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糖尿病 35分で読める 36回

初期糖尿病の食事療法と運動療法|治療の進め方を徹底解説

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糖尿病と診断されたら、まず行うのは薬ではなく「食事療法」と「運動療法」です。日本糖尿病学会は、インスリン非依存状態(多くの2型糖尿病)では、十分な食事療法・運動療法を2〜3ヶ月行っても血糖コントロールの目標に届かない場合に、はじめて血糖降下薬による治療を開始するとしています[2]。

目標とするHbA1cは、合併症予防の観点から「7.0%未満」が基本ですが、年齢や罹病期間、低血糖のリスクなどにより6.0%未満〜8.0%未満の範囲で個別に設定されます(日本糖尿病学会)[2]。ただし、随時血糖値が250〜300mg/dL程度以上など代謝障害が高度な場合は、最初から食事療法・運動療法に薬物療法を加えて開始することもあります(日本糖尿病学会)[2]。自己判断で治療方針を決めず、必ず主治医と相談しながら進めてください。

要点まとめ

  • 診断後の治療の土台は「食事療法」+「運動療法」。多くの場合、薬はこの2つを2〜3ヶ月行ってからの判断(日本糖尿病学会)[2]
  • HbA1cの目標値は3段階:血糖正常化を目指す際6.0%未満/合併症予防のため7.0%未満(基本)/治療強化が困難な場合8.0%未満(日本糖尿病学会)[2]
  • 運動療法は、有酸素運動を週150分以上、レジスタンス運動を週2〜3日行うことが目安(日本糖尿病学会)[4]
  • 治療を開始・変更したあとは、約2〜3ヶ月ごとに効果を確認しながら見直していく(日本糖尿病学会)[2]
  • 強い喉の渇き・多尿に、意識がもうろうとする・呼吸が荒い・激しい嘔吐が重なった場合はケトアシドーシスの可能性があり、様子を見ずすぐに医療機関を受診すべきサイン(日本糖尿病学会)[9]

編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」・糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)・e-ヘルスネット(厚生労働省)などの公的情報源と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。本記事は医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。数値・基準はガイドラインの改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。治療方針は必ず主治医と相談のうえ決めてください。

🔧 診断されたばかりの方向け:最初の2〜3ヶ月チェックリスト

やること 目安
食事内容の見直しを始める 今日から少しずつ[6]
有酸素運動を生活に取り入れる 週150分めやす(できる範囲から)[4]
レジスタンス運動(筋トレ)を取り入れる 週2〜3日[4]
自分のHbA1c目標値を主治医に確認する 6.0〜8.0%の間で個別設定[2]
2〜3ヶ月後に検査結果を見直す 効果が乏しければ薬物療法を検討[2]

このチェックリストはあくまで一般的な目安です。実際の治療計画は、血糖値やHbA1cの数値、合併症の有無、年齢などによって一人ひとり異なります。次の章から、それぞれの項目を詳しく解説します。

糖尿病とは?血糖値が上がる仕組みと、なぜ「まず食事と運動」なのか

糖尿病は、インスリンというホルモンの働きが不足することで、血液中のブドウ糖(血糖)が慢性的に高くなる状態です。血糖値が高い状態が続くと、網膜症・腎症・神経障害といった細小血管の合併症や、脳梗塞・心筋梗塞などの大血管の合併症のリスクが上がります(日本糖尿病学会)[2]。

上図:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」にもとづく、糖尿病と診断されたあとの治療の基本的な進め方をJHO編集部が作図[2]。

日本糖尿病学会は、糖尿病治療の目標を「高血糖に起因する代謝異常を改善することに加え、糖尿病に特徴的な合併症、および糖尿病に起こり得る併発症の発症、増悪を防ぎ、糖尿病がない人と変わらない生活の質(QOL)と寿命を実現すること」と説明しています[2]。

治療の入り口で「なぜ、いきなり薬ではないのか」と疑問に思う方は少なくありません。糖尿病情報センターは、糖尿病の治療について「血糖のコントロールの土台は、まず食事と運動をしっかり行うこと」であり、「それでも不十分な場合に、お薬を追加していく」という考え方を示しています[6]。これは、食事療法・運動療法が、薬物療法にはない働き(体重管理・インスリンの効きの改善・血圧や脂質の改善など)を同時に持っているためです。日本糖尿病学会のガイドライン2024でも、インスリン非依存状態(多くの2型糖尿病がこれにあたります)では、十分な食事療法・運動療法を2〜3ヶ月間行っても良好な血糖コントロールが得られない場合に、経口血糖降下薬やGLP-1受容体作動薬による治療を開始する方針が示されています[2]。

ただし、これは「誰でも必ず2〜3ヶ月は薬なしで様子を見る」という意味ではありません。同じガイドラインは「ただし、代謝障害の程度によっては最初から経口血糖降下薬やインスリンなどの薬物療法を、食事療法、運動療法に加えて開始する」とも述べています[2]。具体的には、インスリン依存状態(1型糖尿病の多く、2型糖尿病でも代謝障害が著しいとき)、高血糖性の昏睡、妊娠時、全身管理が必要な外科手術、重症感染症などは、インスリン療法の絶対的適応となり、直ちにインスリン療法が開始されます(日本糖尿病学会)[2]。また、インスリン非依存状態でも「随時血糖値250〜300mg/dL程度またはそれ以上」など代謝障害の程度が高度な場合は、最初から薬物療法を並行して始めることがあります(日本糖尿病学会)[2]。どちらに該当するかは、血液検査の結果や全身状態によって医師が判断するため、診断時に自分がどちらのタイプにあたるのか、主治医に確認しておくと安心です。

「まずは生活習慣から」という方針の背景には、食事療法・運動療法が、薬にはない複数の効果を同時に持っているという理由もあります。体重が減ることでインスリンの効きが改善し、同じ量のインスリンでもより効率よく血糖値を下げられるようになります。また、食事療法・運動療法は血糖値だけでなく、血圧・脂質(コレステロールや中性脂肪)の改善にもつながることが知られており、糖尿病治療の目標である「合併症の予防」に対して、薬物療法とは違う角度から働きかけることができます。だからこそ、たとえ将来的に薬が必要になったとしても、食事療法・運動療法は治療の土台として並行して続けていくことになります。逆に言えば、「薬を飲み始めたから、もう食事や運動は気にしなくていい」という考え方は誤りです。薬物療法が始まったあとも、食事療法・運動療法をやめてよいわけではなく、両者を組み合わせて続けることで、より少ない薬の量で良好な血糖コントロールを維持できる可能性が高まります。診断直後の今の時期に身につけた食事・運動の習慣は、その後何年にもわたる治療の基盤になります。

今の血圧・脈拍を確かめる

数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。

身長と体重からBMIも調べる

これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

「初期糖尿病」とひとことで言っても——治療方針が変わるタイプの違い

この記事で紹介する「まず食事療法・運動療法、届かなければ薬物療法」という流れは、主に成人で発症する2型糖尿病(インスリンの分泌不足や効きにくさが徐々に進むタイプ)を想定した、最も一般的な進め方です。しかし、糖尿病にはいくつかのタイプがあり、タイプによって治療の進め方が大きく異なります。

  • 1型糖尿病:膵臓からインスリンがほとんど、またはまったく出なくなるタイプです。日本糖尿病学会は、多くの1型糖尿病がインスリン依存状態にあるとし、この場合は食事療法・運動療法の経過を待たず、直ちにインスリン療法を開始するとしています[2]。
  • 2型糖尿病:この記事で中心的に扱っているタイプです。インスリンの分泌低下や効きにくさ(インスリン抵抗性)が背景にあり、多くはインスリン非依存状態から治療が始まります(日本糖尿病学会)[2]。
  • 妊娠糖尿病・糖尿病合併妊娠:日本糖尿病学会は、糖尿病患者の妊娠時や妊娠糖尿病においては「インスリン療法により厳格な血糖コントロールを目指すべき」としています[2]。母体・胎児双方への影響を考慮した専門的な管理が必要になるため、この記事の内容をそのまま当てはめず、産婦人科・糖尿病専門医の指導を受けてください。
  • その他の特定の機序・疾患による糖尿病:他の病気や薬剤の影響で血糖値が上がるタイプもあります。原因となっている病気・薬剤の治療とあわせて、個別に治療方針が検討されます。

自分がどのタイプにあたるかによって、「まず2〜3ヶ月は生活習慣から」という進め方が当てはまるかどうかが変わってきます。診断を受けた際に、自分のタイプと、それに応じた治療の進め方について、主治医にはっきり確認しておくことをおすすめします。

HbA1cと血糖値の基準——診断基準と血糖コントロール目標

治療方針を理解するうえで、まず押さえておきたいのが「診断の基準」と「治療の目標」という2つの数字です。この2つは似ているようで役割が異なります。診断基準は「糖尿病かどうかを判定する」ための数字、コントロール目標は「治療を始めたあと、どこまで血糖値を下げることを目指すか」という数字です。

項目 糖尿病型と判定される基準 備考
空腹時血糖値 126mg/dL以上 静脈血漿での測定値[1]
75gOGTT(ブドウ糖負荷試験)2時間値 200mg/dL以上 簡易血糖測定器やCGMの値は診断に用いない[1]
随時血糖値 200mg/dL以上 食事のタイミングを問わない測定値[1]
HbA1c(NGSP値) 6.5%以上 HbA1cのみの反復検査による診断は不可[1]

出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」1章 糖尿病診断の指針[1]

日本糖尿病学会のガイドラインでは、「別の日に行った検査で糖尿病型が2回以上認められれば、糖尿病と診断する。ただし、HbA1cのみの反復検査による診断は不可とする。2回のうち1回は必ず、血糖値のいずれかで糖尿病型を確認すること」とされています[1]。一方で、「血糖値とHbA1cが同一採血でそれぞれ糖尿病型を示すことが確認されれば、1回の検査だけでも糖尿病と診断する」とも定められており(日本糖尿病学会)[1]、初診の血液検査だけで診断が確定するケースもあります。血糖値かHbA1cのどちらか一方だけが糖尿病型だった場合は「糖尿病疑い」となり、3〜6ヶ月以内に血糖値とHbA1cの再検査を行うことになっています(日本糖尿病学会)[1]。また、血糖値のみが糖尿病型で、糖尿病の典型的症状(口渇・多飲・多尿・体重減少)や確実な糖尿病網膜症がある場合には、1回の検査だけで糖尿病と診断されることもあります(日本糖尿病学会)[1]。過去に糖尿病型の基準を満たした記録があり、現在の数値が基準以下であっても「糖尿病があった」と判定される場合は、糖尿病として対応するとされています(日本糖尿病学会)[1]。診断のプロセスは、症状の有無や検査のタイミングによっていくつかのパターンに分かれるため、「なぜ2回検査するのか」「なぜ今回は1回で診断がついたのか」など疑問があれば、遠慮せず主治医に確認してみてください。

治療が始まったあとに目指す「血糖コントロール目標」は、次の3段階に整理されています。

目標の種類 HbA1c 対応する血糖値の目安 どんな人が対象か
血糖正常化を目指す際の目標 6.0%未満 空腹時血糖値110mg/dL未満・食後2時間血糖値140mg/dL未満[2] 食事療法・運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合[2]
合併症予防のための目標 7.0%未満 空腹時血糖値130mg/dL未満・食後2時間血糖値180mg/dL未満[2] 多くの患者にとっての基本的な目標[2]
治療強化が困難な際の目標 8.0%未満 ― 低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合[2]

出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」2章 糖尿病治療の目標と指針(図3 血糖コントロール目標)[2]

ガイドラインでは、治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する方針が示されており[2]、「7.0%未満」を一律のゴールとして押しつけるものではありません。例えば、罹病期間が短く心血管系に異常のない若い方では6.0%未満がめやすとなる一方、UKPDSという臨床研究では「HbA1c6.0%程度までは細小血管症・大血管症ともに発症リスクが低下していた」と報告されています[2]。逆に、低血糖のリスクが高い方や高齢の方では、無理に7.0%未満を目指すとかえって低血糖の危険が増すため、8.0%未満を「最低限達成が望ましい目標値」として設定することがあります[2]。65歳以上の高齢者については、認知機能や身体機能、併存疾患の状態などを踏まえたさらに個別性の高い目標設定がなされます。ガイドラインは、高齢者糖尿病でも合併症予防のための基本的な目標値はHbA1c7%未満としながら、多剤併用による副作用や重篤な併存疾患があり社会的サポートが乏しい場合には、8.5%未満まで目標を緩和することも許容されるとしています[12]。また、複数の研究で、高齢者ではHbA1cが低すぎても高すぎても死亡や合併症のリスクが上がる「Jカーブ現象」が報告されており[12]、高齢の方の血糖コントロールは「下げれば下げるほど良い」わけではないことがうかがえます。高齢のご家族の治療方針で迷ったときは、この点も踏まえて主治医に相談するとよいでしょう。

すぐに受診が必要なサイン(糖尿病ケトアシドーシスなど急性合併症)

  • 強い喉の渇き・多飲・多尿に続いて、全身のだるさや体重減少がある(日本糖尿病学会)[9]
  • 呼吸が荒く深くなる、吐き気・嘔吐、強い腹痛がある(日本糖尿病学会)[9]
  • 意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い(日本糖尿病学会)[9]

日本糖尿病学会は、こうした症状は「緊急性が高く速やかに対応しなければ命に関わる危険がある」急性合併症のサインであり得るとしています[9]。これらが重なって見られる場合は、様子を見ずにすぐに医療機関(救急外来)を受診してください。自分で運転しての受診は避け、必要に応じて救急要請を検討しましょう。

食事療法の基本——「今日から」始められること

食事療法は、糖尿病治療の中でも「今日から」始められる、最も基本的な取り組みです。糖尿病情報センターは、食事療法について「糖尿病だからといって食べてはいけないものはない」としたうえで、量とバランスを整えることの重要性を伝えています[7]。極端な糖質制限や、特定の食品を完全に断つといった急激な変化ではなく、無理なく続けられる範囲で食習慣を見直すことが基本方針です。

日本糖尿病学会のガイドライン2024では、過体重・肥満を伴う2型糖尿病の血糖コントロールのために、エネルギー摂取量(総カロリー)の制限が推奨されています[5]。具体的にどの程度のエネルギー量が適切かは、年齢・性別・身体活動量・肥満度・血糖コントロールの状態などによって一人ひとり異なるため、実際の摂取エネルギーの目安は、必ず主治医または管理栄養士と相談のうえ決めてください。自己流で極端にカロリーを減らすことは、栄養不足や低血糖、リバウンドのリスクにつながるおそれがあります。

実践的な工夫としては、次のような点から始めるとよいでしょう。

  • 1日3食を規則正しく、腹八分目を意識してとる
  • 野菜やきのこ、海藻など食物繊維を多く含む食品を先に食べる
  • よく噛んでゆっくり食べる
  • 間食や飲み物(清涼飲料水など)の糖分量を見直す
  • 外食・中食が多い方は、揚げ物や丼ものに偏らないメニュー選びを意識する

糖尿病情報センターは、炭水化物の量を把握しながら食事を調整する「カーボカウント」という考え方も紹介しています[7]。これはインスリン治療を行う方などで特に重要になる方法ですが、糖質量を意識すること自体は、食事療法全般の理解に役立ちます。詳しいやり方は自己判断で始めず、栄養指導を受けながら取り入れることが勧められます。

塩分についても具体的な目安が示されています。糖尿病情報センターは、糖尿病のある方は高血圧の予防のために減塩が大切だとしたうえで、「男性1日7.5g未満、女性1日6.5g未満」を目安として挙げています[13]。すでに高血圧がある場合は、さらに「1日6g未満」への減塩が勧められています(糖尿病情報センター)[13]。実践のコツとしては、昆布や削り節などの「うま味」を活用する、しょうゆは「かける」のではなく「つける」、汁物の量を控える、酢やレモンなど酸味・香辛料で風味をつける、といった工夫が紹介されています(糖尿病情報センター)[13]。一度にすべてを変えようとせず、できることから一つずつ試してみるとよいでしょう。

お酒については、「一般的に許される量は1日アルコールとして25g程度まで(日本酒1合、ビール中瓶1本500ml程度)」とされ、休肝日をつくることが勧められています(糖尿病情報センター)[13]。ただし、糖尿病情報センターは「飲酒に合わせておつまみを食べると血糖値が上がる人がいる一方で、飲酒後には、肝臓に負担がかかるので逆に低血糖になることもある」とも注意を促しています[13]。適正な飲酒量は薬の種類や合併症の有無によっても変わるため、必ず主治医と相談してください。

運動療法の基本——有酸素運動とレジスタンス運動の組み合わせ

運動療法は、食事療法と並ぶもう一つの土台です。糖尿病情報センターは「運動療法は食事療法を補助するものであり、食事療法・運動療法を併用することで、より高い治療効果が得られる」と説明しています[8]。運動には、血糖値を下げる直接的な効果に加えて、インスリンの効きをよくする、体重や内臓脂肪を減らす、心肺機能を高めるといった複数のメリットがあります(日本糖尿病学会)[4]。

日本糖尿病学会のガイドライン2024は、2型糖尿病の血糖コントロールに「有酸素運動、レジスタンス運動が推奨される」としたうえで、具体的な目安を次のように示しています[4]。

運動の種類 頻度・時間の目安 ポイント
有酸素運動 週に150分以上(3日以上に分け、運動しない日が2日を超えて連続しないように)[4] ウォーキングなど中等度〜強度の運動[4]
レジスタンス運動(筋力トレーニング) 週に2〜3日、連続しない日程で[4] 主要な筋肉群を含む5種類以上の運動を最低1セット、徐々に強度やセット数を増やす[4]

出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」4章 運動療法[4]

「週150分」と聞くと大変に感じるかもしれませんが、ガイドラインは「最新のメタ解析では、今まで推奨されてきた150分/週よりも少ない30分/週から100分/週の運動でも、時間依存的に血糖改善効果が示されている」とも紹介しています[4]。つまり、いきなり週150分を目指す必要はなく、できる範囲から始めて少しずつ増やしていくことが現実的です。また、高齢の糖尿病患者に対しては、レジスタンス運動にバランス運動を組み合わせることで転倒リスクをより低下させる可能性があるとされています(日本糖尿病学会)[4]。

ただし、運動療法にも注意点があります。運動療法中は低血糖に注意する必要があり、特にレジスタンス運動は「運動誘発性」の血糖変動が起こることがあるとされています(日本糖尿病学会)[4]。また、網膜症や腎症、心血管疾患などの合併症の状態によっては、運動の種類や強度に制限が必要な場合もあります。新しく運動を始める前には、必ず主治医に相談し、自分の体の状態に合った運動の種類・強さ・時間を確認してください。

具体的にどんな運動から始めればよいか迷う場合は、次のような、生活の中に取り入れやすいものから検討するとよいでしょう。ウォーキング(普段より少し速歩きを意識する)、自転車、水泳や水中歩行(膝や腰に負担をかけにくい)、ラジオ体操、自宅でできるスクワットやかかと上げ運動などが代表例です。「まとまった時間が取れない」という方は、通勤時に一駅分歩く、エレベーターではなく階段を使う、テレビを見ながらかかと上げ運動をするなど、日常生活の動作の中に運動を組み込む工夫も有効です。大切なのは、種目の立派さよりも「無理なく続けられるかどうか」です。

薬物療法はいつから?——開始の考え方と経過観察のペース

「いつになったら薬が必要になるのか」は、診断されたばかりの方が最も気にする点の一つでしょう。日本糖尿病学会のガイドライン2024は、血糖降下薬の適応について「個別に設定された血糖コントロール目標に到達しない場合に血糖降下薬の適応となる」としたうえで、「薬物療法が適応となり得る」時期は病態や治療歴によって異なるとしています[3]。前の章で紹介したとおり、インスリン非依存状態の多くのケースでは、食事療法・運動療法を2〜3ヶ月行ったうえでの判断となります(日本糖尿病学会)[2]。

薬が必要と判断された場合、ガイドラインは「薬剤選択を行う」際の考え方として、患者一人ひとりの病態(肥満の有無、インスリン分泌能、合併症の状態など)に応じて薬の種類を選ぶ方針を示しています[3]。また、投薬を始める際は「患者への説明と同意のもと、単剤をなるべく少量から開始する」ことが基本とされています(日本糖尿病学会)[3]。薬の種類や量は、その後の血液検査の結果を見ながら調整されていきます。

薬剤選択の際に重視される指標の一つが「肥満の有無」です。ガイドラインは、肥満を伴う場合の候補薬としてビグアナイド薬(メトホルミンなど)・SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・DPP-4阻害薬などを挙げる一方、非肥満の2型糖尿病では「インスリン分泌不全が病態の主体であるため、インスリン分泌促進系薬剤を中心に薬剤選択を行う」としています(日本糖尿病学会)[3]。ただし、日本人を含むアジア人は欧米人に比べて低いBMIでも内臓脂肪の蓄積が多い傾向があり、BMI上は非肥満でもインスリン抵抗性を認める例があるため、ウエスト周囲長など他の指標もあわせて総合的に判断されるとされています(日本糖尿病学会)[3]。

安全性の面では、低血糖リスクの高い薬剤への注意も強調されています。ガイドラインが引用する調査によると、重症低血糖で搬送された2型糖尿病患者の約3割(インスリンを使用していない患者に限ると約85%)がSU薬(スルホニル尿素薬)の服用者であったと報告されており[3]、特に高齢者や腎機能が低下している方では、重症低血糖の発現頻度が高いとされています[3]。どの薬が処方されているか、低血糖の症状(冷や汗・動悸・強い空腹感・手の震えなど)にはどんなものがあるかを、あらかじめ主治医や薬剤師に確認しておくと安心です。

薬物療法を開始・変更したあとの経過観察のペースについて、ガイドラインでは、治療変更後は約2〜3ヶ月かけて経過を観察し、改善がなければ介入を強化する方針が示されています[2]。つまり、薬を始めたからといってすぐに効果が判定されるわけではなく、数ヶ月単位で血糖値やHbA1cの変化を見ながら、必要に応じて薬の種類・量を見直していく、というのが基本的な流れです。この間、自己判断で薬の量を増減したり、服用を中止したりすることは避け、疑問や不安があれば次回受診まで待たずに医療機関に相談してください。

なお、インスリン依存状態や高血糖性の昏睡、妊娠中の糖尿病・妊娠糖尿病、全身管理が必要な外科手術時、重症感染症、静脈栄養時などは、インスリン療法の絶対的適応にあたり、食事療法・運動療法の経過を待たずに直ちにインスリン療法が開始されます(日本糖尿病学会)[2]。自分がどちらのケースにあたるかは、初診時の血液検査や全身状態から医師が判断します。

血糖コントロール目標への個別化アプローチ——年齢・罹病期間・低血糖リスクで変わる目標

「HbA1c7.0%未満」という数字だけが独り歩きすると、「みんな同じ目標を目指すべきもの」という誤解につながりがちです。しかし日本糖尿病学会のガイドライン2024は、血糖コントロール目標の個別化について、アメリカ糖尿病学会(ADA)が提唱する「Patient-Centered Approach(患者中心のアプローチ)」の考え方にも一致するとしています[2]。この考え方は、低血糖リスク・罹病期間・予想される余命・重大な併存疾患・すでに診断された血管症・患者の選好・社会的な支援体制といった要素を踏まえ、目標をより厳格にするか、より寛容にするかを個別に判断するというものです(日本糖尿病学会)[2]。

患者の特徴 より厳格な目標になりやすい より寛容な目標になりやすい
罹病期間 はじめて診断された[2] 長期にわたる[2]
低血糖などの副作用リスク 低い[2] 高い[2]
重大な併存疾患・血管症 なし〜少ない/軽度[2] 重篤[2]
社会的な支援体制 容易に利用可能[2] 利用が難しい[2]

出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」2章(American Diabetes Association Professional Practice Committee: Diabetes Care 47 (Suppl 1): S111-S125, 2024を引用)[2]

ここで押さえておきたいのは、「診断されたばかりで、他に大きな持病がなく、低血糖のリスクも低い方」は、一般に、より厳格な目標(6.0〜7.0%未満)を目指しやすい立場にあるということです(日本糖尿病学会)[2]。だからこそ、診断直後のこの時期に食事療法・運動療法へしっかり取り組むことには大きな意味があります。逆に、罹病期間が長い、重い合併症がある、低血糖を起こしやすいといった方では、無理に厳しい数値を追い求めるより、安全に続けられる目標を主治医と一緒に見極めることが優先されます。数字だけを見て一喜一憂するのではなく、「今の自分にとって適切な目標は何か」を主治医と確認する視点が大切です。

「診断直後にしっかり取り組む意味」を裏づける考え方として、ガイドラインは「血糖コントロールの目標を治療開始後早期に達成し、その状態を維持することができれば、長期予後の改善が期待できる」としています[2]。DCCT/EDICやUKPDSといった大規模な臨床研究では、治療の早い段階で良好な血糖コントロールを達成できると、その後の長期間にわたって細小血管・大血管合併症の発症予防や進行抑制の効果が続くことが示されており、この現象は「metabolic memory(代謝記憶)」または「legacy effect(遺産効果)」と呼ばれています(日本糖尿病学会)[2]。つまり、診断されたばかりの今の時期に良好な血糖コントロールを達成しておくことが、何年も先の合併症リスクに影響しうる、ということです。

一方で、ガイドラインは「罹病期間の長い、心血管疾患の既往やリスク因子を有する糖尿病患者において、血糖値の急激な是正あるいは厳格過ぎる血糖コントロールは、心血管イベントを減少させなかった」とも警告しています[2]。ACCORDという臨床研究では、血糖値を急激に・厳しく下げようとした強化療法群のほうが、標準療法群より重篤な低血糖が増え、かえって全死亡・心血管死が有意に多かったと報告されています[2]。つまり「厳しければ厳しいほど良い」わけではなく、罹病期間や合併症の状態に応じて、急ぎすぎない・下げすぎない配慮が必要な場合もあるということです。この「早期にしっかり・その後は個別に無理なく」というメリハリこそが、日本糖尿病学会の血糖コントロール目標の考え方の核心といえます。

受診の目安・タイミング——何科に行く?どのくらいの頻度で通う?

初めて糖尿病、または糖尿病疑いを指摘された場合、まず内科(一般内科)を受診して構いません。血液検査の結果によっては、糖尿病内科・内分泌代謝内科のある医療機関を紹介されることもあります。かかりつけ医がいる場合は、まずそちらに相談する方法もあります。

受診のタイミングについて、日本糖尿病学会のガイドライン2024は、血糖値・HbA1cのどちらか一方のみが糖尿病型だった「糖尿病疑い」の場合、3〜6ヶ月以内をめやすに血糖値およびHbA1cの再検査を行う必要があるとしています[1]。すでに糖尿病と診断された場合は、前述のとおり、治療を開始・変更してから「約2〜3ヶ月」で効果を確認するのが基本的なペースです(日本糖尿病学会)[2]。実際に何ヶ月ごと・何週間ごとに通院するかは、血糖コントロールの状態、使用している薬の種類(インスリン注射の有無など)、合併症の有無によって医療機関ごとに異なるため、次回の受診タイミングは主治医の指示に従ってください。

次のような場合は、通常の予約日を待たずに早めに、あるいは緊急で医療機関を受診することが勧められます。

  • 自己測定した血糖値が、普段と比べて極端に高い、または低い状態が続く
  • 低血糖の症状(冷や汗・動悸・強い空腹感・手の震え・意識が遠のく感じなど)を繰り返している
  • 発熱・下痢・嘔吐などで食事や水分がとれない「シックデイ」の状態が続いている
  • 強い喉の渇き・多尿に、意識障害や激しい嘔吐が重なる(前述の「すぐに受診が必要なサイン」に該当する場合は救急受診)(日本糖尿病学会)[9]

「症状がないから」「忙しいから」と受診の間隔が空いてしまうと、血糖コントロールの乱れに気づくのが遅れ、合併症のリスクが高まるおそれがあります。予約日を守ることも、糖尿病治療の重要な一部だと捉えておくとよいでしょう。転勤や引っ越しなどでかかりつけ医を変える場合は、これまでの検査結果や処方内容がわかる資料(お薬手帳・検査結果の控えなど)を新しい医療機関に持参すると、治療の連続性が保たれやすくなります。

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治療を続けていくための考え方——「一人で頑張らない」がポイント

糖尿病は、多くの場合、短期間で「治って終わり」になる病気ではなく、長く付き合っていく慢性疾患です。日本糖尿病学会のガイドライン2024は、「糖尿病自己管理教育と治療支援は糖尿病治療に有効であることから推奨される」と、最も強い推奨グレード(推奨グレードA)で位置づけています[11]。ここでいう「自己管理教育」とは、患者自身が病気について理解し、自分に合った目標を立て、日々の生活の中でそれを実践できるように、医療者が知識と技術を継続的に支援する取り組みのことです(日本糖尿病学会)[11]。

ガイドラインは、この患者自身が病気を管理する力を身につけていく過程を「エンパワーメント」と呼び、①疾患を理解する、②管理のための個人的な目標を設定する、③日々の生活の中でそれを実践する、という3つの段階が必要だとしています[11]。また、医療者・患者のどちらか一方が「最善の対応を先延ばしにしてしまう」状態を「クリニカルイナーシャ(臨床的な惰性)」と呼び、この期間に血糖コントロール不良による合併症が進行しうることを、医療者が避けるべき課題として明記しています(日本糖尿病学会)[11]。これは裏を返せば、患者の側にも当てはまる考え方です。「今日は面倒だから」「そのうち」と先延ばしにする期間が長くなるほど、血糖コントロールが乱れたままになるリスクがある、ということです。診断直後の最初の2〜3ヶ月は、こうした先延ばしを避け、食事療法・運動療法に early に取り組む、いわば「貯金」のような時期と考えることができます。

研究では、対面式で時間をかけて行う糖尿病自己管理教育が、通常のケアと比べてHbA1cを有意に改善することが、複数のメタ解析で報告されています[11]。一人で頑張ろうとせず、主治医・看護師・管理栄養士・薬剤師といった医療スタッフのサポートを積極的に活用することも、長く治療を続けていくための大切な戦略の一つです。糖尿病教室や患者会など、同じ病気と向き合う人たちとの情報交換の場を利用することも、モチベーションの維持に役立つことがあります。

家族の存在も治療継続の大きな支えになります。食事療法・運動療法は、本人だけでなく一緒に暮らす家族の協力があるとより続けやすくなります。食卓に出る料理の内容、外食や間食の誘い方、体調の変化への気づきなど、日々の生活の中で家族がさりげなくサポートできる場面は少なくありません。診断を受けたことを一人で抱え込まず、可能であれば家族にも状況を伝え、無理のない範囲で協力を求めることも、長期的に治療を続けていくうえで有効な方法の一つです。もちろん、誰にどこまで伝えるかはプライバシーに関わることでもあるため、本人の意思を尊重しながら判断することが大切です。職場についても同様で、業務内容や勤務時間によっては、上司や産業医に配慮を相談したほうが、無理なく治療と仕事を両立させやすくなる場合があります。

💰 高額療養費制度の自己負担限度額(医療費100万円の例)
自己負担限度額(70歳未満・区分別)— 適用時期に注意
適用時期年収の目安計算式100万円の場合
~2026年7月診療分
現行
年収約370万~770万円(区分ウ) 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 87,430円
2026年8月診療分から
見直し後(第1段階)
年収約370万~770万円(区分ウ) 85,800円+1%(PDF原文の表記) 約92,940円<br><small>(編集部試算)</small>
+ 年間上限 53万円(新設)

※「100万円の場合」の金額のうち、現行(~2026年7月)欄は出典PDFに記載の計算例そのものです。2026年8月欄について、出典PDFに印字されているのは「85,800+1%」という表記のみです。1%を乗じる基準額(現行の267,000円に相当する部分)と、100万円の場合の約92,940円は、PDFに印字されておらず、現行制度と同じ計算方法にもとづくJHO編集部試算です。正確な金額は加入されている健康保険組合等にご確認ください。
※ 制度は改定されることがあります。受診・手術の時期によって自己負担額が変わるため、最新の情報は 厚生労働省の高額療養費制度ページで必ずご確認ください。
出典:厚生労働省「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」(令和7年12月16日) (PDF) |JHO確認日:2026-07-16

🖨️ 受診時に医師に伝えるためのメモ(印刷してお使いください)

  • 診断された時期と、そのときの血糖値・HbA1cの数値
  • 現在の身長・体重・体重の変化(いつから、どのくらい)
  • 直近1〜2週間の食事内容や生活リズムの傾向
  • すでに始めている運動があれば、その種類・頻度・時間
  • 他に治療中の病気・服用中の薬やサプリメント
  • 低血糖の症状(冷や汗・手の震え・強い空腹感など)を経験したことがあるか
  • 自分のHbA1c目標値を医師に確認したいこと

限られた診察時間の中でも、これらをメモにまとめておくと状況が伝わりやすくなります。特に「いつから」「どのくらい」という具体的な期間や数値は、治療方針を判断するうえで医師が重視する情報です。

糖尿病の食事療法における1日あたりの具体的なエネルギー摂取量の算出方法(年齢・BMIごとの詳細な係数など)については、個別性が高く、今回参照した資料の範囲では一律の数値としてお示しできませんでした。実際の摂取エネルギー量は、必ず主治医または管理栄養士と相談のうえで決めてください。

まとめ——「まず生活習慣、届かなければ薬」を軸に、2〜3ヶ月ごとに見直す

糖尿病と診断された直後は、「これから一生薬を飲み続けるのか」「何をどう変えればいいのか」といった不安を感じる方が少なくありません。しかし、日本糖尿病学会のガイドライン2024が示す基本方針はシンプルです。多くの場合、まず食事療法・運動療法にしっかり取り組み、2〜3ヶ月かけてその効果を確認し、それでも目標に届かなければ薬物療法を追加する、という段階的な進め方です[2]。目標となるHbA1cの数値も、「7.0%未満」を基本としながら、年齢や罹病期間、低血糖のリスクによって6.0〜8.0%未満の間で一人ひとりに合わせて設定されます(日本糖尿病学会)[2]。

この記事で紹介した内容を、次の6つに整理しておきます。①診断直後は、まず食事療法・運動療法に2〜3ヶ月取り組むのが基本(代謝障害が高度な場合や1型糖尿病、妊娠中などは薬物療法・インスリン療法をすぐに始めることもある)、②自分のHbA1c目標値と、それが6.0・7.0・8.0%のどの段階にあたるのかを主治医に確認する、③有酸素運動は週150分、レジスタンス運動は週2〜3日を目安に、できる範囲から始める、④減塩(男性7.5g未満・女性6.5g未満)や適量の飲酒(アルコール25g程度まで)など、食事の具体的な数値目安も参考にする、⑤治療開始後早期に良好な血糖コントロールを達成することが、長期的な合併症予防(レガシー効果)につながる、⑥強い喉の渇き・多尿に意識障害などが重なったら様子を見ずすぐ受診する。この6点を意識するだけでも、診断直後の不安や迷いを減らすことができます。

治療は一人で抱え込むものではなく、主治医・看護師・管理栄養士・薬剤師、そして家族と情報を共有しながら、無理なく続けられる形を一緒に見つけていくことが、長期的に良好な血糖コントロールを保つための近道です。「今日から少しずつ」を合言葉に、できることから一つずつ取り組んでいきましょう。この記事で紹介した数値や進め方は、あくまで日本糖尿病学会のガイドライン2024にもとづく一般的な目安です。実際の治療方針は、検査結果や持病、生活状況によって一人ひとり異なります。気になる点があれば、次の受診時に遠慮なく主治医に質問してください。

よくある質問

糖尿病と診断されたら、すぐに薬を飲まないといけませんか?
多くの場合、そうとは限りません。日本糖尿病学会のガイドライン2024は、インスリン非依存状態(多くの2型糖尿病)では、十分な食事療法・運動療法を2〜3ヶ月行っても血糖コントロールの目標に届かない場合に、はじめて血糖降下薬による治療を開始するとしています[2]。ただし、代謝障害の程度が高度な場合は、最初から薬物療法を併用することもあります(日本糖尿病学会)[2]。自分がどちらにあたるかは、検査結果をもとに主治医が判断します。
HbA1cはどのくらいを目指せばいいですか?
合併症予防の観点からの基本的な目標は「7.0%未満」です(日本糖尿病学会)[2]。ただし、食事療法・運動療法だけで達成でき、低血糖の心配が少ない方では「6.0%未満」、低血糖などの理由で治療強化が難しい方では「8.0%未満」を目標とすることもあり、年齢・罹病期間・合併症の状態などにより個別に設定されます(日本糖尿病学会)[2]。自分の目標値は主治医に確認しましょう。
食事療法だけで治りますか?薬をやめられますか?
食事療法・運動療法によって血糖コントロールが大きく改善し、薬の量を減らせたり、医師の判断で休薬できたりするケースはあります。ただし、これは個人差が大きく、自己判断で服薬を中止することは危険です。今回参照した資料の範囲でも、休薬の可否についての一律の基準は示されていません。体調や検査結果の変化があれば、必ず主治医に相談してください。
運動はどのくらいすればいいですか?ジムに通わないとダメですか?
ジムに通う必要はありません。日本糖尿病学会は、有酸素運動を週150分以上、レジスタンス運動を週2〜3日行うことを目安として示していますが[4]、「30分/週から100分/週の運動でも時間依存的に血糖改善効果が示されている」とも紹介しています[4]。ウォーキングや自宅での軽い筋トレなど、できる範囲から始めて少しずつ増やしていく方法で構いません。
治療を始めてから、次はいつ検査を受けますか?
日本糖尿病学会のガイドラインでは、治療を変更したあと約2〜3ヶ月かけて経過を観察し、改善がなければ介入を強化する方針が示されています[2]。実際の通院間隔は、血糖コントロールの状態や使用している薬の種類によって医療機関ごとに異なるため、次回の受診タイミングは主治医の指示に従ってください。
妊娠中に糖尿病、または妊娠糖尿病と言われました。同じ進め方でいいですか?
いいえ、異なります。日本糖尿病学会は、糖尿病患者の妊娠時や妊娠糖尿病においては、インスリン療法により厳格な血糖コントロールを目指すべきとしています[2]。この記事は主に成人の2型糖尿病を想定した一般的な内容であり、妊娠中の方は必ず産婦人科・糖尿病専門医の指導のもとで治療方針を決めてください。
高齢の親が糖尿病と診断されました。同じ目標を目指すべきですか?
必ずしもそうとは限りません。血糖コントロール目標は、年齢・罹病期間・低血糖のリスク・サポート体制などを考慮して個別に設定するとされており(日本糖尿病学会)[2]、65歳以上の高齢者については、認知機能や身体機能なども踏まえたさらに個別性の高い目標設定がなされます。詳しくは主治医にご確認ください。
体調が悪くて食事がとれません(シックデイ)。薬はどうすればいいですか?
発熱・下痢・嘔吐などで食事がとれない「シックデイ」のときは、自己判断で薬の量を増減せず、あらかじめ主治医から指示されている対応方法(シックデイルール)に従ってください。シックデイの具体的な対処法については、当サイトの別記事「糖尿病患者のインフルエンザ対策|シックデイと血糖管理の注意点」でも解説しています。
健診で「糖尿病型」ではなく「境界型」と言われました。この記事の内容は関係ありますか?
境界型(糖尿病予備群)の方は、まだ糖尿病と診断された状態ではありません。血糖値・HbA1cの一方のみが一度糖尿病型で、糖尿病と診断できなかった場合は「糖尿病疑い」となり、3〜6ヶ月以内に血糖値・HbA1cの再検査を行うこととされています(日本糖尿病学会)[1]。この段階でも、食事療法・運動療法に早めに取り組むことは発症予防の観点から有効と考えられます。
食事療法・運動療法にしっかり取り組んでいますが、不安でなかなか続きません。どうすればいいですか?
一人で抱え込まないことが大切です。日本糖尿病学会は、対面式で時間をかけて行う糖尿病自己管理教育(DSME)が、通常のケアと比べてHbA1cを有意に改善すると報告しています[11]。主治医・看護師・管理栄養士など医療スタッフに率直に不安を伝え、無理のない目標設定からやり直すことも一つの方法です。「先延ばし」の期間が長くなるほど血糖コントロールが乱れやすくなるとされているため(日本糖尿病学会)[11]、早めに相談することが結果的に近道になります。
糖尿病になったら、もう普通の生活には戻れませんか?
そうとは限りません。日本糖尿病学会は、糖尿病治療の目標を「糖尿病がない人と変わらない生活の質(QOL)と寿命を実現すること」としています[2]。食事療法・運動療法・(必要に応じた)薬物療法を続けながら血糖コントロールを良好に保つことで、多くの方が診断前とほぼ変わらない生活を送ることができます。極端に悲観せず、まずはできることから一つずつ取り組んでいきましょう。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」1章 糖尿病診断の指針 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/01.pdf ↩
  2. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」2章 糖尿病治療の目標と指針 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/02.pdf ↩
  3. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」5章 血糖降下薬による治療(インスリンを除く) https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/05.pdf
  4. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」4章 運動療法 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/04_1.pdf
  5. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」3章 食事療法 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/03_1.pdf
  6. 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病の治療ってどんなものがあるの?」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/010/01.html
  7. 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病の食事のはなし(基本編)」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/020/02-1.html
  8. 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病の運動のはなし」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/040/03.html
  9. 日本糖尿病学会「糖尿病合併症について」 https://www.jds.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=3 ↩
  10. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」7章 糖尿病の自己管理教育と治療支援 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/07.pdf
  11. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」19章 高齢者の糖尿病(認知症を含む) https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/19.pdf
  12. 糖尿病情報センター(国立国際医療研究センター)「糖尿病の食事のはなし(実践編)」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/040/030/02-2.html

最終更新日:2026年7月18日(更新日・確認日)。内容の誤り・古い情報にお気づきの場合は、お問い合わせフォームよりご指摘ください。いただいたご連絡は編集部で確認のうえ、必要に応じて修正いたします。

関連する記事もあわせてご覧ください:糖尿病について詳しく知る(総合ガイド)、糖尿病患者のインフルエンザ対策|シックデイと血糖管理の注意点、糖尿病と予備群の診断基準【2025年最新】、糖尿病管理 完全ガイド、患者中心の糖尿病ケアプランニング、インスリンペンのすべて

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Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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