パニック障害とは|発作の症状と心臓病との見分け方・何科
この記事でわかること
目次
結論から言うと、MSDマニュアル家庭版によると、パニック障害(パニック症)は、動悸・息苦しさ・めまいなどの身体症状が突然現れ、10分以内にピークに達したあと数分でおさまる「パニック発作」を繰り返す状態です[2]。発作そのものは危険なものではありませんが、初めて発作が起きたときは、心臓や肺などの体の病気を除外するために医師の診察を受ける必要があります。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
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症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
MSDマニュアル家庭版によれば、1年間で成人の少なくとも11%がパニック発作を経験し、そのうちパニック症に進行するのは少数だとされています[2]。発作を繰り返すうちに、また起きるのではという予期不安が生まれ、国立精神・神経医療研究センター(NCNP)によれば電車や人混みを避ける広場恐怖症を伴うこともあるとされています[1]。治療の基準は薬物療法と精神療法の組み合わせで、多くの場合は症状をコントロールできるようになると同マニュアルは述べています[2]。もし「消えたい」「生きることに疲れた」というほどつらいときは、この記事の後半にある相談窓口を今すぐ使ってください。
要点まとめ
- MSDマニュアル家庭版によれば、パニック発作は10分以内にピークに達し、多くは数分でおさまる。危険な発作ではないとされている[2]
- MSDマニュアル家庭版によれば、動悸・胸の痛み・息苦しさなど身体症状が主体のため心臓や肺の病気と紛らわしい。初めての発作は必ず医師の診察を受ける[2]
- 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)によれば、発作を繰り返すと、また起きるのではという予期不安が生じ、外出や電車を避ける広場恐怖につながることがある[1]
- NCNPとMSDマニュアル家庭版によれば、治療の柱は薬物療法(抗うつ薬など)と精神療法(認知行動療法・曝露療法)の組み合わせ[1][2]
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」によれば、「消えたい」ほどつらいときは、こころの健康相談統一ダイヤル(0570-064-556)などの窓口がある[3]
今つらい方・緊急の連絡先
「死にたい」「消えたい」「生きることに疲れた」と感じるほどつらいときは、一人で抱え込まず、厚生労働省が案内する以下の窓口に連絡してください[3]。
- こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(ナビダイヤル。相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なる)[3]
- #いのちSOS 0120-061-338(フリーダイヤル・無料。毎日24時間)[3]
- よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応)[3]
電話で話すのがつらいときは、SNSやチャットでの相談窓口もあります。厚生労働省「まもろうよ こころ」では、「あなたのいばしょチャット相談」(24時間365日、誰でも無料・匿名)、「こころのほっとチャット~SNS相談~」など、特定非営利活動法人が運営する複数のSNS相談窓口が案内されています[3]。厚生労働省「まもろうよ こころ」では、どこに相談すればよいか分からないときのために、悩み別・方法別・地域別に相談窓口を検索できる「支援情報検索サイト」も紹介されています[3]。詳しい時間帯・地域別の一覧は、記事後半の「受診の目安」でも紹介しています。
編集方針:本記事はJHO編集部がAIツールの支援を受けながら、厚生労働省・国立精神・神経医療研究センター(NCNP)・MSDマニュアル家庭版など公的機関や医学文献と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。参照した資料の多くは「パニック症」という表記を用いていますが、本記事では従来から広く使われている「パニック障害」という呼び方も併記しています。数値やガイドラインは改定されることがあるため、2026年7月時点で確認できた情報として参照してください。
パニック障害(パニック発作)とは?数分でピークに達し、おさまっていく仕組み
MSDマニュアル家庭版によると、「パニック発作とは、極めて強い苦痛、不安、恐怖などが突然現れて短時間で治まる発作のことで、身体症状や精神症状を伴います」[2]。パニック発作はよくみられる症状で、1年間で少なくとも成人の11%が経験するとされています[2]。大半の人は治療なしでパニック発作から回復しますが、少数の人ではパニック症(パニック障害)に進行するとMSDマニュアル家庭版は述べています[2]。
MSDマニュアル家庭版によれば、パニック症そのものは1年間で2〜3%の人が経験し、女性は男性の約2倍の頻度で発生するとされ、通常は青年期の終わり頃から成人期初期に発症するとされています[2]。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、「パニック症では、急激な不安と、動悸などの身体症状を伴うパニック発作が突然生じることを繰り返します。そのために行動が制限されたり、また発作が起きるのでは無いかという予期不安が生じ、生活に大きな支障が生じます」と説明しています[1]。同センターによれば、パニック発作は、状況によって予想できるものと予想できないものがあり、物質使用や治療薬によって、またうつ病などの他の精神疾患にともなって生じることもあるとされています[1]。
MSDマニュアル家庭版は、「パニック発作は不快で、ときに極めて不快にもなりますが、危険なものではありません。症状は10分以内にピークを迎え、数分で消失するのが通常ですので、医師がその様子を直に観察するのは難しい傾向があります」と述べています[2]。同マニュアルによれば、発作の頻度には大きな個人差があり、数カ月にわたって毎週ないし毎日発作を起こす人もいれば、1回の発作が数日間続いた後、発作のない期間が数週間から数カ月続く人もいるとされています[2]。
パニック発作は、必ずしも「パニック障害」の人だけに起こるわけではありません。MSDマニュアル家庭版は、「パニック発作は不安症の一部として発生することがあります。他の精神疾患(うつ病など)がある人に発生することもあります。特定の状況に対する反応として生じるパニック発作もあります。例えば、ヘビ恐怖症の人は、ヘビに遭遇するとパニックを起こします。明らかなきっかけもなく生じる発作もあります」と説明しています[2]。発作が起きる場面や引き金は人によって異なるということです。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
パニック症以外の不安症とのちがい
「不安障害」「不安症」という言葉には、パニック症以外にもいくつかのタイプがあります。同センターは不安症について、「不安症とは差し迫った出来事に対する恐怖や、将来に対する不安が過剰となり、行動や社会生活に影響を与える状態が、成人の場合は6ヶ月、子どもの場合は4週間、続いている状態です」と説明しています[1]。この分類の中に、パニック症や広場恐怖症以外にも次のようなタイプが含まれると同センターは説明しています[1]。
| 不安症のタイプ | 特徴 |
|---|---|
| 社交不安症 | 他の人々の前に出たり注目・評価される状況に強い不安を感じ、その状況を避けるようになる[1] |
| 全般性不安 | はっきりした対象ではなく色々なことに次々と過剰な不安を生じ、常に落ち着かずそわそわする[1] |
| 限局性恐怖症 | 特定の人・動物・状況に直面すると強い恐怖を生じ、その対象や状況を回避するようになる[1] |
| 物質・医薬品誘発性不安症 | アルコールやカフェインなどの物質使用、治療薬によって不安が生じる状態[1] |
| 分離不安 | アタッチメントを生じている保護者から離れるときに、年齢を考慮してもなお不適切なほど強い不安を感じる状態。多くは子どもに生じるが大人でも生じることがある[1] |
| 選択性緘黙(かんもく) | 特定の人の前では話せるが、他の人々の前で話す必要があってもまったく話せなくなる状態[1] |
出典:国立精神・神経医療研究センター(NCNP)こころの情報サイト「不安症」[1]
パニック症は、こうした不安症の中でも「発作」という突然の身体症状を伴う点が特徴です。似ている部分もありますが、それぞれ対応の仕方が変わってくるため、自己判断で特定の病名を決めつけず、専門家に相談することが大切だと考えられます。
では、どこからが「不安症」で、どこまでが普通の心配ごとなのでしょうか。同センターは次のように述べています。「人は様々なことで不安になります。不安は決して病気ではありません。むしろ、適切な不安を感じることで、対策をしたり、大きな失敗を避けることができるようになります。しかし不安が強すぎると、その不安を避けるために、現実の生活を制限したり、仕事や勉強ができなくなります」と同センターは述べています[1]。そのうえで、「これまでの半年間(大人の場合)を振り返って、過去の自分よりも明らかに不安が増えて自信を失っている、不安を避けるために特定の対象や人、状況を回避することにこだわっている、また生活や行動に影響が出ていると感じた場合には、どうか専門家に相談してください」と同センターは呼びかけています[1]。
パニック発作で起こる主な症状 — 4つ以上が同時に現れる
MSDマニュアル家庭版によると、パニック発作では「強い恐怖または不快感に加えて、以下の身体症状と精神症状のうち4つ以上が突然現れます」[2]。1つや2つの症状だけを見て自己判断するのではなく、いくつの症状が重なって起きているかを落ち着いて振り返ることが目安になります。
| 番号 | 症状 |
|---|---|
| 1 | 胸の痛みまたは不快感 |
| 2 | 窒息感 |
| 3 | めまい、ふらつき、または気が遠くなる |
| 4 | 死への恐怖 |
| 5 | 正気を失うことや自制を失うことへの恐怖 |
| 6 | 非現実感、違和感、または外界との遊離感 |
| 7 | ほてりまたは悪寒 |
| 8 | 吐き気、腹痛、または下痢 |
| 9 | しびれまたはピリピリ感 |
| 10 | 動悸または頻脈 |
| 11 | 息切れまたは呼吸困難 |
| 12 | 発汗 |
| 13 | 振戦またはふるえ |
出典:MSDマニュアル家庭版「パニック発作とパニック症」[2]
この13項目を見てわかるとおり、胸の痛みや動悸、息切れといった心臓や肺に関わる症状が並んでいます。次の章では、この、心臓の病気ではないかという一番大きな疑問について、公的資料をもとに整理します。
心臓の病気ではないですか?検査が正常でも、その苦しさは本物
MSDマニュアル家庭版は、パニック発作について次のように説明しています。「パニック発作の症状には様々な身体症状が含まれるため、患者は心臓や肺、脳などに危険な医学的問題があるのではと心配になることがよくあります。例えば、パニック発作の発生中に胸痛が起こることで、心臓発作が起きているのではないかと心配になることがあります。症状が重いか長引いている場合は、医師の診察を受けるべきです。ただし、パニック発作という正しい診断を受けるまでに、何度も医師の診察を受けたり救急医療機関を受診したりすることになる場合もあります」と述べています[2]。
つまり、救急外来を受診して「異常なし」と言われても、それは大げさに騒いだからではありません。パニック発作の症状そのものが、心臓や肺の病気と見分けがつきにくいためです。MSDマニュアル家庭版は診断の進め方についても述べています。「重篤な身体的な病気によってパニック発作と同じ身体症状や精神症状が引き起こされることも多くあるため、医師はまず身体的な病気がないことを確認します」[2]。医師の側も、まず体の病気を除外するところから始めるということです。
初めての発作は、必ず医療機関で確認を
動悸や息苦しさ、胸の痛みが初めて起きたときは気のせいだろうと自己判断せず、医師の診察を受けてください。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)も「動悸や呼吸困難があるときには、まずは内科の診察を受けてください」と呼びかけています[1]。パニック発作だと決めつけて様子を見るのではなく、まず体の病気かどうかを確認することが安全側の対応です。
同センターは、不安の症状の背景に体の病気が隠れていることもあると説明しています。「時には甲状腺機能亢進症、不整脈、貧血によって不安が生じることもあります」[1]。またMSDマニュアル家庭版は、パニック症に併存しやすい体の病気として次を挙げています。「併存することが多い身体的な病気としては、不整脈、甲状腺機能亢進症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがあります」[2]。下の表に整理します。
| 見分けが必要な体の病気 | ひとことメモ |
|---|---|
| 不整脈 | 動悸・胸の不快感が重なりやすい[1][2] |
| 甲状腺機能亢進症 | 動悸・発汗・落ち着かなさを伴うことがある[1][2] |
| 貧血 | めまい・動悸が生じることがある[1] |
| 喘息 | 息切れ・呼吸困難が重なりやすい[2] |
| 慢性閉塞性肺疾患(COPD) | 息切れ・呼吸困難が重なりやすい[2] |
出典:国立精神・神経医療研究センター(NCNP)こころの情報サイト「不安症」[1]/MSDマニュアル家庭版「パニック発作とパニック症」[2]
MSDマニュアル家庭版によれば、パニック症と診断されるのは、体の病気が除外されたうえで、不意に理由なく起きるパニック発作に加えて、次のいずれかが1カ月以上にわたり繰り返し起こっている場合です[2]。ひとつは「パニック発作がまた起こるのではないかという持続的な心配、または発作の結果(例えば、自制心や正気を失うなど)についての持続的な心配」であり[2]、もうひとつは「パニック発作による行動の変化(例えば、発作の原因になりうる状況を回避するなど)」です[2]。体の病気が除外されて初めて、パニック症という診断が視野に入るという順番です。
体の病気だけでなく、こころの病気が重なっていることも少なくありません。MSDマニュアル家庭版は、「パニック症は他の病気を少なくとも1つ伴う場合がしばしばあります。併存する精神疾患として最も多いのは、他の不安症、大うつ病、双極症、および軽度のアルコール使用症です」と述べています[2]。気分の落ち込みが続いている、お酒の量が増えているといった変化も、診察の際に医師へ伝えておきたい情報です。
予期不安と広場恐怖 — 発作の合間に生活が狭まっていく理由
ここからは、発作と発作の間に起きていることを整理します。専門用語として、また発作が起きるのではという不安は予期不安(anticipatory anxiety)、外出先を避けるようになる状態は広場恐怖症(agoraphobia)と呼ばれます。カタカナや漢字だけだと分かりにくいため、英語表記もあわせて覚えておくと、海外の資料を読むときにも役立ちます。
MSDマニュアル家庭版によれば、パニック発作そのものは数分でおさまりますが[2]、厄介なのは発作と発作の合間に起きる変化です。国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、発作を繰り返すうちに「また発作が起きるのでは無いかという予期不安が生じ、生活に大きな支障が生じます」と説明しています[1]。予期不安が強くなるほど、発作を連想させる場所や状況を避ける傾向が強まっていきます。
この回避が広がった状態が広場恐怖症です。同センターは次のように定義しています。「広場恐怖症では、不安になったときにすぐに逃げ帰れないような、家の外の状況に対する不安があります。広場、公共交通機関、建物の中、1人で外出することなどが含まれます。そのような状況を回避したり、付き添いを必要としたりします」と同センターは説明しています[1]。電車に乗れない、一人で買い物に行けない、というのは怠けや性格の問題ではなく、この回避のパターンとして起きている可能性があります。
発作そのものが数分で終わるのに、なぜ生活まで狭まってしまうのか。それは、発作の記憶が、また起きるかもしれないという予期不安を生み、その不安を避けようとする行動(回避)が、かえってその場所は危険だという思い込みを強めてしまうためだと考えられます。この悪循環に早い段階で気づくことが、生活の範囲を狭めないための第一歩になります。
不安そのものの性質についても、同センターは参考になる説明をしています。「実は不安は、最初の5分間くらいがもっとも強く、その後は段々と横ばいになったり、軽くなっていきます。ところが不安を避けることに全力を集中していると、こうした自然の回復を体験することができません」[1]。回避を続けている限り、発作は自然におさまっていくものだという経験を積む機会そのものが失われてしまう、ということだと考えられます。
発作が起きたときにできること — 過呼吸への対応で気をつけたいこと
MSDマニュアル家庭版によれば、発作の最中は、症状が10分以内にピークを越え、数分でおさまっていく経過をたどることが多いとされています[2]。その場から無理に動こうとせず、座れる場所があれば座る、今いる場所の安全を確認する、そばに信頼できる人がいれば連絡するといった対応が、余計な不安の上乗せを防ぐと考えられます。
編集部の判断:紙袋を使った呼吸法(ペーパーバッグ法)は推奨しません
紙袋を口に当てて呼吸するという対処法が広く知られていますが、これはJHO編集部の判断として推奨しません。理由は、その場で本当に過呼吸だけが原因なのかを自分で正確に見分けるのは難しく、もし喘息の発作や心臓・肺の病気など別の体の異常が隠れていた場合、袋を使うことでかえって血液中の酸素が不足する方向に働く可能性があるためです。何が起きているのか自分でも分からないときは、袋を使うより、その場に座って呼吸を整えようとする、無理に動かない、周囲の信頼できる人や医療機関に連絡することを優先してください。この点については、参照した資料に明確な記載がなく、あくまで編集部の判断であることを明記します。
発作が落ち着いたあとに、また起きるかもしれないという不安だけが残ることがあります。その不安自体への対処は、次の章で説明する治療(特に認知行動療法や曝露療法)が中心になります。
治療 — 薬物療法と精神療法を組み合わせる
治療の話に入る前に、なぜ抗うつ薬がパニック症に使われるのかを整理しておきます。厚生労働省が運営するe-ヘルスネットの用語辞典は、脳内の神経伝達物質セロトニンについて、「セロトニンが低下すると、これら2つのコントロールが不安定になりバランスを崩すことで、攻撃性が高まったり、不安やうつ・パニック症(パニック障害)などの精神症状を引き起こすといわれています」とe-ヘルスネット(厚生労働省)は説明しています[5]。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は、この名前のとおりセロトニンの働きに関わる薬です。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は、不安症の治療について「認知行動療法は、こうしたメカニズムに注目し、不安を悪化させる考えや行動を徐々に修正し、不安をコントロールできるという自信を取り戻すための治療です。薬物療法と同じか、それ以上の効果があることが知られています」と説明しています[1]。MSDマニュアル家庭版も、パニック症の治療として「曝露療法、認知行動療法、対人関係療法などの精神療法」を挙げています[2]。認知行動療法では、パニックを誘発する可能性が高い状況に徐々に身を曝すことを患者に促し、状況と症状の間に想定されるつながりを解消させると同マニュアルは説明しています[2]。
この治療がなぜ、心臓病ではないかという不安に効くのか、MSDマニュアル家庭版は具体例で説明しています。「一部の人は自分だけの問題のある思考サイクルをもっていて、それが不安やパニックの原因になっていることがあります。例えば、心臓発作を起こすことについて日頃から心配している人は、心臓発作の徴候を探すために自分の体をくまなく調べることに長大な時間を費やすことがあります。そのような人が胸に刺すような痛みを感じると、悪循環が始動して、自分はもうすぐ死ぬという思い込みでパニックを起こすことがあります。認知行動療法では、こうしたサイクルを明確化した上で、歪んだ思考や思い込みを認識してコントロールするよう患者を指導します」と説明しています[2]。この記事の冒頭で触れた、検査は正常なのになぜ苦しいのかという疑問に、認知行動療法は正面から向き合う治療だといえます。
MSDマニュアル家庭版は、認知行動療法で指導される内容として次の3点を挙げています[2]。
- パニック発作が起きる状況を回避しない
- 自分の恐怖心が実際に悪い結果に至る可能性は低いということを認識する
- ゆっくりとした一定の呼吸など、緊張を和らげる方法で対応する
また、なぜ治療なしで様子を見る人もいれば治療が必要になる人もいるのか、MSDマニュアル家庭版は次のように整理しています。「正式な治療を受けなくても回復する人もおり、特に発作が生じた状況に直面し続ける場合はその可能性が高まります。人によっては、症状が長年にわたって一進一退を繰り返すこともあります。ただし、発作が頻繁に起き、将来の発作を回避するために行動が変化している患者では、通常は薬剤、精神療法、またはその併用による治療が必要になります」と述べています[2]。
薬物療法について同センターは、「SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる、うつ病の薬が多くの不安症に有効であることが分かっています」と述べています[1]。効果の出方について同センターは「明日からよくなる、というものではありませんが、続けることによって、不安に対する効果が出てくることは実証されています」と説明しています[1]。不安症のタイプによって薬の組み合わせが異なるため、専門の医師に相談する必要があると同センターは述べています[1]。
抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤)については、MSDマニュアル家庭版が次のように注意点を挙げています。「ベンゾジアゼピン系薬剤は、抗うつ薬と比べて即効性がありますが、薬物依存になる可能性があるほか、眠気、協調運動障害、記憶障害、反応の鈍化が起こりやすくなります」[2]。一般的な治療の進め方としては、「最初に、ベンゾジアゼピン系薬剤と抗うつ薬が投与されます。抗うつ薬の効果が出始めたら、通常はまずベンゾジアゼピン系薬剤の用量を減らし、後に服用を中止します」とされていますが、「患者によっては、ベンゾジアゼピン系薬剤が唯一有効な長期的治療法になる場合もあります」と同マニュアルは述べています[2]。減らす・やめるタイミングは自己判断せず、必ず処方医の指示に従ってください。
薬だけに頼ることの限界についても触れられています。「薬剤でパニック発作が起こらなくなったり、回数が大幅に減少したりすることもあります。しかし、精神療法を行わずに薬剤を使用することは、将来の発作に対する不安を和らげ、パニック発作を起こす状況の回避をやめる助けにならないことがあります」とMSDマニュアル家庭版は述べています[2]。薬で発作の回数が減っても、予期不安や回避のパターン自体は残ることがある、ということだと考えられます。
| 治療の柱 | 特徴 |
|---|---|
| 抗うつ薬(SSRI・SNRIなど) | 他の抗うつ薬と同等の効き目があり、一般に副作用が少ないとされる。効果が出るまでに時間がかかる[2] |
| 抗不安薬(ベンゾジアゼピン系など) | 抗うつ薬より即効性があるが、続けていると依存を生じることがあるとされ、注意が必要[1][2] |
| 認知行動療法 | 不安を悪化させる考え方や行動を修正する。薬物療法と同じか、それ以上の効果があるとされる[1] |
| 曝露療法 | パニックを誘発しやすい状況に段階的に慣れていく[2] |
出典:国立精神・神経医療研究センター(NCNP)こころの情報サイト「不安症」[1]/MSDマニュアル家庭版「パニック発作とパニック症」[2]
薬は自己判断で急にやめない
MSDマニュアル家庭版は、「急に服用を中止すると、大半のSSRIとSNRIは不快な離脱症状(めまい、疲労感、頭痛、吐き気など)を引き起こすことがあります」と注意を促しています[2]。さらに同マニュアルは「服薬を中止するとパニック発作が再発することが多いため、長期にわたる服薬が必要になります」とも述べています[2]。同センターも抗不安薬について「続けていると依存を生じることがありますので、注意が必要です」としています[1]。薬をやめたい、量を変えたいと感じたときは、自己判断せず必ず処方した医師に相談してください。
日常生活での工夫 — カフェインと生活習慣
同センターは、不安との付き合い方として次のように呼びかけています。「カフェインの取り過ぎに注意して下さい。お酒や煙草に比べると、カフェインのリスクはあまり知られていませんが、カフェインの取り過ぎで不安が悪化することは少なくありませんので、場合によっては少しずつ減らしてみましょう」[1]。コーヒーやエナジードリンクの量を急に変えるとかえって体調に影響することもあるため、少しずつ減らすという進め方が現実的だと考えられます。
生活習慣の工夫はあくまで発作を起こしにくくするための補助であり、治療そのものの代わりにはなりません。発作を繰り返している場合は、次の章で説明する受診を優先してください。
受診の目安 — 何科に行けばいいか、緊急のサイン
何科に行けばいいか分からないという迷いは、パニック障害で病院を探す人が最初にぶつかる壁の一つだと考えられます。同センターは、動悸や呼吸困難がある場合について「まずは内科の診察を受けてください」と述べています[1]。体の病気が除外され、パニック症(パニック障害)の診断や治療が必要だと判断された場合には、精神科・心療内科が窓口になります。厚生労働省の「こころの耳」相談窓口案内では、精神科・心療内科などの医療機関を探せる「全国医療機関検索」が案内されています[4]。
迷ったら医療機関へ・救急要請の目安
「死にたい」「消えたい」というほどつらいときの連絡先を、記事冒頭とあわせて、あらためて一覧にまとめます。
| 窓口 | 電話番号 | 対応時間 |
|---|---|---|
| こころの健康相談統一ダイヤル | 0570-064-556(ナビダイヤル) | 都道府県によって異なる[3] |
| #いのちSOS | 0120-061-338(フリーダイヤル・無料) | 毎日24時間[3] |
| よりそいホットライン | 0120-279-338(フリーダイヤル・無料) | 24時間対応[3] |
| いのちの電話 | 0120-783-556(フリーダイヤル・無料) | 毎日16時〜21時、毎月10日は午前8時〜翌日午前8時[3] |
出典:厚生労働省「まもろうよ こころ」[3]
まとめ — 記事の要点をもう一度
救急外来を受診して「異常なし」と言われたのに、動悸や息苦しさが続く。そのつらさは、決して気のせいでも大げさでもありません。パニック発作の症状は心臓や肺の病気と紛らわしく、医師自身もまず体の病気を除外するところから診断を始めるとされています(この点は前述のMSDマニュアル家庭版の解説のとおりです)。だからこそ、初めての発作では医療機関の受診が欠かせません。
体の病気が除外されたあとは、発作そのものが数分でおさまること、そして予期不安・広場恐怖という「発作の合間」に起きる悪循環を理解することが、次の一歩につながります(いずれも前述のMSDマニュアル家庭版・NCNPの解説のとおりです)。治療は薬物療法と精神療法の組み合わせが基本で、多くの場合は症状をコントロールできるようになるとされています。一人で抱え込まず、内科・精神科・心療内科、そしてつらいときの相談窓口を、遠慮なく使ってください。あなたが感じている苦しさは、検査の数字だけでは測れないものです。
よくある質問
薬はやめられますか?
過呼吸になったとき、紙袋を使って呼吸してもいいですか?
編集部として、分かっていることと分かっていないことをできる限り分けて書くようにしています。本記事で確認できなかった点を明記します。過呼吸時に紙袋を使った呼吸法(ペーパーバッグ法)を行うことの是非については、今回参照した公的資料に明確な記載が見当たらず、本記事の記載はJHO編集部の判断によるものです。曝露療法を具体的にどのくらいの頻度・期間で行うのが最適かについても、今回参照した資料には具体的な記載が見当たりませんでした。症状のタイプや個人差によって異なる可能性があり、十分な根拠が確立されているとまでは言えないと考えられます。セロトニンの低下と不安症状の関係についても、厚生労働省のe-ヘルスネットは「引き起こすといわれています」という表現を使っており[5]、断定的な因果関係として確立しきっているとまでは言えない可能性があります。
参考文献
- 国立精神・神経医療研究センター(NCNP)精神保健研究所 こころの情報サイト「不安症」 https://kokoro.ncnp.go.jp/disease.php?@uid=BLA9JV0KhiWPIMzX
- MSDマニュアル家庭版「パニック発作とパニック症」執筆:John W. Barnhill, MD(2023年8月 完全レビュー) https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/10-心の健康問題/不安症/パニック発作とパニック症
- 厚生労働省「まもろうよ こころ」 https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/
- 厚生労働省 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」相談窓口案内 https://kokoro.mhlw.go.jp/agency/
- e-ヘルスネット(健康日本21アクション支援システム)用語辞典「セロトニン」(2021年1月22日更新) https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-074.html
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本記事の更新日:2026年7月25日。本記事の内容に誤りや古い情報をお気づきの場合は、編集部までお知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。
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医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
