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心血管疾患 34分で読める 9回

血圧の変動はなぜ起こる?早朝高血圧・仮面高血圧を徹底解説

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血圧の変動は誰にでも起こる自然な現象です。国立循環器病研究センターの資料によると、正常な人でも夜間睡眠中は昼間より10〜20%血圧が下がります[4]。問題になるのは、この変動が乱れる場合です。診察室では正常でも家庭では135/85mmHg以上になる「仮面高血圧」の人は、脳心血管病の発症リスクが正常血圧の人より2〜3倍高いと報告されています[3]。

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朝起きた直後に血圧が高くなる早朝高血圧、夜になっても血圧が下がらない・むしろ上がる夜間高血圧は、いずれも脳卒中や心筋梗塞のリスクにつながる変動パターンです[3]。診察室血圧だけでは見抜けないため、家庭血圧や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)で「1日を通じた血圧」を確認することが大切です[1]。

要点まとめ

  • 日本腎臓学会誌の総説によれば、血圧は夜間睡眠中に10〜20%下がるのが正常。下がり方が0〜10%なら「Non-dipper型」、逆に上がれば「Riser型」と呼ばれます[3]
  • 日本高血圧学会の分類では、診察室血圧と家庭血圧の組み合わせで「白衣高血圧」「仮面高血圧」「持続性高血圧」「正常血圧」の4パターンに分かれます[2]
  • 仮面高血圧は一般住民の10〜15%、降圧治療中の患者では30〜50%にみられると報告されています[3]
  • 早朝から昼にかけて血圧が急上昇する「モーニングサージ」は、24時間の血圧レベルや年齢と関係なく脳卒中リスクを高めると報告されています[3]
  • Riser型(夜間血圧が上がるタイプ)は脳卒中リスクが約2倍、突然死を含む心臓イベントが約6倍という報告があり、動悸・息苦しさ・夜間頻尿が続く場合や早朝の頭痛がある場合は早めの受診が目安です[3][4]

編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。

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数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

血圧の変動とは?夜に下がり朝に上がる日内変動の仕組み

血圧は24時間じっと同じ値を保っているわけではありません。日本高血圧学会は、睡眠中は活動していないぶん心臓の仕事量が減り、正常な人でも夜間血圧は昼間の覚醒時に比べて10〜20%低下すると説明しています[4][3]。この適度な夜間の下がり方を示すパターンは「Dipper型」と呼ばれ、血圧の日内変動としてはもっとも自然な姿です[3]。

図:JHO編集部が作成

起床前後には、交感神経やレニン・アンジオテンシン系というホルモンの働きが強まり、血小板が固まりやすくなる・血液が固まりやすくなるといった変化も重なることが、循環器の専門誌で報告されています[3]。この早朝の時間帯に脳卒中や心筋梗塞が多く発生することと、血圧が夜間から早朝にかけて上昇する日内変動を示すこととは、関連があると考えられています[3]。つまり、朝方に血圧が上がること自体は体の自然な仕組みですが、その上がり方が大きすぎたり、夜の下がり方が足りなかったりすると、血管や心臓・腎臓への負担が積み重なっていきます[3]。

この変動の乱れは、診察室で座って測る血圧だけでは見つかりません。日本高血圧学会は、家庭血圧測定や24時間自由行動下血圧測定(ABPM)を組み合わせることで、診察室では分からない「本当の血圧の姿」が見えてくるとしています[1]。

血圧の変動を正しく知ることは、決して一部の人だけの話ではありません。公益財団法人循環器病研究振興財団の資料によれば、わが国には約4300万人の高血圧患者がいると推計されている一方で、血圧が適切にコントロールされているのは半分にも満たない約1200万人にとどまり、残りの約3100万人は高血圧と気づいていない、気づいていても放置している、あるいは治療が不十分であるといった状態にあるとされています[4]。診察室血圧だけを見ていては気づけない変動の乱れが、この「気づかれていない・コントロールされていない」高血圧の中に隠れている可能性があります[4]。

自分の変動パターンに気づく第一歩は、特別な検査を受ける前に、日々の家庭血圧を記録し続けることです。国立循環器病研究センターの資料は、家庭血圧の記録によって血圧の変化に早く気づくことができ、治療をより安全に進めることにつながると説明しており、最近ではスマートフォンアプリや通信機能付きの血圧計を活用することで、無理なく記録を継続できる環境が整ってきているとも紹介しています[4]。1日だけの数値ではなく、朝と晩の記録を何日も積み重ねていくことで、「自分の血圧がいつ、どのように動いているか」という変動のクセが見えてきます[4]。

診察室血圧と家庭血圧のズレ — 白衣高血圧・仮面高血圧・持続性高血圧

日本高血圧学会は、診察室血圧と家庭血圧をそれぞれ140/90mmHg・135/85mmHgという基準値で区切り、この2つの組み合わせから血圧の状態を4つに分類しています[2]。診察時にだけ緊張して血圧が上がり、家庭では正常な人は「白衣高血圧」、逆に診察室では正常なのに家庭や職場では血圧が高い人は「仮面高血圧」と呼ばれます[2]。

診察室血圧 家庭血圧135/85mmHg未満 家庭血圧135/85mmHg以上
140/90mmHg未満 正常血圧 仮面高血圧
140/90mmHg以上 白衣高血圧 持続性高血圧

出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」(2026年発行)[2]

日本高血圧学会は、仮面高血圧の人は診察室血圧・家庭血圧の両方が高い持続性高血圧の人と同じくらい脳心血管病を発症しやすいため、治療が必要だとしています[2]。喫煙者、精神的ストレスが高い人、身体的活動度が高い人、アルコール多飲者は仮面高血圧になりやすいため、意識して家庭や職場で血圧を測ることが勧められています[2]。日本腎臓学会誌に掲載された総説によると、仮面高血圧の頻度は正常血圧の一般住民で10〜15%程度である一方、降圧療法中の高血圧患者ではその頻度が3〜4倍も増加し、診察室血圧が140/90mmHg未満に良好にコントロールされている治療中の高血圧患者のうち30〜50%にみられると報告されています[3]。つまり、診察室での数値だけを見て「よく下がっている」と安心していても、その裏で家庭や職場、あるいは夜間の血圧が高いままという状態が、決して珍しくないということです[3]。これは、診察室血圧に基づく通常の降圧治療だけでは、他の時間帯の血圧上昇が見過ごされやすいことを示していると、同学会誌の総説は指摘しています[3]。

心血管イベントのリスクについて、同学会誌の総説は地域一般住民や治療中の高血圧患者を対象とした追跡研究をもとに、正常血圧者と比較した仮面高血圧患者の心血管疾患の相対的発症リスクは2〜3倍程度であり、持続性高血圧患者と同程度であると報告しています[3]。一方、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019が実施した系統的レビューは、PubMed・Cochrane・医中誌・EMBASEといった複数のデータベースから文献を検索し、最終的に33本の論文を定性的な系統的レビューの対象、うち15本を定量的なメタアナリシスの対象として、白衣高血圧の予後を検証しています[8]。その結果、白衣高血圧については、降圧薬を服用していない集団を対象としたメタアナリシスで、脳心血管病の発症・死亡のリスクがオッズ比1.33(95%信頼区間1.11〜1.60)とやや高くなること、また将来的に持続性高血圧へ移行するリスクがオッズ比2.85(95%信頼区間2.32〜3.49)であることが示されています[8]。ただし同ガイドラインは、これらの研究がすべて観察研究であり、エビデンスの強さは「弱」にとどまるとも述べています[8]。同ガイドラインの系統的レビューは、脳卒中に限らず心疾患の発症・死亡や全死亡についても検討しており、白衣高血圧と心疾患リスク・全死亡リスクとの間には、降圧薬非服用者を対象としたメタアナリシスでも有意な関連は認められなかったと報告しています[8]。一方で、白衣高血圧が将来「真性高血圧」(持続性高血圧)へ移行するリスクについては、複数の研究で一貫してリスクの上昇が示されており、同ガイドラインはこの点を踏まえて、白衣高血圧の人であっても定期的な血圧の確認を続けることが重要だとしています[8]。

仮面高血圧の3つの顔 — 早朝高血圧型・ストレス性高血圧型・夜間高血圧型

「仮面高血圧」とひとくくりに呼ばれていても、実際に血圧が上がる時間帯や背景にある病態は一様ではありません。日本腎臓学会誌の総説は、診察室外血圧が再現性をもって有意に上昇する時間帯の違いによって、仮面高血圧には早朝高血圧・ストレス性高血圧・夜間高血圧という3つの表現型があり、それぞれ背景となる関連病態が異なると説明しています[3]。これら3つのタイプで昇圧が起こる時間帯が違うのは、24時間の血圧日内変動が障害された病態が、それぞれ異なる形で表れているためだと同学会誌の総説は述べています[3]。

仮面高血圧のタイプ 診断の目安となる血圧 背景にありやすい病態の例
早朝高血圧 早朝血圧135/85mmHg以上 夜間高血圧からの移行、起床前後の急上昇(サージ型)[3]
ストレス性高血圧 日常生活ストレス状況下血圧135/85mmHg以上 職場・家庭でのストレス、身体活動度の高さ[3]
夜間高血圧 夜間血圧120/70mmHg以上 慢性腎臓病、心不全、睡眠時無呼吸症候群、自律神経障害[3]

出典:苅尾七臣「高血圧治療における家庭血圧と24時間血圧測定の意義」日本腎臓学会誌2009年[3]

同学会誌の総説は、この3タイプのうち慢性腎臓病にもっとも関連しているのは夜間高血圧であるとしています[3]。一方で、Non-dipper型・Riser型の背景には慢性腎臓病だけでなく、糖尿病などによる自律神経障害(起立性低血圧・起立性高血圧)、睡眠障害、抑うつ状態、クッシング症候群や原発性アルドステロン症などの内分泌疾患も関わることがあると同学会誌の総説は指摘しています[3]。とくに睡眠時無呼吸症候群は本態性高血圧の患者の中でも見過ごされていることが多く、糖尿病や慢性腎臓病の患者ではその合併例が多いとも述べられています[3]。

早朝高血圧とモーニングサージ — 起床後の急上昇はなぜ危険か

早朝高血圧について、日本腎臓学会誌に掲載された苅尾七臣氏の総説は、コンセンサスの得られた統一定義はまだないとしながらも、家庭血圧の基準値が135/85mmHgであることから、起床後の平均血圧値が135/85mmHg以上である状態を早朝高血圧としていると説明しています[3]。同総説によれば、早朝には心血管イベントが多く発生し、血圧も夜間から早朝にかけて上昇する日内変動を示すため、早朝血圧は脳・心臓・腎臓のすべての心血管リスクと有意に関連していると報告されています[3]。

「モーニングサージ」は、夜間の血圧の最も低い値(夜間最低血圧)から起床後の血圧までの上昇幅を指す言葉です[3]。同学会誌の総説では、この日内サージが収縮期血圧でおよそ45〜55mmHg以上になる群を「モーニングサージ群」と呼ぶ目安が示されています[3]。自治医科大学の研究グループが高齢の高血圧患者を対象に行った前向き研究では、血圧モーニングサージは24時間の平均血圧レベルや年齢とは独立して、脳卒中の発症を予測する要因になっていたと報告されています[3]。

早朝高血圧には2つのタイプがあるとも説明されています。ひとつは夜間高血圧からそのまま続いて朝も血圧が高い「夜間高血圧型」、もうひとつは夜間は比較的落ち着いているのに起床前後だけ急に血圧が跳ね上がる「サージ型」です[3]。同学会誌の総説は、この両者ともに心血管リスクとなることを示す研究成績が集積されつつあると述べています[3]。降圧薬を服用している人でも、薬の効果が最も切れやすい起床直前の時間帯に血圧が上がりやすいため、早朝高血圧は診察室血圧だけをみる高血圧診療の「盲点」になりやすいと、同学会誌の総説は指摘しています[3]。

なぜ夜間から早朝にかけてこれほど血圧が動きやすいのでしょうか。同学会誌の総説は、夜間から早朝にかけては血圧を一定に保とうとする「圧受容体反射」という体の仕組みの影響を受けて、自律神経や血圧そのものの変動性が1日のうちで最も大きくなる時間帯だと説明しています[3]。早朝の血圧レベルの高さに加えて、この時間帯の血圧変動性の増大や、夜間から早朝にかけて上昇する血圧モーニングサージそのものが、24時間の血圧レベルとは独立して心血管イベントや臓器障害のリスクになると考えられていると、同学会誌の総説は述べています[3]。慢性腎臓病の患者では、夜間高血圧からそのまま続くタイプの早朝高血圧が多い傾向があるとも報告されています[3]。

夜間高血圧とNon-dipper・Riser — 睡眠時無呼吸・腎臓との関係

夜間の血圧パターンは、夜間血圧が昼間に比べてどれくらい下がるかによって、いくつかの型に分類されます。日本腎臓学会誌の総説では、この下降度にもとづくサブタイプが次のように整理されています[3]。

タイプ 夜間収縮期血圧の下降度 意味
Extreme-dipper型 20%超 下がり方が非常に大きい
Dipper型 10〜20% 正常な下がり方
Non-dipper型 0〜10% 下がり方が不十分
Riser型 0%未満(=夜間の方が高い) 夜にむしろ血圧が上がる

出典:苅尾七臣「高血圧治療における家庭血圧と24時間血圧測定の意義」日本腎臓学会誌2009年[3]

同学会誌の総説は、Non-dipper型やRiser型では、正常なDipper型に比べて脳・心臓・腎臓のすべての臓器障害と心血管イベント、心血管死亡のリスクが高いことが知られていると述べています[3]。自治医科大学のABPM研究では、無症候性脳梗塞がRiser型で増加しており、その後の追跡でも脳卒中の発症リスクが増加していたこと、他のパターンに比べてRiser型では脳卒中は約2倍、突然死を含む心臓イベントは約6倍のリスクになっていたことが報告されています[3]。同じ研究グループによるJMS ABPM Study Wave1(n=811)の図表でも、Extreme-dipper型・Dipper型・Non-dipper型のあいだで心血管イベントの発生率に開きがあり、慢性腎臓病を合併する群・合併しない群のいずれでも、Non-dipper型に近づくほど発生率が高くなる傾向が示されています[3]。なお、この図の発生率の単位(人・年あたりの表記)は、参照した資料のレイアウト上、数値と軸の対応関係を1桁の誤りなく読み切ることができなかったため、具体的な発生率の数字はここでは示していません。同学会誌の総説は、夜間血圧下降パターンにかかわらず慢性腎臓病そのものが将来の心血管イベントのリスクになると述べています[3]。そのうえで同学会誌の総説は、血圧の日内変動の乱れそのものが、診察室血圧や24時間の平均血圧レベルとは独立した仕組みで心血管リスクを増加させると考えられると結論づけています[3]。つまり、平均の血圧値が同じであっても、変動のリズムが乱れているかどうかで、その先のリスクは変わってくるということです[3]。同学会誌の総説は、スウェーデンで高齢者の地域住民を対象に行われた研究でも、夜間の血圧下降パターンの異常が心不全の発症リスクの高さと関連していたことが明らかにされていると紹介しています[3]。さらに、睡眠時間の短縮そのものがRiser型と相乗的に心血管リスクを増加させるという報告もあり、夜間血圧の乱れと睡眠不足が重なる場合には、いっそう注意が必要だと考えられます[3]。

夜間血圧が下がらない原因は一つではありません。同学会誌の総説は、心不全や腎不全などによる体内の水分・血液量の増加、食塩感受性高血圧、糖尿病などによる自律神経障害、睡眠時無呼吸症候群、高齢者の睡眠障害、抑うつ状態などがNon-dipper型・Riser型の背景になりうると整理しています[3]。特に慢性腎臓病(CKD)ではNon-dipper型・Riser型を示すことが多く、夜間高血圧が最も強く関連する仮面高血圧のタイプは夜間高血圧であると、同学会誌の総説は述べています[3]。国立循環器病研究センターの資料でも、夜間睡眠中に血圧が十分下がらない場合や逆に上昇する場合は脳や心臓血管系の病気の発症リスクが高まるとし、その原因として塩分過多・睡眠時無呼吸症候群・過度な飲酒・ストレスを挙げ、まずは生活習慣の見直しが必要だとしています[4]。同センター資料は、睡眠時無呼吸症候群の診断と治療が夜間睡眠中の降圧につながることも知られていると述べ、生活習慣の改善や降圧薬治療でも十分な効果が得られないときには睡眠時無呼吸症候群の検査を受けるよう勧めています[4]。

Non-dipper型・Riser型になる前触れを捉える指標も研究されています。日本腎臓学会誌の総説が紹介する「Dipping time」という指標は、就寝後に夜間血圧の下降度が10%に達するまでの時間として定義され、腎機能の低下が進むにつれてNon-dipper型・Riser型に先行して延長することが明らかにされたと報告されています[3]。同学会誌の総説は、Dipper型に分類される慢性腎臓病の患者であっても、このDipping timeが延長している場合には、将来Non-dipper型・Riser型に移行するリスクが高いことを示す指標になりうると述べています[3]。

ABPM(24時間自由行動下血圧測定)とは — 何がわかり、保険はどうなるか

日本腎臓学会誌の総説によれば、ABPM(Ambulatory Blood Pressure Monitoring)は、小型の血圧計を体に装着したまま日常生活を送り、日中・夜間を通じて一定間隔で自動的に血圧を測定する検査です[3]。日本高血圧学会が一般向けに公表している解説冊子は、血圧の測り方には診察室血圧・家庭血圧に加えて、特殊な機器を装着して15分から1時間ごとに1日をかけて血圧を測る「24時間血圧」があると紹介しています[1]。日本腎臓学会誌の総説は、このABPMによって24時間血圧・睡眠時血圧・覚醒時血圧・早朝血圧・夜間最低血圧といった複数の指標が得られ、白衣高血圧や仮面高血圧、夜間高血圧、モーニングサージの評価に用いられると説明しています[3]。家庭血圧計だけでは測りにくい「眠っている間の血圧」を数値として確認できる点が、ABPMの大きな特徴です[3]。同学会誌の総説はさらに、ABPMからは夜間の血圧下降度や早朝の血圧上昇幅だけでなく、覚醒時血圧のばらつきの大きさを示すSD(標準偏差)や、身体活動に対する血圧の反応性を示す指数といった、血圧の「揺れの大きさ」そのものを表す指標も得られると説明しています[3]。これらは診察室の1回の測定値だけでは決してわからない情報であり、ABPMが「点」ではなく「線」で血圧をとらえる検査であることを示しています[3]。同学会誌の総説が示す定義では、早朝血圧は起床後2時間の平均血圧、夜間最低血圧は夜間の血圧が最も低い時間帯を含む2時間の平均血圧、そして「白衣効果」は診察室血圧と覚醒時血圧(または24時間血圧)との差として整理されています[3]。同じ「血圧が高い・低い」という言葉でも、どの時間帯の平均を指しているかによって意味が変わってくるため、ABPMの結果を医師から説明されるときは、どの指標の話をしているのかを確認するとよいでしょう。

同学会誌の総説では、診察室外血圧の診断のうち、昼間血圧が135/85mmHg以上、または夜間も含めた平均24時間血圧が130/80mmHg以上であることをもって仮面高血圧と診断すること、夜間血圧の基準閾値を120/70mmHg以上とすることが示されています[3]。ただし同学会誌の総説は、家庭血圧で定義した仮面高血圧とABPMの自由行動下血圧で定義した仮面高血圧は厳密には同じ結論になるとは限らないとしたうえで、両者の心血管リスクはほぼ同程度であるとも述べています[3]。

どのような人にABPMが向いているかについて、同学会誌の総説は、降圧療法中のすべての高血圧患者、正常高値血圧(診察室血圧130/85〜139/89mmHg程度)の人、喫煙者、アルコール多飲者、精神的ストレスが職場や家庭で高い人、身体活動度が高い人、心拍数の多い人、起立性血圧変動異常(起立性高血圧・起立性低血圧)がある人、肥満・メタボリックシンドローム・糖尿病を有する人、慢性腎臓病の合併例、左室肥大などの臓器障害の合併例、心血管疾患の合併例を、仮面高血圧を疑うべきハイリスク群として挙げています[3]。これらの項目の多くは、交感神経の緊張や血管への負担が診察室の外でも続きやすい状態と重なっており、診察室血圧だけでは血圧の全体像を見誤りやすい人たちだといえます[3]。診察の診断プロセスとしては、まず家庭血圧で早朝血圧を測定し、それでも診断がつかない場合にABPM(もしくは家庭血圧によるストレス時・夜間血圧測定)を追加するという段階的な進め方が示されています[3]。

診断がひとつの検査だけで完結するわけではない点も押さえておきたいところです。日本腎臓学会誌の総説が示す診療プロセスでは、まず診察室(健診時)血圧が140/90mmHg未満であっても、正常高値血圧・喫煙・アルコール多飲・強いストレス・高い身体活動度・脈拍数の多さ・起立性血圧変動異常・メタボリックシンドロームや糖尿病・慢性腎臓病の合併・臓器障害や心血管疾患の合併といったハイリスクの特徴がある場合には、仮面高血圧を疑って家庭血圧計で早朝血圧を測定することから始めるとされています[3]。早朝血圧が135/85mmHg以上であればその時点で早朝高血圧と判断され、135/85mmHg未満であっても、職場や就寝時も含めた家庭血圧の平均(平均24時間血圧)やABPMによる平均24時間血圧が130/80mmHg以上であれば、昼間の血圧が高ければストレス性高血圧、夜間の血圧が高ければ夜間高血圧と考える、という段階を踏んで診断が進むと同学会誌の総説は説明しています[3]。そのうえで、24時間の血圧が130/80mmHg未満と正常であっても、睡眠時無呼吸症候群が隠れていないかをあわせて検討する必要があるとも述べられています[3]。

保険適用については、厚生労働省が定める特定診療報酬算定医療機器の一覧に「D225-3 24時間自由行動下血圧測定」という項目があり、携帯することで自由行動下において血圧を長時間(24時間)記録することが可能な長時間自由行動下血圧計を用いた検査が、厚生労働省の診療報酬の算定対象として位置づけられています[5]。つまり厚生労働省の定めにより、ABPMは医師が必要と判断した場合に保険診療として実施できる検査です[5]。実際の自己負担額や算定できる条件は医療機関によって異なるため、費用については受診する医療機関に確認することをお勧めします。

気温・入浴・排便・ストレスによる血圧の揺れ — 数字でわかっていること

血圧は季節や日々の行動によっても動きます。日本高血圧学会は、家庭血圧を測定する際の注意点として、冬に寒い部屋にいると血圧が上がることを挙げ、静かで適温の室内で測定するよう勧めています[4]。

入浴については、消費者庁の資料が、暖かい部屋から温度の低い脱衣所・浴室に入ることで血圧が上がり、その後に温かい湯に入ることで血圧が低下するという急激な血圧の変化が起こると注意喚起しています[6]。同庁は、高齢者の「不慮の溺死及び溺水」による死亡者数が増加傾向にあり、その多くが自宅の浴槽での入浴中の事故であると報告し、脱衣所・浴室を暖めておくこと、湯温は41度以下・湯につかる時間は10分までを目安にすること、浴槽から急に立ち上がらないことなどを呼びかけています[6]。同庁が公表した統計では、この「家」「居住施設」の「浴槽」における不慮の溺死・溺水による死亡者数は、交通事故による死亡者数よりも多くなっていると報告されています[6]。同庁は、食後に血圧が下がりすぎる食後低血圧によって高齢者が入浴中に失神することもあるとし、食後すぐの入浴やアルコールが抜けていない状態での入浴も控えるよう注意を促しています[6]。

排便時のいきみも血圧を急激に押し上げる場面のひとつです。日本大腸肛門病学会のウェブサイトに掲載された解説では、便秘患者が硬い便を出そうといきんだ瞬間、収縮期血圧が280程度にまで達することもあると報告されており、高齢者は動脈硬化があるためちょっとしたいきみでも血圧が上がりやすいと説明されています[7]。同解説は、この排便時の血圧急上昇が引き金となって、脳卒中やくも膜下出血、心筋梗塞、動脈瘤の破裂・解離が起きる可能性があると述べ、いくら安静時の血圧を薬でコントロールしても、硬い便を出すための血圧上昇そのものを避けることは難しいと指摘しています[7]。

ストレスについては、精神的ストレスが高い人ほど仮面高血圧になりやすいという関連が、日本腎臓学会誌の総説でも指摘されています[3]。ただし、緊張やストレスが具体的に何mmHg血圧を上げるかという定量的な数値は、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。数値の裏づけがない部分は、憶測で数字を示すことを避けています。

季節による血圧の変動と、早朝の変動が重なる時期にも注意が必要です。日本高血圧学会は家庭血圧測定の際の注意点として冬に寒い部屋にいると血圧が上がることを挙げていますが[4]、寒さによる血圧上昇と、起床直後に起こりやすいモーニングサージとが同じ冬の朝に重なれば、それぞれ単独で起こるときより血圧の振れ幅が大きくなりうる場面だと考えられます。暖房を入れてから起き出す、脱衣所や浴室を事前に暖めておくといった「温度差を減らす」工夫は、変動そのものを穏やかにする土台になります[6]。

変動の乱れに医師ができること — 服薬タイミング・利尿薬・睡眠時無呼吸治療

生活習慣の改善や薬物治療を続けても目標の血圧に届かない状態が続くことがあります。公益財団法人循環器病研究振興財団の資料は、サイアザイド系利尿薬とその類似薬を含めて3剤以上の降圧薬を服用しても目標血圧に到達しない高血圧を「治療抵抗性高血圧」と呼ぶと説明しています[4]。血圧の変動パターンの乱れは、生活習慣の見直しだけでなく、治療のタイミングを調整することでも整えられる場合があります。日本腎臓学会誌の総説は、利尿薬(ヒドロクロロチアジド)を4週間投与した研究で、Non-dipper型の患者の夜間血圧が下がり、Dipper型に近づいたことが報告されていると紹介しています[3]。同学会誌の総説はまた、複数の降圧薬を服用しても血圧コントロールがつかない治療抵抗性高血圧の患者において、薬剤数を増やす代わりに1剤を就寝時投与に変更したところ、Non-dipper型がDipper型に移行し、より良好な24時間血圧コントロールが得られたとする報告もあると述べています[3]。自治医科大学の研究グループが行ったJapan Morning Surge-1(JMS-1)研究では、家庭血圧の記録に基づいて用量を調整したα遮断薬を就寝前に投与したところ、早朝高血圧の患者で血圧と微量アルブミン尿がともに改善したことが報告されています[3]。なお、公益財団法人循環器病研究振興財団の資料によれば、日本高血圧学会の新指針(高血圧管理・治療ガイドライン2025)では、これまでの4種類の第一選択薬(サイアザイド系利尿薬・カルシウム拮抗薬・ACE阻害薬・ARB)に加えて、5種類目としてβ遮断薬を加えることが推奨されており、どの薬を選ぶかはその人の体の状態に合わせて決める「積極的適応」の考え方が重要だとされています[4]。

生活習慣の面では、公益財団法人循環器病研究振興財団の資料が、減塩をすると一日24時間を通して血圧が低下し、降圧薬を服用する場合も減塩している方が降圧効果が大きいと説明しています[4]。同センター資料はまた、脳・心臓・腎臓を長く保つ臓器保護効果が高い薬として、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬やミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が夜間高血圧やたんぱく尿の改善に役立っていると紹介しています[4]。生活習慣の改善や複数の薬を使っても血圧の変動パターンが整わない場合、同センター資料は「治療抵抗性高血圧」に対する新しい治療法として、腎動脈周囲の交感神経の働きを弱める「腎デナベーション」がこの春から保険適用になったことも紹介していますが、これはすべての高血圧患者に行われる治療ではなく、専門医が適切と判断した場合にのみ選択されるものだとしています[4]。

血圧の変動が大きい、あるいは複数の薬を使っても整わないという場合には、背景に特定の病気が隠れていることもあります。同センター資料は、高血圧の約1割は原発性アルドステロン症や腎血管性高血圧といった特定の病気で起こる「二次性高血圧」であり、若い年齢での発症や複数の降圧薬を使っても血圧が下がらない場合には、二次性高血圧を疑って専門医に相談するよう勧めています[4]。原発性アルドステロン症は、塩分や水分を体内に保つ働きをするホルモン(アルドステロン)が過剰に分泌されることで血圧が上昇するもの、腎血管性高血圧は腎臓の動脈が狭くなることで血圧が上昇するものだと同センター資料は説明しており、いずれも適切な診断がつけば、大きな改善が期待できる場合があるとしています[4]。

血圧管理は医師一人だけでなく、看護師・管理栄養士・薬剤師など多職種による支援を受けることで、降圧目標に到達する頻度が増えるだけでなく、脳・心臓・腎臓の臓器障害の発症頻度も抑制されることが知られていると、同センター資料は述べています[4]。こうしたチーム医療が受けられる医療機関は限られますが、近くに高血圧専門外来があれば相談してみるとよいでしょう[4]。同センター資料はまた、家族と一緒に生活習慣の改善に取り組むことで、血圧管理が続けやすくなるとも述べています[4]。

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受診の目安 — すぐに医療機関へ相談すべきサイン

すぐに受診が必要なサイン

  • 国立循環器病研究センターの資料は、高血圧は自覚症状がほとんどない病気だとしつつ、早朝の頭痛、夜の頻尿や呼吸困難、めまいやふらつき、下肢の冷えなどの症状があるときは、高血圧によって臓器が傷み始めている(合併症)ことが疑われるとしています[4]
  • 突然の激しい頭痛、ろれつが回らない、手足に力が入らない、意識がもうろうとするなどの症状は、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気のサインである可能性があり、様子を見ず救急要請を検討すべき状態です
  • 日本腎臓学会誌の総説は、臓器障害(特に左室肥大)がある場合は睡眠時無呼吸症候群を疑うべきだとしています[3]。いびきや日中の強い眠気とあわせて夜間高血圧が疑われる場合は、かかりつけ医への相談が勧められます
  • 家庭血圧が135/85mmHg以上の日が続く、または早朝血圧だけが高い状態が続く場合は、診察室血圧が正常であっても医師に相談し、ABPMなど診察室外での血圧評価を検討してもらうことが勧められます[2][3]

日本と米国のガイドライン比較 — 高血圧・仮面高血圧の基準はどこが違うか

診察室血圧にもとづく高血圧の定義は、国や学会によって統一されているわけではありません。日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン2019の系統的レビューは、2017年11月に米国のACC/AHA(米国心臓病学会・米国心臓協会)の高血圧ガイドラインが改定され、高血圧の定義が診察室血圧130/80mmHg以上に変更されたことにともない、白衣高血圧の定義も診察室血圧130/80mmHg以上かつABPMまたは家庭血圧130/80mmHg以下という、より厳しい基準に変更されたと紹介しています[8]。

項目 日本(日本高血圧学会) 米国(ACC/AHA・2017年改定)
高血圧の診察室血圧基準 140/90mmHg以上[2] 130/80mmHg以上[8]
白衣高血圧の診察室血圧の目安 140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg未満[1][3][4] 130/80mmHg以上、ABPMまたは家庭血圧130/80mmHg以下[8]

日本高血圧学会のガイドラインは、この米国の新しい定義にもとづいた白衣高血圧の脳心血管リスクや死亡に関する検証はまだ十分ではなく、今後の研究が必要だとしています[8]。つまり、どちらの基準がより優れているかという結論が出ているわけではなく、日本の医療機関では日本高血圧学会の基準にもとづいて診療が行われている、という点を押さえておくとよいでしょう[2]。海外の情報サイトや翻訳された記事を読む際、基準値の数字だけを見比べてしまうと、日本の基準と米国の基準を取り違えてしまうことがあります。数字を見るときは、必ず「どの学会・どの国の基準か」もあわせて確認する習慣をつけると、混乱を避けられます。

〈診察に持っていくメモの例〉
・家庭血圧の記録(できれば朝・晩それぞれ1〜2週間分の平均値)
・血圧が特に高い、または低いと感じた時間帯(早朝/夜間/入浴後/排便後など)
・いびき・日中の強い眠気・夜間の頻尿の有無
・現在服用中の薬とその服用時間(朝・夜のどちらに飲んでいるか)
・複数の薬を使っても血圧が下がりにくいかどうか、若い年齢で高血圧を指摘されたかどうか
・医師に聞きたいこと(例:「ABPMや24時間血圧測定は必要ですか」「早朝の血圧が高いのですが薬の時間を変えた方がよいですか」「二次性高血圧の可能性はありますか」)

血圧の日内変動には個人差が大きく、仕事の時間帯や生活リズム、服薬状況によっても変わってきます。今回参照した資料には、個々の生活パターン別にどの程度変動幅が変わるかという網羅的なデータは見当たりませんでした。気になる変動がある場合は、自己判断で結論を出さず、家庭血圧の記録を持ってかかりつけ医に相談することをお勧めします。

血圧は本来、1日の中で静かに上下を繰り返しているものであり、その変動自体が悪いわけではありません[4]。問題になるのは、診察室での一度の測定だけを頼りに「大丈夫」「治療中だから安心」と判断してしまい、早朝や夜間、あるいは家庭・職場での血圧の上がり方に気づけないまま過ぎてしまうことです[2][3]。家庭血圧を朝晩記録する、いびきや日中の眠気といった睡眠時無呼吸症候群のサインを見逃さない、複数の薬を使っても血圧が下がりにくいときは早めに専門医へ相談する——こうした一つひとつの積み重ねが、変動の乱れを早く見つけ、脳・心臓・腎臓を長く守ることにつながります[4]。

よくある質問

血圧の変動はどこまでが正常ですか?
日本高血圧学会や国立循環器病研究センターの資料によると、正常な人でも夜間睡眠中は昼間より10〜20%血圧が下がります[4][3]。この範囲の変動は自然なものですが、下がり方が0〜10%しかない、あるいは夜の方が高くなるといった場合は、注意が必要なパターンとされています[3]。1日の中で血圧が変動すること自体は病気ではなく、気温・入浴・排便・ストレスなどによる一時的な上下も含めて、誰にでも起こる自然な現象です[4][6]。
家庭血圧と診察室血圧、どちらを優先すべきですか?
日本高血圧学会は、診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断を優先するとしています[2]。これは、家庭血圧の方が普段の生活に近い状態を反映し、将来の脳心血管病との関連がより強いことがわかってきたためです[4]。診察室でしか測らない場合、白衣高血圧を高血圧と誤ってしまったり、逆に仮面高血圧を正常と見誤ってしまったりすることがあるため、両方の値を照らし合わせることが勧められています[2]。
仮面高血圧はどうやって気づけますか?
診察室での測定だけでは気づけません。日本高血圧学会は、仮面高血圧は家庭血圧を測定していなければ見逃されてしまうと説明しています[2]。喫煙、アルコール多飲、精神的ストレス、身体活動度の高さなどの特徴がある人は、家庭や職場で朝と晩に血圧を測る習慣を持つことが勧められます[2][3]。
早朝高血圧はなぜ危険とされるのですか?
早朝は交感神経やホルモンの働きが強まり、血液が固まりやすくなるなどの変化が重なる時間帯で、脳卒中や心筋梗塞が多く発生することが報告されています[3]。血圧のモーニングサージ(起床時の急上昇)は、24時間の平均血圧レベルや年齢とは独立して脳卒中リスクを高めると報告されています[3]。
夜間に血圧が下がらないのはなぜですか?
原因は一つではありません。日本腎臓学会誌の総説は、心不全や腎不全による体液量の増加、食塩感受性高血圧、糖尿病による自律神経障害、睡眠時無呼吸症候群、高齢者の睡眠障害などが背景になりうると整理しています[3]。特に慢性腎臓病がある人は、夜間血圧が下がりにくい傾向が指摘されています[3]。同学会誌の総説は、減塩や利尿薬によってNon-dipper型がDipper型に近づいたとする報告もあると紹介しています[3]。
ABPM(24時間自由行動下血圧測定)はどんな検査ですか?保険はききますか?
小型の血圧計を体に装着したまま日常生活を送り、日中・夜間を通じて自動的に血圧を記録する検査です[3]。厚生労働省が定める特定診療報酬算定医療機器の一覧に「D225-3 24時間自由行動下血圧測定」として収載されており、厚生労働省の基準にもとづき医師が必要と判断すれば保険診療として実施できます[5]。自己負担額は医療機関によって異なるため、事前の確認をお勧めします。
お風呂に入ると血圧が急に変わるというのは本当ですか?
消費者庁の資料は、暖かい部屋から温度の低い脱衣所・浴室に入ることで血圧が上がり、その後温かい湯に入ることで血圧が下がるという急激な変化が起こると説明しています[6]。消費者庁の資料では、脱衣所・浴室を事前に暖めておくこと、湯温は41度以下を目安にすることなどが呼びかけられています[6]。
トイレでいきむと血圧はどれくらい上がりますか?
日本大腸肛門病学会のウェブサイトに掲載された解説によると、便秘患者が硬い便を出そうといきんだ瞬間、収縮期血圧が280程度にまで達することもあると報告されています[7]。高齢者は動脈硬化のため、ちょっとしたいきみでも血圧が上がりやすいとされています[7]。
血圧の変動が大きい人は病院に行くべきですか?
家庭血圧が135/85mmHg以上の日が続く、早朝だけ血圧が高い、いびきや日中の強い眠気があるといった場合は、診察室血圧が正常であっても医師に相談することが勧められます[2][3]。突然の激しい頭痛や手足の脱力などがあるときは、様子を見ず救急要請を検討すべき状態です。
複数の薬を使っても血圧の変動が整わないときはどうすればよいですか?
日本腎臓学会誌の総説は、複数の降圧薬を使っても血圧がコントロールできない治療抵抗性高血圧において、薬を増やす代わりに1剤を就寝時投与に変更することでNon-dipper型がDipper型に移行し、24時間血圧コントロールが改善したとする報告があると紹介しています[3]。また、循環器病研究振興財団の資料は、高血圧の約1割は原発性アルドステロン症などの特定の病気による「二次性高血圧」であり、若い年齢での発症や薬が効きにくい場合は専門医への相談が勧められるとしています[4]。自己判断で服薬時間を変えず、まず医師に相談してください。
市販の家庭用血圧計で早朝高血圧や仮面高血圧に気づけますか?
気づける可能性があります。日本高血圧学会は、上腕カフ・オシロメトリック式の家庭用血圧計を使い、朝は起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前、夜は就寝前に、それぞれ1〜2回ずつ測定して記録するよう勧めています[2][4]。この「朝」の測定値の平均が135/85mmHg以上であれば、それだけで早朝高血圧が疑われます[3]。診察室では正常でもこの朝の測定値が高い状態が続く場合は、記録を持って医師に相談してください。公益財団法人循環器病研究振興財団の資料は、上腕カフ・オシロメトリック式以外の、カフを使わないタイプの血圧計は測定値の信頼性に懸念があり、高血圧の診断や治療に用いることは推奨されていないと注意を促しています[4]。
Dipping timeとは何ですか?
日本腎臓学会誌の総説が紹介する指標で、就寝後に夜間血圧の下降度が10%に達するまでの時間を指します[3]。腎機能の低下が進むにつれて、この時間がNon-dipper型・Riser型へ移行するより先に延長することが報告されており、慢性腎臓病のある人で夜間血圧の変化を早期に見つける手がかりになりうるとされています[3]。

参考文献

  1. 日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025 わかりやすい解説冊子『高血圧の話』」https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf
  2. 日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう〜あなたは『白衣高血圧』や『仮面高血圧』ではありませんか?〜」https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf
  3. 苅尾七臣「高血圧治療における家庭血圧と24時間血圧測定の意義―CKDの視点より―」日本腎臓学会誌 2009年;51(4):465-470 https://jsn.or.jp/journal/document/51_4/465-470.pdf
  4. 公益財団法人循環器病研究振興財団「知っておきたい循環器病あれこれ177号 高血圧と上手に付き合うために―学会の新指針の考え方と今日からできる実践―」(国立循環器病研究センター 吉原史樹、2026年7月)http://www.jcvrf.jp/general/pdf_arekore/arekore_177.pdf
  5. 厚生労働省「特定診療報酬算定医療機器の定義等」(D225-3 24時間自由行動下血圧測定)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001219119.pdf
  6. 消費者庁「冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!」(平成30年11月21日)https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/caution/caution_009/pdf/caution_009_181121_0001.pdf
  7. 日本大腸肛門病学会「たかが便秘に要注意!(たかが便秘されど便秘)」(横浜市立大学 中島淳)https://www.coloproctology.gr.jp/modules/citizen/index.php?content_id=19
  8. 日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン2019 CQ2:白衣高血圧は治療を行うことにより、予後が改善できるか?」https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/CQ2.pdf

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更新日:2026年7月21日。本記事の内容に誤りや古い情報があるとお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。ガイドライン改定などにより内容を随時見直しています。

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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