こととは次元が異なる話だという整理が重要です。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
糖尿病への効果はどこまで研究されているか — エビデンスの現在地
2024年に医学誌Frontiers in Medicineに掲載された、ヒル療法に関する系統的レビュー(ランダム化比較試験のみを対象とした調査)では、2003年から2022年までに発表された12編のRCTが分析されました[6]。このうち、糖尿病領域を対象とした研究はAlemi らによる2022年の1編のみでした[6]。
この研究の対象は「2型糖尿病による下肢の糖尿病性神経障害」を持つ患者(平均年齢55.25±9.61歳、女性70%)で、視覚アナログスケール(VAS)や神経障害症状スコア、神経伝導速度などを指標に評価が行われ、「神経障害の症状と兆候の減少」が報告されています[6]。同時に、有害事象として「四肢浮腫(むくみ)」も記録されています[6]。
| 項目 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 対象となったRCTの総数(全疾患) | 12編(2003〜2022年) | 系統的レビューの対象[6] |
| 糖尿病を対象としたRCT | 1編のみ(Alemi 2022) | 対象は下肢神経障害の症状[6] |
| 評価した指標 | VAS・神経障害症状スコア・神経伝導速度など | 血糖値・HbA1cは主要評価項目ではない[6] |
| 報告された有害事象 | 四肢浮腫 | 同研究内での記録[6] |
出典:Frontiers in Medicine「Applications of leech therapy in medicine: a systematic review」(2024年)[6]
つまり、現時点で確認できる範囲では「糖尿病による末梢神経障害の“症状”を和らげる可能性を示唆する小規模研究が1編ある」というのが実情であり、「糖尿病そのものを治療する/血糖値を改善する」というエビデンスは確認されていません。厚生労働省の統合医療情報発信サイト(eJIM)も、サプリメントを含む補完代替医療全般について「ほとんどのサプリメントについては、糖尿病やその合併症に対する有益な効果を裏付けるエビデンスはありません」と明記しており[2]、ヒル療法のような民間療法もこの慎重な評価の外にあるわけではありません。
他の疾患でのエビデンスと比較 — 「全否定」でも「万能」でもない理由
ヒル療法を考えるうえで大切なのは、「怪しい治療だから全部ダメ」でも「一部で効くから何にでも効く」でもなく、疾患ごとにエビデンスの厚みがまったく違うという事実です。たとえば変形性膝関節症(膝のOA)を対象としたメタアナリシス(複数のRCTを統合した解析)では、ヒル療法により1週・4週・7週の時点でVASスコア(痛みの指標)やWOMACスコア(機能障害の指標)に統計的に有意な改善が示され、痛み・機能障害・関節のこわばりの軽減について「中等度から強いエビデンス」があると評価されています[8]。同時に、この解析では「有害事象の発生率が有意に高い」ことも報告されています[8]。
つまり膝の変形性関節症については、痛みという限定的な指標に対して一定のエビデンスの蓄積があるのに対し、糖尿病についてはRCTが1編しかなく、しかも対象は血糖値ではなく神経障害の症状という別の指標です[6]。「ヒル療法=医学的にまったく無根拠」と単純化するのも正確ではありませんが、「糖尿病に驚異的な効果がある」という主張を裏付けるだけの研究は、2026年7月時点ではまだ存在しません。疾患名を混同した宣伝文句(「関節に効くなら糖尿病にも効くはず」といった飛躍)には注意が必要です。
すぐに受診すべきサイン(受診の目安)
以下に当てはまる場合は、ヒル療法などの民間療法を検討する前に、必ず糖尿病内科・皮膚科・フットケア外来を受診してください。
特に、日本糖尿病学会のガイドラインでは糖尿病性足病変は「神経障害や末梢動脈疾患と関連して糖尿病患者の下肢に生じる感染,潰瘍,足組織の破壊性病変」と定義され[1]、同ガイドラインによれば足潰瘍のある糖尿病患者の80〜85%が難治性で、7〜20%が下肢切断に至るとの報告があります[1]。自己判断で民間療法を試して受診が遅れることが、最もリスクの高い選択肢です。
日本と国際的なエビデンス評価の比較
日本国内では、ヒル療法を糖尿病の治療法として位置づけたガイドラインは日本糖尿病学会・厚生労働省いずれからも公表されていません。一方、海外の学術論文ではヒル療法自体の系統的レビューは複数存在しますが、「糖尿病」という切り口で見ると研究の蓄積は極めて薄いのが実情です。両者を並べると、次のような違いが見えてきます。
| 項目 | 日本(厚生労働省・日本糖尿病学会) | 国際的な学術評価(系統的レビュー) |
|---|---|---|
| 糖尿病治療としての位置づけ | ガイドライン等での言及・承認なし[1] | 糖尿病領域のRCTは1編のみ、限定的[6] |
| 補完代替医療全般への評価 | 「効果を裏付けるエビデンスはない」と明記[2] | 他疾患(変形性膝関節症等)では一定の報告もあるが疾患ごとに差が大きい[6] |
| 医療機器としての承認 | 糖尿病用途での承認なし | 米国FDAは静脈うっ滞(外科手術後)用途で2004年に承認[3] |
この比較から見えてくるのは、「ヒル療法という手技自体が完全な似非医療というわけではなく、外科手術後の血流障害という限定的な場面では実際に承認・活用されている」ということと、「それがそのまま糖尿病という別の病気の治療根拠にはならない」ということの両方です。この線引きを理解せずに「ヒルは医療機器として承認されている=糖尿病にも効く」と読み替えてしまうのが、宣伝文句にありがちな誤解のパターンです。
糖尿病領域では、ヒル療法以外にも「指圧」「鍼」など手技系の民間療法がしばしば話題になります。当サイトの指圧と糖尿病ケアに関する記事でも解説している通り、こうした手技系の民間療法は「効果がまったくない」と「劇的に治る」の間に、疾患・症状ごとに濃淡のあるエビデンスが存在します。ヒル療法についても同じ姿勢で、疾患ごとに区別して評価することが欠かせません。
リスクと副作用 — 感染症・出血・費用
ヒル療法にはメリットだけでなく、無視できないリスクがあります。まず感染症です。医療用ヒルの消化管には細菌が共生しており、衛生管理が不十分な環境や、糖尿病で血流障害・免疫低下がある方が施術を受けた場合、傷口からの細菌感染のリスクが高まります。国立健康危機管理研究機構(JIHS)の報告によれば、日本国内でも報告のあるアエロモナス感染症は、河川や湖沼など自然環境に広く分布する細菌が原因で、腸炎症状のほか「腸管外感染症の部位はほぼ全身の組織に及ぶが、特に皮膚や筋肉などの軟組織感染が多く報告」されており[4]、重症化した場合は敗血症に至ることもあります[4]。
糖尿病診療ガイドライン2024によれば、糖尿病患者は末梢血流が低下しやすく、感染に気づきにくい(神経障害で痛みを感じにくい)という特徴があるため、こうした軟部組織感染が悪化してから気づくケースが起こりやすい体質的な背景があります[1]。また、ヒルの唾液には抗凝固作用があるため、出血傾向のある方や抗凝固薬・抗血小板薬を服用中の方(糖尿病に心血管疾患を合併し、これらの薬を服用しているケースは珍しくありません)では出血が止まりにくくなるおそれがあります。医療用ヒルの安全性に関するPMC掲載の総説論文でも、この抗凝固作用による出血リスクは主要な注意点として挙げられています[3]。
費用面では、日本国内でヒル療法を糖尿病目的で行う場合は医療保険の適用対象ではなく、自由診療・代替医療的な施術として実費(1回あたり数千円〜数万円程度が目安とされることが多い)がかかるのが一般的です。健康保険が適用される医療用ヒルの利用は、前述の再建外科的な用途(保険診療の範囲内で医師が判断して実施するケース)に限られます。
もし施術を検討する場合、最低限確認しておきたいポイントがあります。①使用するヒルが使い捨て(1匹1回限り)で、他の利用者に使い回されていないか。②施術者が医療従事者か、それ以外の資格者かを明確に説明できるか。③「糖尿病が治る」「インスリンが不要になる」といった、標準治療の中止を促すような説明をしていないか。④施術後に発熱・傷の腫れ・膿などが出た場合、責任を持って医療機関を紹介する体制があるか。これらに曖昧な回答しか得られない施設は、消費者保護の観点からも慎重に検討すべきです。
また、日本国内での医薬品医療機器等法(薬機法)上、特定の施術や商品について「糖尿病が治る」「血糖値が下がる」といった効能・効果を標榜して広告することは、医薬品や医療機器としての承認を受けていない限り認められていません。「驚異の治療法」のような誇大な広告表現を見かけた場合、それ自体が景品表示法・薬機法上のリスクを含む可能性がある表示だと理解しておくことも、情報を見極める手がかりになります。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
「効果がある」と語られる背景 — なぜ検索されるのか
糖尿病は根本的に治す薬がなく、長期にわたり食事・運動・薬物療法を継続する必要がある病気です。この「終わりが見えない」という負担感から、「1回で劇的に変わる」「新たな希望」という言葉に惹かれる気持ちは自然なことです。しかし、厚生労働省のeJIM(統合医療情報発信サイト)は、糖尿病の補完代替医療全般について「総じて、サプリメントが2型糖尿病の管理や予防に有用であることを示す科学的根拠は十分ではありません」としたうえで[2]、次のように注意を促しています。
「従来の内科的糖尿病治療を、効果が証明されていない療法や関連製品で置き換えないことが非常に重要です」[2]
この注意喚起はサプリメントを念頭に置いた記述ですが、「効果が証明されていない療法で標準治療を置き換えない」という考え方はヒル療法のような手技的な民間療法にもそのまま当てはまります。「試してみるのは自由」であっても、「今の治療をやめて代わりにする」判断は医学的根拠に基づいていません。
「驚異の」「革新的な」「新たな希望」といった言葉が並ぶ健康情報を見かけたときに確認したいポイントがいくつかあります。①具体的な研究デザイン(RCTか、症例報告か、動物実験か)が明示されているか。②対象人数・対象疾患が具体的に書かれているか、それとも「多くの人に効果」といった曖昧な表現にとどまっているか。③「今の治療をやめて」と示唆していないか。④日本糖尿病学会や厚生労働省など、公的機関のガイドラインへの言及があるか。これらが曖昧なまま「劇的な効果」だけを強調する情報は、糖尿病に限らずどの分野でも警戒すべきサインです。
糖尿病の足のトラブルに本当に効果が確認されている治療 — 標準治療とフットケア
ヒル療法に強い関心を持つ方の多くは、糖尿病そのものというより「足のしびれ」「治りにくい傷」といった合併症に悩んでいるケースが多いと考えられます。ここでは、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」に基づき、実際にエビデンスが確認されている治療・予防法を紹介します。
まず疫学的な背景として、系統的レビューによると糖尿病患者における足潰瘍の世界全体の有病率は6.3%で、日本人では平成19年度国民健康・栄養調査において糖尿病患者の0.7%に潰瘍を有すると報告されています[1]。先進国における糖尿病患者の足潰瘍の年間発生率は約2%で、糖尿病患者の約1%が下肢切断に至ると報告されています[1]。糖尿病患者の下肢切断頻度は非糖尿病患者の7.4〜41.3倍にのぼるとされ[1]、決して他人事にできる数字ではありません。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 糖尿病患者の足潰瘍有病率(世界) | 6.3% | 系統的レビュー引用[1] |
| 糖尿病患者の足潰瘍有病率(日本) | 0.7% | 平成19年度国民健康・栄養調査[1] |
| 先進国の年間足潰瘍発生率 | 約2% | IDF 糖尿病性足病変Recommendation[1] |
| 下肢切断に至る割合 | 約1% | 同上[1] |
| 足潰瘍のうち難治性の割合 | 80〜85% | 糖尿病診療ガイドライン2024[1] |
| 集学的フットケアによる大切断リスク減少 | 48%減 | 2021年系統的レビュー[1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」11章 糖尿病性足病変[1]
「糖尿病診療ガイドライン2024」では、糖尿病患者への集学的フットケア(定期的な足の観察・リスク評価・治療用履物の作製・セルフケア教育などを組み合わせたアプローチ)について、「糖尿病患者の足病変の発症および重症化予防のため集学的フットケアが推奨される」とし、推奨グレードA(合意率100%)という強い推奨がなされています[1]。2021年の系統的レビューでは、専任医師チームや多職種介入による集学的フットケアが大切断リスクを48%、大小切断いずれかのリスクを29%減少させたことが示されています[1]。
国が運営する糖尿病情報センターも、日常的な予防法として「毎日足の隅々まで見て触って、よく観察しましょう」という定期観察や、深爪を避けた爪のケア、つま先に1センチ程度の余裕がある靴選び、湿気を吸う綿素材の靴下の使用などを具体的に推奨しています[7]。こうした地道なセルフケアの積み重ねこそが、現時点で科学的根拠が確認されている「足を守る方法」です。より詳しい足の皮膚トラブルへの対処法は、当サイトの糖尿病患者さんのための皮膚ケア完全ガイドでも詳しく解説しています。
また、糖尿病診療ガイドライン2024によれば、糖尿病性足潰瘍は日本独自の分類として「神戸分類」があり、末梢神経障害由来(Type I)、末梢動脈疾患主体(Type II)、軟部組織感染・骨髄炎を伴うもの(Type III)、感染を契機に悪化した末梢動脈疾患(Type IV)の4つに分けられます[1]。どのタイプに当てはまるかによって治療方針は大きく異なるため、この判断は専門知識を持つ医療機関でなければ行えません。何科を受診すべきか迷う場合は、まず糖尿病内科(内分泌代謝内科)に相談し、足の状態によって皮膚科・血管外科・整形外科と連携してもらうのが一般的な流れです。
血糖コントロールの目標値 — まず押さえておきたい基本
足のトラブルを防ぐ土台となるのは、日々の血糖コントロールです。日本糖尿病学会・日本老年医学会の合同委員会(2016年発表)による血糖コントロール目標は、合併症予防を目的とする基本の目標をHbA1c 7.0%未満とし、食事・運動療法のみ、または副作用なく薬物療法で達成できる場合はより厳格な6.0%未満、治療強化が難しい場合は8.0%未満、多剤併用による副作用が懸念される場合や重篤な併存疾患がある場合はさらに緩やかな8.5%未満を目安とするなど、年齢や健康状態に応じて個別に設定するとしています[5]。この目標値からどれだけ離れているかを把握することが、足のトラブルを含む合併症リスクを考えるうえでの出発点になります。そもそも自分の数値が糖尿病の診断基準を満たすのかどうか整理したい方は、当サイトの糖尿病と予備群の診断基準の記事もあわせてご覧ください。
糖尿病そのものについてさらに広く知りたい場合は、当サイトの糖尿病まとめページから、食事療法・薬物療法・合併症別の解説記事にまとめてアクセスできます。ヒル療法のような個別の民間療法を検討する前に、まずこうした基本情報を一通り押さえておくことをおすすめします。
ヒル療法が糖尿病の神経障害以外の合併症(腎症・網膜症・大血管障害など)にどの程度作用しうるかについては、今回参照した資料には具体的な記載が見当たりませんでした。また、日本国内でヒル療法を糖尿病目的に実施している医療機関・施術所の数や、施術に伴う合併症の発生率についての公的な統計も確認できませんでした。糖尿病神経障害に対する長期的な効果の持続期間や、繰り返し施術を受けた場合の安全性についても、現時点で参照できる資料の範囲では明らかになっていません。
更新日:2026年7月18日(初稿)。ガイドラインの改定や新しい研究が発表され次第、内容を見直します。本記事の内容に誤りや古い情報、お気づきの点がございましたら、サイト内のお問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。いただいたご指摘は編集部で確認のうえ、記事に反映いたします。
よくある質問
ヒル療法は日本の病院で保険適用になりますか?
ヒルは医療機器として認められているのに、なぜ糖尿病には使えないのですか?
糖尿病の足のしびれにはどう対処すればよいですか?
ヒル療法を試すこと自体は禁止されているのですか?
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」11章 糖尿病性足病変 2024年 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/11_1.pdf
- 厚生労働省 eJIM「糖尿病[各種疾患 – 医療者]」https://www.ejim.mhlw.go.jp/pro/overseas/c05/03.html
- A Comprehensive Review of Medicinal Leeches in Plastic and Reconstructive Surgery(PMC, National Library of Medicine)2020年 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7288891/
- 国立健康危機管理研究機構(JIHS)IDWR「エロモナス・ハイドロフィラ/ソブリア感染症」https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/topics/070/index.html
- 日本糖尿病学会・日本老年医学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」2016年5月20日 https://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?content_id=66
- Frontiers in Medicine「Applications of leech therapy in medicine: a systematic review」2024年 https://www.frontiersin.org/journals/medicine/articles/10.3389/fmed.2024.1417041/full
- 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「フットケア」https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/070/11.html
- The efficacy and safety of medical leech therapy for osteoarthritis of the knee: A meta-analysis of randomized controlled trials(PubMed)2018年 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29702260/
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