糖尿病性ケトアシドーシスとは?原因・症状・治療を徹底解説
この記事でわかること
目次
結論から言うと、糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は、インスリンが極端に不足して血糖値が250mg/dLを超え、動脈血のpHが7.30以下まで下がる緊急事態です。日本糖尿病学会のガイドラインはこの3条件を診断の柱としています[1]。
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もともと1型糖尿病の方に多く、感染症・嘔吐や食欲不振でインスリンを自己判断で減らしたり中止したりしたときに起こりやすくなります。同学会の報告によれば、のどの渇き・多尿・強い倦怠感が1〜2日で急激に進み、深く速い呼吸(クスマウル呼吸)や意識障害が出た場合は、様子を見ずにすぐ救急受診が必要です[1]。
要点まとめ
- 日本糖尿病学会の基準では、「高血糖250mg/dL超」「ケトーシス(β-ヒドロキシ酪酸の増加)」「アシドーシス(動脈血pH 7.30以下、HCO3⁻ 18mEq/L以下)」の3つがそろうことがDKAの診断の目安です[1]
- 同学会のRecommendationでは、SGLT2阻害薬を服用中は血糖値がそれほど高くなくてもDKAになる「正常血糖ケトアシドーシス」が起こりうると注意喚起されています[3]
- 同ガイドラインが示す治療の柱は「輸液」「少量のインスリン持続静注」「カリウム補充」の3つで、アシドーシスそのものを薬で無理に補正することは原則しないとされています[1]
- 糖尿病情報センターによれば、発熱・下痢・嘔吐・食欲不振の「シックデイ」では、ビグアナイド薬・SGLT2阻害薬は原則中止するとされています[2]
- 受診の目安は、日本糖尿病学会が挙げるクスマウル呼吸・アセトン臭・意識の変化[1]と、糖尿病情報センターが挙げる24時間以上の絶食・血糖値350mg/dL以上の持続です[2]
編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(更新日・確認日:2026年7月時点の公開情報に基づく)。事実誤認にお気づきの場合は、編集部までご指摘いただければ速やかに確認・修正します。
今すぐ確認したい「危険サイン」チェックリスト
次のうち2つ以上に当てはまる場合は、様子を見ずに救急外来を受診するか救急車を呼んでください(日本糖尿病学会と糖尿病情報センターが共通して挙げる受診の目安に基づく)[1][2]。
- のどの異常な渇き・多尿が急に強くなった
- 深くて速い呼吸をしている(クスマウル呼吸)
- 果物のような・除光液のようなにおいの呼気(アセトン臭)
- 強い腹痛・繰り返す嘔吐
- ぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い
- 血糖自己測定(SMBG)で350mg/dL以上が続く[2]
日本糖尿病学会のRecommendationでは、糖尿病用の尿ケトン試験紙・血中ケトン測定器をお持ちの場合は、あわせてケトン体を確認するよう勧めています[3]。
糖尿病性ケトアシドーシスとは?体の中で何が起きているのか
日本糖尿病学会のガイドラインによると、糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis:DKA)は、インスリンというホルモンが極端に不足し、同時にグルカゴンなど血糖値を上げるホルモン(拮抗ホルモン)が増えることで起こる、糖尿病の急性の代謝異常です[1]。
本来、食事でとったブドウ糖はインスリンの働きによって全身の細胞に取り込まれ、エネルギー源として使われます。ところがインスリンが足りなくなると、ブドウ糖は血液中にあふれたまま細胞に入れず、エネルギー不足に陥った体は代わりに脂肪を分解してエネルギーを作ろうとします。同ガイドラインの説明では、この脂肪分解の過程で「ケトン体」(β-ヒドロキシ酪酸など)という物質が大量に作られ、血液が酸性に傾く「アシドーシス」が起こるとされています[1]。
図:インスリン欠乏がケトン体増加とアシドーシスにつながる仕組み(出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第20章[1]/JHO編集部作図)
同学会の解説によれば、DKAはもともと1型糖尿病(劇症1型糖尿病を含む)の初発症状として現れることが多い病態です。1型糖尿病の方が感染症や心血管病を併発したとき、あるいは吐き気・嘔吐などの消化器症状で食事がとれず、自己判断でインスリンを減量・中止してしまったとき(マネジメントエラー)や、大量飲酒の際にも起こります。ステロイド薬、サイアザイド系利尿薬、ペンタミジン、抗精神病薬(オランザピン、アリピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、クロザピンなど)、免疫チェックポイント阻害薬といった薬剤が引き金になることもあると同ガイドラインは報告しています[1]。
「糖尿病=太っている人の病気」という誤解を持つ方も多いのですが、2型糖尿病の方でも、清涼飲料水やスポーツドリンクを大量に飲み続けることでDKAに陥る「ソフトドリンクケトーシス(清涼飲料水ケトーシス)」が起こりえます。実際、DKAで受診した患者のうち約20〜30%は2型糖尿病であったとする報告もあり、「1型糖尿病だけの病気」ではありません[1]。糖尿病そのものの診断基準や病型については、糖尿病と予備群の診断基準の解説記事もあわせてご覧ください。
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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
診断基準の数値 — 日本糖尿病学会のガイドラインでみる「3つの条件」
日本糖尿病学会の診断基準では、以下の3つがそろったときにDKAと診断されます[1]。
| 項目 | 基準 | 備考 |
|---|---|---|
| 血糖値 | 250mg/dL 超 | ただしSGLT2阻害薬服用下では高血糖を伴わないことがある[1] |
| ケトーシス | β-ヒドロキシ酪酸の増加 | 小児では3,000μmol/L以上、成人では3,800μmol/L以上がHCO3⁻ 18mEq/L未満に相当すると報告されている[1] |
| アシドーシス | 動脈血pH 7.30以下・HCO3⁻ 18mEq/L以下 | 重炭酸塩(HCO3⁻)の低下で判定する[1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第20章[1]
同ガイドラインの記載では、臨床的には1〜2日という短い経過で急激な口渇・多飲・多尿・倦怠感が出現し、脱水や体重減少、さまざまな程度の意識障害を伴います。腹痛や吐き気を伴うこともあり、まれに急性腹症(虫垂炎など)と誤診されることもあります。代謝性アシドーシスを補おうとする過呼吸(クスマウル呼吸)、呼気のアセトン臭、口腔粘膜の乾燥、低血圧、頻脈がみられるのも特徴です[1]。
同学会は、妊娠中の方はDKAの発症頻度が高く、しかも非妊娠時より低い血糖値でもケトアシドーシスを起こしやすいと報告しています。血糖値が250(あるいは200)mg/dL以下でも起こるDKAは「正常血糖糖尿病性ケトアシドーシス」と呼ばれ、SGLT2阻害薬服用中や妊娠中、飢餓状態、低炭水化物食、敗血症、慢性的なアルコール摂取、肝疾患などが背景因子となりえます[1]。
すぐに受診が必要なサイン(受診の目安)
- 日本糖尿病学会が挙げる、深くて速い呼吸(クスマウル呼吸)や、果実・除光液のようなにおいの呼気(アセトン臭)[1]
- 糖尿病情報センターが挙げる、嘔吐・下痢がとまらない、または38度以上の高熱が続く状態[2]
- 同センターが挙げる、食事が24時間にわたって全くとれない、または極端に少ない状態[2]
- 同センターが挙げる、血糖値が350mg/dL以上の状態が続くこと[2]
- 学会・センターの双方が挙げる、意識の状態の変化(ぼんやりする、反応が鈍い、呼びかけに答えられない)[1][2]
これらに当てはまる場合は、自宅で様子を見ずに救急外来を受診するか、救急車を呼んでください。
なぜ起こる? 原因・引き金になりやすい場面
日本糖尿病学会のガイドラインが挙げる、DKAの引き金は一つではありません。次のような場面で起こりやすくなります。
- 1型糖尿病の発症時(初発症状):同ガイドラインによれば、診断される前の最初のサインとしてDKAで見つかることがあります[1]。
- インスリンの自己中断・自己判断での減量:同学会の報告では、体調が悪くて食事がとれないとき「インスリンを打つと血糖が下がりすぎるのでは」と自己判断で中止してしまうケースが典型的な引き金とされています[1]。
- 感染症・心血管病の併発:同ガイドラインでは、発熱や炎症でインスリンの必要量が増えるため、通常量のままでは不足に陥ると説明されています[1]。
- 大量飲酒:同学会の報告に挙げられている誘因の一つです[1]。
- 薬剤性:同ガイドラインは、ステロイド、サイアザイド系利尿薬、ペンタミジン、一部の抗精神病薬(オランザピン、アリピプラゾール、リスペリドン、クエチアピン、クロザピンなど)、免疫チェックポイント阻害薬を引き金として挙げています[1]。
- SGLT2阻害薬服用中の正常血糖ケトアシドーシス:同学会のRecommendationでは、シックデイでの休薬忘れ、インスリンポンプのトラブルや基礎インスリンの中断、極端な糖質制限、清涼飲料水の多飲などが関与すると指摘されています[3]。
- 清涼飲料水ケトーシス(いわゆる「ペットボトル症候群」):同ガイドラインの報告では、糖分を含む清涼飲料水やスポーツドリンクを大量に飲み続けることで、2型糖尿病や糖尿病予備群の方に起こることがあるとされています[1]。
シックデイルール — 自宅でできる対処と、休薬・受診の目安
糖尿病情報センターの解説では、感染症にかかって熱が出る・下痢をする・吐く、あるいは食欲不振で食事ができないときのことを「シックデイ」と呼びます[2]。同センターによれば、糖尿病の方はシックデイで脱水やケトーシスに陥りやすく、通常の血糖コントロールが難しくなります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 水分・栄養 | スープなどで十分に水分を摂り、お粥やうどんなど消化のよい炭水化物をとる[2] |
| ビグアナイド薬・SGLT2阻害薬 | 脱水で状態を悪化させるおそれがあるため原則中止(服用再開は食事が十分とれるようになってから)[2][3] |
| 食後血糖を下げる薬(速効型インスリン分泌促進薬・α-GI薬) | 原則中止[2] |
| インスリン注射 | 自己判断で中止しない。食事量が減っても、主治医の指示に沿って継続・調整するのが基本[2] |
出典:国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター「シックデイ」[2]/日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」[3]
糖尿病情報センターは、特に1型糖尿病など内因性のインスリン分泌が少ない方が、シックデイでインスリン注射そのものを中断してしまうと、DKAに陥る可能性があると注意を促しています[2]。「食欲がないから」「血糖が下がりすぎるのが心配だから」という理由でインスリンを完全に止めるのは危険です。量の調整が必要な場合は、必ず主治医やあらかじめ決めておいたシックデイルールに従ってください。同センターは、日頃から主治医と、シックデイのときの対応(水分・炭水化物の摂り方、休薬する薬、インスリンの調整方法、受診の目安)について具体的に話し合っておくことが、重症化を防ぐ最大の予防策になると述べています[2]。日々の血糖コントロール全体の考え方は、糖尿病管理の完全ガイドで詳しく解説しています。
SGLT2阻害薬と「正常血糖ケトアシドーシス」— 血糖値が正常でも油断できない理由
SGLT2阻害薬は尿から糖を排出させて血糖値を下げる薬ですが、まれにケトアシドーシスを起こすことが知られています。日本糖尿病学会の公式Recommendationでは、発熱・下痢・嘔吐などがあるとき、あるいは食欲不振で食事が十分摂れないとき(シックデイ)には必ず休薬することが明記されています[3]。
同学会のRecommendationが特に注意を呼びかけているのは、全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状があるのに血糖値が正常に近いというケースです。この場合でも「正常血糖ケトアシドーシス(euglycemic ketoacidosis)」の可能性があるため、血中ケトン体(すぐに測れない場合は尿ケトン体)を確認し、専門医に相談することが推奨されています。同Recommendationによれば、SGLT2阻害薬を服用していると、インスリンが中断されても血糖の上昇を伴わないままケトアシドーシスが進行するため、発見が遅れて重症化しやすいとされています[3]。
同学会の報告では、1型糖尿病でSGLT2阻害薬を使う場合は特にリスクが高く、インスリンポンプ使用者のポンプトラブルや、予測低血糖マネジメント(PLGM)機能による基礎インスリンの中断が原因になることがあります。臨床試験では、アルコールを多く飲む方、感染症や脱水がある方、女性、非肥満・やせ型(BMI 25未満)の方でケトアシドーシスが増えたとの報告もあります[3]。同Recommendationは、SGLT2阻害薬を使用中の1型糖尿病の方には、可能な限り血中ケトン体測定紙を処方し、全身倦怠感・悪心嘔吐・腹痛などの症状があれば在宅でケトン体を測定し、専門医を受診するよう指導することを推奨しています[3]。インスリン注射そのものの種類や使い方については、インスリンペンのすべてもご参照ください。SGLT2阻害薬を新しく開始する際は、開始前の問診でケトアシドーシスの既往や極端な糖質制限をしていないかを確認し、休薬の判断を先延ばしにしないことが、同学会のRecommendationが繰り返し強調しているポイントです[3]。
病院での治療の流れ — 輸液・インスリン・カリウム補正
日本糖尿病学会のガイドラインによれば、DKAの治療では、水分・電解質の欠乏を補いながら、インスリンで高血糖とアシドーシスを是正します。ケトアシドーシスの際には、体重の10%の水分、7〜10mEq/kgのナトリウム、3〜5mEq/kgのカリウムが欠乏していると推定されています。原則として血糖値は1時間ごと、電解質は2時間ごとにモニターされます[1]。
| 治療のステップ | 目安 |
|---|---|
| 輸液(生理食塩水) | 通常500〜1,000mL/hr(または15〜20mL/kg/hr)で開始し、循環動態に応じて250〜500mL/hrに調整[1] |
| 血糖の目標 | 血糖値が250〜300mg/dLになったらブドウ糖を含む輸液に切り替え、意識状態が改善するまでは250〜300mg/dLを維持、その後は150〜200mg/dLを目標[1] |
| インスリン持続静注 | 速効型インスリンを成人では0.1単位/kg/hr、小児では0.05〜0.1単位/kg/hrを目安に開始。50〜75mg/dL/hrの速度での血糖低下が期待される[1] |
| 正常血糖ケトアシドーシスの場合 | 0.05(0.02〜0.1)単位/kg/hrを目安にインスリン持続静注を開始し、5%ブドウ糖液を併用(低血糖時は10%ブドウ糖液に変更)[1] |
| カリウム | 血清カリウムを4.0〜5.0mEq/Lの範囲に維持。3.3mEq/L未満の場合はインスリンを開始・増量せず、20〜30mEq/hrを目安に補充してから開始する[1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第20章[1]
同ガイドラインでは、アシドーシスそのものを重炭酸塩(HCO3⁻)の投与で無理に補正することは、原則として行いません。HCO3⁻の投与やリンの補充が生命予後や病態の改善に寄与するという報告はないとされています[1]。
同学会は、特に小児の治療では、治療開始時にインスリンをボーラス(急速)静脈投与することは脳浮腫のリスクがあるため奨励しておらず、輸液を十分に行って少なくとも1時間経過してからインスリンの持続投与を開始することを推奨しています[1]。
再発を防ぐための教育と、退院後に見直したいポイント
日本糖尿病学会のガイドラインが示す観点から、DKAで一度入院を経験した方にとって最も大切なのは、「なぜ今回起きたのか」を担当医と一緒に振り返ることです。感染症がきっかけだったのか、インスリンの自己中断・自己判断の減量が関わっていたのか、SGLT2阻害薬の休薬タイミングを逃していなかったか、あるいは清涼飲料水の多飲が続いていなかったか――原因ごとに再発予防の対策は変わります[1]。
同学会のRecommendationによれば、特に1型糖尿病でインスリンポンプを使用している方は、ポンプのトラブルや予測低血糖マネジメント(PLGM)機能による基礎インスリンの中断がケトアシドーシスの原因になりうるため、アラームの見落としがないか、予備のインスリン注射キットを常に携帯しているかを退院前に確認しておくことが勧められます[3]。
また、家族や周囲の人にも、シックデイのときにどの薬を止めるか、インスリンは自己判断で中止しないこと、意識状態が悪化した場合はためらわず救急要請することを共有しておくと、初期対応の遅れを防げます。日本糖尿病学会のガイドラインでは、血糖自己測定(SMBG)に加えて持続血糖モニタリング(CGM)を活用すると、体調不良時の血糖変化に早く気づける場合があるとされています[1]。退院後の外来では、今回のDKAのきっかけとなった薬や生活の場面を担当医と一緒に文書として残し、次にシックデイが来たときに家族や職場・学校にも伝えられる形にしておくと、同じ経緯での再入院を防ぎやすくなります。
似ているけれど違う病態 — 高浸透圧高血糖状態(HHS)との違い
DKAとしばしば比較されるのが「高浸透圧高血糖状態(hyperosmolar hyperglycemic state:HHS)」です。日本糖尿病学会のガイドラインによれば、両者は治療の基本方針(輸液・電解質補正・インスリン)は共通していますが、検査所見が大きく異なります。
| 項目 | 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA) | 高浸透圧高血糖状態(HHS) |
|---|---|---|
| 血糖値 | 250mg/dL超[1] | 600mg/dL超[1] |
| 動脈血pH | 7.30以下[1] | 7.30超(高度なアシドーシスなし)[1] |
| HCO3⁻ | 18mEq/L以下[1] | 18mEq/L超[1] |
| ケトーシス | 明らかな増加[1] | あっても軽度にとどまる[1] |
| 好発 | 1型糖尿病に多い[1] | インスリン分泌が保たれた2型糖尿病の高齢者に多い[1] |
| 死亡率 | – | 16.0%と高い[1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第20章[1]
同ガイドラインの解説では、HHSは脱水の程度はDKAより高度になりやすい一方、インスリンの「相対的な」欠乏にとどまるためケトーシスは軽度で済むのが特徴です。急性感染症、脳血管障害、心血管障害、手術、高カロリー輸液、利尿薬やステロイドの投与などをきっかけに、高齢の2型糖尿病患者に起こりやすいと同学会は報告しています[1]。
同ガイドラインによれば、高齢の方では、のどの渇きを感じる中枢(渇中枢)の働きが低下しており、脱水があっても自分から水分を摂る行動が減りやすいため、周囲が気づいたときには病態がかなり進行していることがあります。臨床症状としては、多飲・多尿・体重減少・倦怠感に加えて、片麻痺や腱反射の左右差、病的反射の出現など、脳血管障害と紛らわしい中枢神経症状が出ることもあるため注意が必要です[1]。同学会の報告では、HHSでは脱水補正だけでも1時間あたり75〜100mg/dLの血糖降下が見込まれ、十分な脱水補正を行っても血糖低下が1時間あたり50mg/dL未満にとどまる場合に、はじめて少量のインスリン持続静注が開始されるとされています[1]。同ガイドラインは、治療中は大量輸液による肺水腫を起こしやすいため、意識状態・バイタルサイン・電解質の経時的なモニタリングが欠かせないと述べています[1]。
日本とアメリカ(ADA)のガイドライン比較 — 重症度分類と診断基準の違い
日本糖尿病学会のガイドライン2024では、DKAを「血糖250mg/dL超・pH7.30以下・HCO3⁻18mEq/L以下」という基準でひとまとめに定義しており、国内の診療では重症度をこの基準の範囲内で臨床的に判断します[1]。一方、米国糖尿病学会(ADA)を中心とする学会連合の2024年国際コンセンサスレポートでは、DKAを重症度別に3段階へ分類しています[4]。
| 重症度 | 日本(JDS 2024) | 米国(ADA他 2024コンセンサス) |
|---|---|---|
| 軽症 | 重症度による分類なし。pH7.30以下・HCO3⁻18mEq/L以下を満たせばDKAと診断[1] | pH 7.25〜7.30、HCO3⁻ 15〜18mEq/L[4] |
| 中等症 | pH 7.00〜7.24、HCO3⁻ 10〜15mEq/L[4] | |
| 重症 | pH 7.00未満、HCO3⁻ 10mEq/L未満[4] |
もう一つの大きな違いは、診断基準に「アニオンギャップ」を使うかどうかです。米国糖尿病学会(ADA)を中心とする学会連合の2024年版コンセンサスレポートでは、酸塩基平衡に影響する要因が多様であることを踏まえてアニオンギャップを診断基準から外し、代わりに血中ケトン体(β-ヒドロキシ酪酸)の定量測定をベッドサイドで行うことを重視する方向に改定されました[4]。日本糖尿病学会のガイドラインも血中ケトン体の測定を重視していますが、重症度を段階分けする枠組みは示していません[1][4]。どちらが優れているという結論は本記事では出しません。国内の医療者は日本糖尿病学会の基準に沿って診療しますが、海外文献や国際共同研究を参照する際には、この重症度分類の違いを知っておくと混乱を避けられます。
| 適用時期 | 年収の目安 | 計算式 | 100万円の場合 |
|---|---|---|---|
| ~2026年7月診療分 現行 | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 87,430円 |
| 2026年8月診療分から 見直し後(第1段階) | 年収約370万~770万円(区分ウ) | 85,800円+1%(PDF原文の表記) | 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small> |
| + 年間上限 53万円(新設) | |||
※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は
厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF)
|JHO確認日:2026-07-16
受診時に持っていくと役立つメモ(コピーしてお使いください)
- いつから症状が始まったか(のどの渇き・多尿・嘔吐・腹痛など)
- 直近の血糖自己測定(SMBG)の数値と測定した時刻
- 現在使用中のインスリン・飲み薬(種類・量・最後に使った時刻)
- インスリンや薬を自己判断で減らした・中止したことがあるか
- 発熱・下痢・嘔吐はいつからか、水分や食事はどれくらいとれているか
- 血中・尿中ケトン体を測定した場合はその数値
- 医師に聞きたいこと(今後のシックデイルールの見直し、インスリン量の調整方法など)
DKAの回復にかかる具体的な入院日数や、退院後どのくらいの期間シックデイルールを厳格に守るべきかについて、日本国内の公的ガイドラインが数値目標を示した記載は、今回参照した資料には見当たりませんでした。回復のペースには個人差が大きいため、担当医の指示に従ってください。糖尿病全般の基礎知識は糖尿病まとめページで整理しています。
よくある質問
「ペットボトル症候群」と糖尿病性ケトアシドーシスは同じものですか?
シックデイのとき、インスリン注射も中止していいですか?
糖尿病性ケトアシドーシスと低血糖はどう違いますか?
子どものDKAで特に注意することはありますか?
妊娠中はDKAのリスクが高くなりますか?
DKAの治療で重炭酸塩(重曹)は使わないのですか?
治療中に気をつけるべき合併症はありますか?
入院中、血糖値や電解質はどのくらいの頻度で調べますか?
インスリンポンプを使っています。何に気をつければよいですか?
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第20章 糖尿病における急性代謝失調・シックデイ(感染症を含む)2024年 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/20.pdf
- 国立健康危機管理研究機構 糖尿病情報センター「シックデイ」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/060/06.html
- 日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation」2022年7月26日改訂 http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf
- Umpierrez GE, et al. 米国糖尿病学会(ADA)他「Hyperglycemic Crises in Adults With Diabetes: A Consensus Report」Diabetes Care. 2024;47(8):1257-1275. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11343900
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