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糖尿病性ニューロパチーとは|症状と治療法をガイドラインで解説

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糖尿病性ニューロパチー(糖尿病性神経障害)は、糖尿病の三大合併症のひとつで、高血糖が続くことで手足の末梢神経や自律神経が傷つく病気です。日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライン2024」は、糖尿病性神経障害を「最も高頻度な糖尿病性合併症のひとつ」と位置づけ、糖尿病と診断されたら定期的に神経障害の有無を評価すべきだとしています[1]。同ガイドラインによると、もっとも代表的なタイプは、両足の指先から左右対称にしびれや感覚の低下が始まる「糖尿病性多発神経障害」で、進行すると足の潰瘍や感染に気づけなくなるリスクがあります[1]。同ガイドラインは、血糖コントロールの改善が進行抑制の基本であり、痛みが強い場合はプレガバリンやデュロキセチンなどの薬物療法が選択肢になるとしています[1]。

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要点まとめ

  • 糖尿病情報センターによると、代表的な症状は、両足の指先・足の裏から左右対称に広がる「しびれ」「ジンジンする痛み」「感覚の鈍さ」[3]
  • 日本糖尿病学会のガイドラインが示す簡易診断基準は、自覚症状・両側アキレス腱反射・両側の振動覚(音叉で10秒以下)の3項目のうち2項目以上で「神経障害あり」と判定[1]
  • 同ガイドラインによると、厳格な血糖コントロールは1型糖尿病で神経障害の発症を約60%抑制したとする大規模試験(DCCT)の報告がある[1]
  • 同ガイドラインが示す、痛みが強い場合の第一選択薬は、三環系抗うつ薬・プレガバリン・ミロガバリン・デュロキセチン[1]
  • 糖尿病情報センターは、足の感覚が鈍くなり、傷や潰瘍に気づきにくくなったら、自己判断で様子を見ず早めに医療機関を受診するよう呼びかけている[3]

編集方針: JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本糖尿病学会・国立健康危機管理研究機構(糖尿病情報センター)・米国糖尿病学会(ADA)の一次資料と照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別の診断・治療の代わりにはなりません。ガイドラインの数値・推奨は改定により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。内容に誤りや古い情報にお気づきの際はページ下部からご連絡ください。事実を確認のうえ訂正します。

糖尿病性ニューロパチーとは?神経が傷つく仕組み

糖尿病性ニューロパチー(diabetic neuropathy)は、日本語では「糖尿病性神経障害」と呼ばれ、糖尿病網膜症・糖尿病性腎症とならぶ糖尿病の三大合併症のひとつです。日本糖尿病学会の診療ガイドライン2024によると、糖尿病性神経障害は最も高頻度な糖尿病性合併症のひとつであり、糖尿病患者を診察する際には必ず神経障害の有無を評価することが望ましいとされています[1]。

神経が傷つく仕組みについて、糖尿病情報センターは「高血糖の状態が続くと、末梢神経の代謝に異常をきたして不必要な物質が溜まってしまったり、神経に栄養を与える血管が傷ついて血流が低下したりすることで、神経の働きが低下する」と説明しています[3]。つまり「高血糖による神経そのものの代謝異常」と「神経を養う細い血管の血流低下」という2つの要因が重なって、しびれや痛み、感覚の低下が起こると考えられています。

日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」10章および糖尿病情報センターの資料をもとにJHO編集部が作図

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これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。

どれくらいの人に起こる?有病率の考え方

「糖尿病性神経障害の評価・診断マニュアル」(日本糖尿病学会)は、多くの総説で糖尿病患者の約半数にDPN(糖尿病性多発神経障害)が認められると報告されていると紹介しています[2]。ただし、この数字は診断に使う評価方法によって大きく変わります[2]。同マニュアルによると、痛み・しびれ・異常感覚といった患者本人の自覚症状だけで診断した場合は5人に1人程度の有病率、これにアキレス腱反射・10gモノフィラメントによる触圧覚検査・音叉による振動覚など診察所見の異常を加えると3人に1人程度に上がり、神経伝導検査でのごく軽微な異常まで含めると有病率は9割以上に達するとされています[2]。

つまり「症状がないから神経障害はない」とは限らず、検査の網をどこまで細かくかけるかによって見え方が変わる病気だということです。同マニュアルは、DPNの危険因子として血糖管理不良・糖尿病罹病期間に加え、動脈硬化の危険因子である肥満・高血圧・喫煙・脂質異常症、さらに身長が高いことも報告されていると紹介しています(身長が高いほど末梢の神経線維が長くなり、障害の影響を受けやすい「length-dependent」な特徴を反映していると考えられています)[2]。また、1型糖尿病と2型糖尿病では危険因子が一部重ならない部分もあり、糖尿病の病型によってDPNの成り立ちそのものが異なる可能性も指摘されています[2]。

糖尿病性ニューロパチーの分類 — 多発神経障害と単神経障害

糖尿病診療ガイドライン2024は、糖尿病性神経障害を大きく「遠位性対称性の多発神経障害」と「局所性の単神経障害・神経根症」の2つに分類しています[1]。頻度が高いのは前者で、感覚・運動神経障害と自律神経障害の両方を含みます[1]。

分類 内容 主な症状
多発神経障害(感覚運動神経障害) 両足の遠位(先端)から左右対称に発症・進行する、もっとも頻度の高いタイプ しびれ感、錯感覚、冷感、自発痛、アロディニア(ふつうは痛みを感じない刺激で痛む)、感覚鈍麻[1]
多発神経障害(自律神経障害) 血圧・消化管・膀胱・発汗など、自分の意思でコントロールできない機能を担う神経の障害 瞳孔機能異常、発汗異常、起立性低血圧、胃不全麻痺、便通異常、胆嚢無力症、膀胱障害、勃起障害、無自覚性低血糖[1]
単神経障害(脳神経障害) 局所の1本の神経が障害されるタイプ。血糖コントロールとは無関係に起こることが多い 外眼筋麻痺(動眼・滑車・外転神経麻痺)、顔面神経麻痺など[1]
単神経障害(体幹・四肢の神経障害) 栄養血管の閉塞が原因になることが多く、動脈硬化との関連が強い 手根管症候群、尺骨神経麻痺、腓骨神経麻痺、体幹部の単神経麻痺など[1]
神経根症・多発神経根症 単神経障害とは異なる病態に基づく 糖尿病性筋萎縮(腰仙部根神経叢神経障害)。片側〜両側性の臀部・大腿部の筋萎縮・筋力低下と疼痛を伴う典型例がある[1]

ガイドラインは、感覚・運動神経障害では発症早期に下肢末端から自発痛・しびれ感・錯感覚・感覚鈍麻などが出現し、症状が上行するとともに上肢末端にも症状が現れると説明しています[1]。しびれを含む神経障害性の痛みを訴える場合は「有痛性糖尿病性神経障害」と診断し、痛みそのものへの管理も行うとされています[1]。一方で、糖尿病性神経障害の患者の半数程度は、痛みなどの自覚しやすい陽性症状がないまま病気が潜行性に進行するともガイドラインは指摘しており[1]、「痛くないから大丈夫」とは限らない点に注意が必要です。

症状 — 早期のサインから進行後の変化まで

糖尿病情報センターは、感覚・運動神経障害の症状について「両側の足先からのしびれや痛み、冷感などがおきる」とし、進行すると物への接触感覚が低下して「画びょうやガラスの破片を踏んでも気が付かない」ことがあると説明しています[3]。多くの患者が自覚する初期の感覚として、足の裏がジンジンして「砂利を踏んでいるような感覚」や、「足の裏に薄皮が1枚張っているような感覚」が生じることが知られています[3]。

自律神経障害の症状は多彩で、糖尿病情報センターは胃腸機能について「胃不全麻痺(胸焼け、吐き気、食欲低下、消化不良などがおきやすい)」を、循環機能については「無痛性心筋梗塞」や「起立性低血圧(急に体を起こした時に血圧が下がって、たちくらみがおきやすい)」を挙げています[3]。排尿・生殖機能では膀胱障害と勃起障害、発汗機能では「汗をかかなくなる」「乾燥肌になる」といった変化が起こりえます[3]。さらに見逃しやすいのが血糖の自覚の低下で、「無自覚性低血糖(ふるえや冷や汗などの低血糖症状が起きにくく、低血糖の症状を自覚しづらい)」が起こることがあると説明されています[3]。この無自覚性低血糖は、神経障害が進行した患者ほどリスクが高まるとガイドラインも警告しています[1]。

症状の広がり方には特徴があります[1]。ガイドラインは、自覚症状も身体所見も「下肢の遠位を中心として左右対称性に発症・進行することが大きな特徴」だとしています[1]。つまり片足だけ・上半身だけの急なしびれは、糖尿病性の多発神経障害としては典型的ではなく、脳梗塞や他の神経疾患など別の原因を疑って早期に受診すべきサインになります(下記「受診の目安」を参照)。

簡易診断基準 — 医療機関でどう判定されるか

糖尿病性神経障害には特異的な症状や検査所見が単独で存在するわけではなく、自覚症状と神経学的な身体所見から総合的に診断する必要があるとガイドラインは説明しています[1]。そのために日常診療でよく使われるのが「糖尿病性神経障害を考える会」による簡易診断基準です[1]。

区分 判定に使う項目
必須項目(2項目とも満たす) ①糖尿病が存在する ②糖尿病性多発神経障害以外の末梢神経障害を否定できる[1]
条件項目(3項目中2項目以上で「神経障害あり」) ①糖尿病性多発神経障害に基づくと思われる自覚症状(両側性の足趾先・足底の「しびれ」「疼痛」「異常感覚」) ②両側アキレス腱反射の低下あるいは消失 ③両側内踝の振動覚低下(C128音叉で10秒以下)[1]

ガイドラインによると、知覚機能の評価には、アキレス腱反射・音叉による振動覚に加えて、モノフィラメントによる圧触覚や爪楊枝・竹串による痛覚などが使われます[1]。同ガイドラインは、自律神経機能は心電図による心拍変動(CVR-R)で簡便に評価できるとしています[1]。同ガイドラインによると、確定診断には神経伝導検査が必須で、この検査で異常があれば糖尿病性神経障害と診断できます[1]。より早期の変化を調べる方法として、同ガイドラインは皮膚生検で表皮内の神経線維密度の低下を確認する方法も紹介しています[1]。

評価の頻度についてガイドラインは、症状の軽い人では半年〜1年間隔、下肢の痛覚低下や自律神経症状が明らかな進行例ではさらに頻度を上げて検査することで、発症・進行を適切に評価できるとしています[1]。米国糖尿病学会(ADA)の「Standards of Care in Diabetes」は、2型糖尿病では診断時から、1型糖尿病では診断から5年後を目安に神経障害の評価を開始し、少なくとも年1回は評価を続けることを推奨しています[4]。

ガイドラインの比較 — 日本と米国の評価頻度

日本のガイドラインが示す「症状の軽い人では半年〜1年間隔」という頻度と、ADAが示す「少なくとも年1回」という頻度は、いずれも年1回前後を下限の目安とする点で数値としては近い運用になっています[1][4]。また、日本のガイドラインが用いる「C128音叉による振動覚検査」と、ADAが足潰瘍リスクの評価に推奨する「10gモノフィラメント検査+128Hz音叉などもう一つの検査の組み合わせ」は、使う道具(128Hz音叉)が共通している点も注目できます[1][4]。なおADAは、10gモノフィラメント検査単独では、進行した神経障害や潰瘍リスクは検出できても、ごく早期の神経障害までは確実に見つけられないため、単独診断の根拠にすべきではないと注意を促しています[4]。

診断の際、医師は糖尿病以外の原因による末梢神経障害を除外するため、家族歴やアルコール摂取量、胃切除術の既往(ビタミンB12欠乏の可能性)などを丁寧に問診します[1]。甲状腺機能低下症による末梢神経障害もまれではないため、甲状腺ホルモンの評価を一度は行うともされています[1]。比較的急速に症状が進行した場合は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)など他の神経疾患の可能性も考慮されます[1]。

重症度の目安 — 神経伝導検査による分類

糖尿病性神経障害の重症度をどう判定するかは、研究によって基準がまちまちで長く課題とされてきました[2]。日本糖尿病学会のマニュアルによると、2013年に馬場正之氏が、標準的な筋電計を用いて腓腹神経と脛骨神経の2神経を検査すれば必要十分だとして、実際の患者の神経伝導機能異常にもとづく重症度分類(通称「馬場分類」)を報告しています[2]。同マニュアルは、この分類で重症度2度以上と判定された患者では心血管イベントや糖尿病性足病変の発生が増えることが分かっており、とくに重症度3度・4度では、これらの合併症の発生頻度が5年間で約40%に達するため、追加の配慮が必要になると説明しています[2]。神経伝導検査は専門の設備がある医療機関で行われる検査ですが、外来で使えるハンディタイプの簡易神経伝導検査機器(DPNCheck)を用いる方法も同マニュアルで紹介されており、腓腹神経の異常を短時間で調べることができるとされています[2]。どの検査を受けられるかは医療機関によって異なるため、詳しくは受診先の医師に確認してください[2]。

なお、しびれや痛みといった自覚症状を体系的に聞き取るための質問票として、ミシガン神経障害スクリーニング質問票(MNSI)の日本語訳が診療の現場で使われることがあります[2]。これは「足に灼けるような痛みがあるか」「感覚が鈍くなっているか」といった項目に自分で回答する形式で、あくまでスクリーニング(ふるい分け)のための道具であり、これだけで確定診断がつくものではありません[2]。気になる症状がある場合は、質問票の結果にかかわらず医療機関で相談することが大切です。

国際的にはどう診断されている?Toronto分類

日本糖尿病学会の診療ガイドライン2024は、国内の簡易診断基準と並んで、国際的な研究でよく参照される「Toronto Diabetic Neuropathy Expert Group」による4段階の診断基準も紹介しています[1]。これは主に臨床研究で使われる基準ですが、糖尿病性多発神経障害(DSPN)が段階的に進行する病気であることを理解するのに役立ちます[1]。

診断区分 判定に使う所見 主な用途
Possible DSPN(可能性あり) 両側の足趾・足・下肢を中心とした知覚低下、または神経障害性の陽性症状(ジンジンしたしびれ、チクチクした痛み、刺すような痛み、ヒリヒリする痛み、うずく痛み)のいずれか[1] 臨床(日常診療)
Probable DSPN(ほぼ確実な) 神経障害性自覚症状/遠位側の知覚機能低下/両側の明白なアキレス腱反射の低下か消失、のうち2つ以上[1] 臨床(日常診療)
Confirmed DSPN(確定した) 神経伝導検査の異常に加え、1つ以上の神経障害性自覚症状または他覚所見[1] 臨床および研究
Subclinical DSPN(潜在性の) 自覚症状・他覚所見がなくても、神経伝導検査や皮膚生検などで異常が確認できる状態[1] 主に研究

日本の「糖尿病性神経障害を考える会」の基準(本記事の「簡易診断基準」の章を参照)とToronto分類は、着眼点(自覚症状・アキレス腱反射・振動覚や知覚機能低下を組み合わせて判定する考え方)がおおむね共通しており、日本のガイドラインもToronto分類を妥当性の高い基準として位置づけています[1]。「症状がないのに検査で異常が見つかる」Subclinical DSPNの存在は、前章で紹介した「症状の有無だけでは有病率を正しく捉えられない」という点と重なります。

ほかの病気との見分け方 — 診断の前に除外すべきこと

足のしびれや痛みは、糖尿病性神経障害以外の原因でも起こります[1]。ガイドラインは、診断にあたって糖尿病以外の疾患による末梢神経障害を除外する必要があるとし、具体的には家族歴の聴取、アルコール摂取量、胃切除術の既往(ビタミンB12欠乏の可能性)などの問診を丁寧に行うべきだとしています[1]。甲状腺機能低下症による末梢神経障害もまれではなく、甲状腺ホルモンの評価も一度は行うとされ、比較的急速な症状の進行を認めた場合は、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)など他の神経疾患の可能性も考慮するとされています[1]。

糖尿病性多発神経障害を疑うかどうかの目安のひとつは、症状の広がり方です[1]。ガイドラインが繰り返し強調しているように、典型的な糖尿病性多発神経障害は「下肢の遠位を中心として左右対称性に発症・進行する」という特徴を持ちます[1]。これに当てはまらない症状——たとえば片側だけの急なしびれ、上肢だけの症状、急速に進行する筋力低下など——は、糖尿病以外の原因を積極的に疑う根拠になります。自己判断で「糖尿病だから神経障害だろう」と決めつけず、医療機関でほかの病気の可能性も含めて評価してもらうことが、正しい治療につながる第一歩です。

発症・進行のリスクファクター

ガイドラインは、糖尿病性神経障害の発症・進行に関与するリスクファクターとして、①血糖コントロールの不良、②糖尿病罹病期間、③高血圧、④脂質異常、⑤喫煙、⑥肥満を挙げています[1]。同ガイドラインによると、このうち最も重要なファクターは血糖コントロールの不良であり、神経障害の発症率は血糖コントロールが不良な患者ほど高く、有病率は糖尿病の罹病期間が長くなるほど増加するとされています[1]。

ガイドラインによると、これらは単独ではなく重なり合って影響します[1]。たとえば喫煙は血管の血流を悪化させ、神経に栄養を送る細い血管の障害を助長すると考えられており、高血圧や脂質異常も同様に血管への負担を通じて神経障害の発症・進行に関わると同ガイドラインは述べています[1]。裏を返せば、血糖・血圧・脂質・体重・禁煙という、糖尿病診療で通常から重視される管理項目そのものが、そのまま神経障害の予防策になるということです。

血糖コントロールは進行を防げるのか — 主な臨床試験

ガイドラインは「糖尿病性神経障害の発症・進行抑制に厳格な血糖コントロールが推奨される」との推奨(推奨グレードA、専門家の合意率100%)を示しています[1]。根拠となった代表的な臨床試験には、次のようなものがあります[1]。

研究 対象 結果
DCCT(米国、1型糖尿病1,441人) 強化療法群と従来療法群に無作為に割り付け、6.5年間観察。HbA1cは従来療法群で約9.0%、強化療法群で約7.0% 神経障害の発症率は従来療法群13%に対し強化療法群5.0%で、強化療法により発症が約60%抑制された[1]
Kumamoto study(日本、2型糖尿病110人) 強化療法群と従来療法群に無作為に割り付け HbA1cは強化療法群平均7.1%(JDS値)、従来療法群平均9.4%(JDS値)。強化療法群で神経伝導速度・振動覚閾値の悪化が有意に抑制された[1]
EDIC(DCCT終了後の追跡、13〜14年後) DCCT終了後は両群ともほぼ同水準の血糖コントロール(HbA1c約8%)に それでも旧強化療法群の方が神経症状・感覚低下・神経伝導検査の異常率が有意に低く、新たな神経障害の発症も有意に抑えられた(レガシー効果)[1]

一方でガイドラインは、Veterans Affairs Diabetes TrialやADDITION研究のデンマーク部分など、強化療法によって神経障害の発症に差が見られなかった研究もあると公平に紹介しています[1]。総括として、1型糖尿病では厳格な血糖コントロールが神経障害の「発症」を抑制することは明らかである一方、「進行」を抑制できるかどうかは明らかではないとしています。2型糖尿病については発症抑制に関して相反する報告が複数あり、進行抑制についても十分な検証はまだされていない、というのが現時点でのガイドラインの立場です[1]。この慎重な書きぶりは、Callaghanらによる系統的レビューでも同様の見解が示されていることをガイドライン自身が付記しています[1]。「血糖コントロールをすれば神経障害が治る」という単純な話ではなく、「発症を防げる可能性は高いが、進行を完全に止められるとは言い切れない」という、やや控えめな評価が現在の科学的な到達点です。

治療 — 血糖管理と薬物療法

治療の土台は、血糖コントロールの改善と、血圧・脂質の管理、禁煙・節酒といった生活習慣の改善です[3]。そのうえで、痛みなどのつらい症状に対しては薬物療法が検討されます[1]。ガイドラインは、有痛性糖尿病性神経障害が軽症の場合は血糖コントロールと生活習慣の改善で軽快することがあり、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は軽症例でのみ有効だとしています[1]。中等症以上では十分な効果を得ることは難しいともされています[1]。

薬剤(分類) ガイドラインでの位置づけ 主な注意点
エパルレスタット(アルドース還元酵素阻害薬) 神経障害の発症機構のひとつであるポリオール代謝の亢進を抑制。現在、日本で市販されている唯一のアルドース還元酵素阻害薬。196人の日本人患者を対象にしたRCTで有効性が確認された[1] 神経障害が中等度以下で罹病期間3年以内の症例に有効とされ、重症例や罹病期間の長い症例では無効だったとするサブ解析がある[1]
三環系抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミンなど) 中等症以上の有痛性神経障害に対する以前からの標準的選択肢のひとつ。鎮痛効果は抗うつ作用ではなく神経末端でのノルアドレナリン再取り込み抑制による[1] 眠気・注意力低下などの精神神経系症状、口渇・排尿排便障害・眼圧亢進などの抗コリン作用。緑内障や排尿排便困難のある患者には使用が好ましくない[1]
プレガバリン/ミロガバリン(カルシウムチャネルα2δリガンド) デュロキセチンとともに、中等症以上の有痛性神経障害に対して最も推奨される第一選択薬のひとつ[1] 腎排泄で代謝されるため腎機能障害のある患者は減量が必要。副作用としてめまいと原因不明の浮腫がある[1]
デュロキセチン(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬) 下行性抑制系のセロトニン・ノルアドレナリン神経終末に作用し、一次痛覚ニューロンへの抑制効果を高める[1] 傾眠と悪心の頻度が高いが、重症度は高くないとされる[1]
メキシレチン(抗不整脈薬) 主に日本の臨床試験の成績に基づき、有痛性糖尿病性神経障害への効能が承認されている[1] 不整脈の副作用に注意が必要で、心疾患のある患者では特に注意[1]
徐放性オキシコドン/トラマドール配合剤(オピオイド系) 上記の薬剤で疼痛コントロールが不十分な中等症以上の症例に検討される。徐放性オキシコドンは疼痛緩和とQOL改善が報告されている[1] 耽溺性などの副作用が大きな課題。日本ではオピオイド使用のコンセンサスは確立しておらず、慎重な運用が求められる[1]

なお、日本で比較的よく使われてきたメチルコバラミン(ビタミンB12製剤)については、無作為化比較試験(RCT)では有意な有効性は確認されていないと、ガイドラインは率直に記載しています[1]。また、カルバマゼピンやガバペンチンなどの抗痙攣薬も有痛性糖尿病性神経障害に有効との報告がありますが、日本ではこの用途への保険適用はないとされています[1]。薬の選択・変更・中止は、腎機能や併存疾患、他の薬との飲み合わせによって大きく変わるため、必ず処方した医師・薬剤師の指示のもとで行ってください[1]。自己判断で市販の痛み止めだけに頼り続けることは、糖尿病診療ガイドラインが繰り返し述べる「早期からの適切な治療」の妨げになりえます[1]。

自律神経障害への対応

自律神経障害は、瞳孔機能異常、起立性低血圧、心臓神経の障害(突然死、無痛性心筋梗塞)、発汗異常、消化管の運動障害(便秘、下痢)、膀胱の機能障害、勃起障害など多彩な病態を示し、日常生活を大きく損なうことがあります[1]。ガイドラインは、症状が軽い場合は血糖コントロールと生活習慣の改善によって機能障害が改善することが多いとしつつ、進行して日常生活に支障が出る場合は、症状に応じた薬物による対症療法が必要になるとしています[1]。

ガイドラインによると、起立性低血圧に対しては、血圧を下げやすい薬剤の中止、立位への急な体位変換を避ける指導、食事の少量頻回摂取などが行われます[1]。同ガイドラインは、弾性下着による下肢・下腹部の圧迫や、塩分摂取、フルドロコルチゾン酢酸エステルの投与が有効な場合もありますが、これらは浮腫や心不全を招きやすいため注意が必要だとしています[1]。同ガイドラインによると、胃不全麻痺には食事の少量頻回摂取、脂肪・繊維の摂取制限が基本で、薬物療法が必要な場合はメトクロプラミドやドンペリドンが使われますが、長期使用で錐体外路症状(体が勝手に動いてしまうなどの副作用)が出やすいことが注意点として挙げられています[1]。同ガイドラインは、勃起障害に対しては、まず原因薬剤の中止を検討したうえで、ホスホジエステラーゼ阻害薬(シルデナフィルなど)が使われることがありますが、狭心症治療などでニトログリセリンや亜硝酸薬を使用している場合は、重篤な血圧低下を招くおそれがあるため禁忌だとしています[1]。

ガイドラインが指摘するように、とくに見落としやすいのが無自覚性低血糖です[1]。同ガイドラインによると、罹病期間が長く神経障害が進行した患者では、震えや冷や汗といった通常の低血糖症状が出にくくなり、低血糖に気づかないまま重症化するリスクがあります[1]。同ガイドラインは、こうした患者には血糖自己測定を頻回に行いながらできる限り低血糖を避けること、重篤な低血糖を起こした直後はしばらく目標血糖値をやや高めに設定する方が良い場合があることを説明しています[1]。

単神経障害 — 自然に軽快することが多いタイプ

脳神経や四肢・体幹の神経が局所的に障害される単神経障害は、多くが栄養血管の閉塞を原因とし、動脈硬化症との関連が強く、糖尿病の罹病期間や血糖コントロールの状態とは必ずしも相関しません[1]。ガイドラインは、単神経障害は血糖コントロールとは無関係に自然に軽快することが多いとしています[1]。ただし多くの例で感覚・運動神経障害や自律神経障害を伴っていることから、単神経障害だけが起きた場合でも、血糖コントロールと生活習慣の改善に取り組む必要があるとされています[1]。

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合併症を防ぐための足のケア

糖尿病性神経障害が進むと、足の感覚が鈍くなり、「画びょうやガラスの破片を踏んでも気が付かない」ことがあると糖尿病情報センターは注意を促しています[3]。感覚が鈍い状態で小さな傷や靴擦れに気づけないまま放置すると、血流障害も重なって潰瘍や壊疽(えそ)に進行するリスクが高まります[3]。日々のセルフチェックとしては、毎日足を洗ったあとに指の間・足の裏・かかとまで目で見て傷や変色がないか確認すること、爪を切りすぎないこと、靴下や靴で締め付けすぎないものを選ぶことなどが基本になります。少しでも治りにくい傷、色の変化、腫れ、痛みのない潰瘍に気づいたら、自己判断で様子を見ず、早めに主治医または皮膚科・形成外科に相談することが勧められます。

米国糖尿病学会(ADA)も、10gモノフィラメント検査などによる足のリスク評価を年1回行い、感覚が低下している「保護感覚の消失」がある人ほど、潰瘍・切断のリスクが高い集団として重点的なフットケア教育の対象にすべきだとしています[4]。日本のガイドラインも米国の基準も、足の感覚低下を「見つけたら終わり」ではなく「見つけたらケアを強化する起点」として位置づけている点は共通しています[4]。

受診の目安 — どんな症状で、何科に行けばよいか

次のような症状があれば、自己判断で様子を見ず医療機関に相談してください。すでに糖尿病で通院している場合は、まず主治医(糖尿病内科・内分泌代謝内科)に相談するのが基本です。

  • 両足の指先や足の裏に、左右対称のしびれ・ジンジンする痛み・感覚の鈍さが続いている
  • 足の傷・靴擦れ・水ぶくれに気づかなかった、あるいは治りが遅い
  • 立ち上がったときに強いふらつき・立ちくらみを繰り返す(起立性低血圧の疑い)[3]
  • 胸痛を伴わないのに冷や汗や強い倦怠感が出る(無痛性心筋梗塞の可能性があるため、この場合は様子を見ず速やかに医療機関へ)[3]
  • 低血糖のときに震えや冷や汗などの自覚症状が出にくくなった(無自覚性低血糖の疑い)[3]
  • 顔の片側が動かしにくい、物が二重に見える(脳神経の単神経障害の可能性。ただし糖尿病以外の原因の除外が必要なため神経内科・脳神経内科の受診が優先されることもある)[1]

受診先は、しびれ・痛みが主な症状であれば糖尿病内科(内分泌代謝内科)、症状が急に強く出た場合や麻痺・言語障害を伴う場合は神経内科・脳神経内科、足の傷や潰瘍が心配な場合は皮膚科・形成外科・血管外科が窓口になることが多いです。日本の公的医療保険が適用される診療であれば、自己負担は原則3割(年齢や所得により1〜2割の場合もあります)です。神経伝導検査や薬物療法も保険診療の対象ですが、実際の自己負担額は検査内容・処方薬・医療機関によって異なるため、詳しい金額は受診先の窓口で確認してください。

日常生活でできること — 食事・運動・禁煙

薬物療法の前に取り組むべき土台は、糖尿病治療そのものの基本と重なります。ガイドラインが挙げる発症・進行のリスクファクターは、血糖コントロールの不良、糖尿病罹病期間、高血圧、脂質異常、喫煙、肥満でした[1]。裏返せば、次のような日々の取り組みが、そのまま神経障害の発症・進行を遠ざける行動になります。

  • 血糖管理を続ける:自己判断で食事療法や薬物療法を中断せず、主治医と決めた血糖コントロールの目標を維持する。DCCTやKumamoto studyのように、厳格な血糖管理が神経障害の発症抑制と関連したという報告があります[1]。
  • 血圧・脂質の管理:高血圧・脂質異常はいずれも神経障害の発症・進行に関わるリスクファクターとして挙げられており、糖尿病の診療で通常から重視される数値目標を守ることが役立ちます[1]。
  • 禁煙:喫煙は神経障害の危険因子のひとつに挙げられています[1]。禁煙が難しい場合は、自己流でやめようとせず、禁煙外来など医療機関のサポートを利用する方法もあります。
  • 体重管理:肥満も危険因子のひとつとされています[1]。極端な食事制限は低血糖やほかの合併症のリスクを高めることがあるため、運動量や食事内容の見直しは主治医・管理栄養士と相談しながら進めてください。
  • 足の毎日のセルフチェック:感覚が鈍くなっていても、目で見れば傷や変色に気づけます。入浴後などに指の間・足の裏・かかとまで確認する習慣をつけてください[3]。

薬を使わない対処法として、体位変換をゆっくり行う・食事を少量頻回にとるといった自律神経障害への工夫は、すでに本記事の「自律神経障害への対応」で紹介した通りです[1]。生活習慣の改善はどれも即効性があるものではありませんが、神経障害だけでなく網膜症・腎症など他の合併症の予防にもつながる、糖尿病診療全体の土台であることを覚えておいてください。

受診時に伝えるとよいこと — 医師に症状を正確に伝えるコツ

糖尿病性神経障害は「特異的な症状や所見が単独で存在するわけではなく、自覚症状と身体所見から総合的に診断する」病気だとガイドラインは説明しています[1]。つまり、患者本人が症状をどれだけ具体的に伝えられるかが、診断の助けになります。受診の際は、次のような点をメモしてから医療機関に行くと、医師が簡易診断基準(自覚症状・アキレス腱反射・振動覚)と照らし合わせやすくなります。

  • 症状が出ている場所(左右両方か片方だけか、指先だけか足全体か)
  • 症状の種類(しびれ、ジンジンする痛み、刺すような痛み、感覚が鈍い、感覚がない、など)
  • いつから、どのくらいの頻度で症状が出ているか
  • 症状が強くなる・弱くなるタイミング(夜間に悪化する、歩くと出る、など)
  • 足に傷・水ぶくれ・変色がないか
  • 立ちくらみ、便通の変化、発汗の変化など、自律神経に関わる症状の有無[3]
  • 現在飲んでいる薬(他院処方の薬やサプリメントも含めて)

これらの情報は、ガイドラインが診断の除外項目として挙げている飲酒量や胃切除術の既往などの問診ともあわせて確認されることになります[1]。「たいしたことないかもしれない」と自己判断で症状を小さく伝えるのではなく、気になる変化はそのまま伝えることが、糖尿病以外の原因を見逃さないことにもつながります。

結論

糖尿病性ニューロパチー(糖尿病性神経障害)は、糖尿病の三大合併症のひとつで、多くの場合、両足の指先から左右対称にしびれや感覚の低下が始まります[1]。診断は自覚症状・アキレス腱反射・振動覚を中心とした簡易基準で行われ、血糖コントロールの改善が進行抑制の土台になります[1]。痛みが強い場合は、三環系抗うつ薬・プレガバリン・ミロガバリン・デュロキセチンなどの薬物療法が選択肢になりますが、どの薬が合うかは腎機能や併存疾患によって異なるため、必ず医師と相談のうえで決めてください[1]。もっとも見落とされがちなのは「痛みのない神経障害」で、足の感覚が鈍くなって傷に気づけなくなること自体が、潰瘍や重い合併症につながる入り口になります[3]。毎日の足のセルフチェックと、定期的な神経障害の評価を、血糖・血圧・脂質の管理と同じくらい大切な習慣にしてください。

血糖コントロール以外の要因(遺伝的な体質差など)が糖尿病性神経障害の発症・進行にどの程度寄与するかについての定量的なデータは、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。また、痛みが強い場合の薬物療法(プレガバリン、デュロキセチンなど)について、どの薬がどの程度の期間で効果を発揮するかという具体的な日数の記載も、今回参照したガイドラインの本章には見当たりませんでした。薬の選び方・効果の出方には個人差が大きいため、実際の治療方針は必ず主治医と相談のうえで決めてください。

よくある質問

糖尿病性ニューロパチーは治りますか?
現時点のガイドラインでは、厳格な血糖コントロールによって1型糖尿病では神経障害の「発症」を抑制できることは明らかにされていますが、すでに進行した神経障害を完全に元通りに治せるかどうかは明確には示されていません[1]。2型糖尿病についても、発症抑制に関する報告は一致しておらず、進行抑制についての十分な検証はまだ行われていないと、ガイドライン自身が率直に述べています[1]。「治る・治らない」を単純に断定するのではなく、「早く見つけて血糖・血圧・脂質を管理するほど、進行を遅らせられる可能性が高い」というのが現時点の科学的な立場です。
症状が片足だけの場合も糖尿病性神経障害を疑うべきですか?
代表的な糖尿病性多発神経障害は「左右対称」に足の遠位(先端)から発症・進行するのが大きな特徴です[1]。片足だけの急なしびれや麻痺は、糖尿病による単神経障害(脳神経障害・体幹四肢の神経障害)である可能性のほか、脳梗塞など緊急性の高い別の病気が隠れている可能性もあります[1]。片側だけの症状、とくに急に強く出た場合は、様子を見ずに早めに医療機関(症状によっては神経内科・救急)を受診してください。
痛みがないしびれでも治療した方がいいですか?
はい。糖尿病性神経障害の患者の半数程度は、痛みなどの自覚しやすい症状がないまま病気が潜行性に進行するとガイドラインは指摘しています[1]。痛みがなくても、感覚の低下そのものが「けがや潰瘍に気づけない」というリスクにつながるため、痛みの有無にかかわらず血糖コントロールの改善と定期的な評価を続けることが重要です[3]。
プレガバリンやデュロキセチンはどのくらいで効果が出ますか?
薬剤ごとの効果発現までの具体的な日数は、ガイドラインの本章には明記されていません[1]。プレガバリン・ミロガバリンは脊髄後角の痛覚神経の受容体に作用してカルシウムの流入を抑え、デュロキセチンはセロトニン・ノルアドレナリンの再取り込みを阻害して痛覚の抑制効果を強めるしくみで作用します[1]。効果や副作用の出方には個人差があるため、自己判断で服薬量を増減せず、処方した医師の指示に従って経過を見てください。
足の感覚が鈍いだけで、痛みも傷もありません。放置してよいですか?
感覚の低下だけでも、「画びょうやガラスの破片を踏んでも気が付かない」状態につながる可能性があるため、自覚症状がなくても定期的な評価は必要です[3]。米国糖尿病学会も、感覚が低下している人ほど潰瘍・切断のリスクが高い集団として、年1回以上の評価とフットケア教育の対象に位置づけています[4]。毎日、目で見て足に傷や変色がないか確認する習慣をつけてください。
ビタミンB12(メチルコバラミン)は効果がありますか?
日本で比較的よく使われてきた薬剤ですが、ガイドラインは「無作為化比較試験(RCT)では有意な成績は得られていない」と明記しています[1]。効果を断定する根拠は現時点では十分ではないため、使用するかどうかは主治医とよく相談してください。
立ちくらみがひどいのも神経障害と関係がありますか?
関係している可能性があります。糖尿病性の自律神経障害では、急に体を起こした時に血圧が下がる「起立性低血圧」が起こることがあります[3]。対策として、立位への体位変換をゆっくり行う、食事を少量頻回にとる、弾性下着を使うなどの方法がありますが、塩分摂取や薬物療法は浮腫・心不全を招くこともあるため、自己判断で対応せず主治医に相談してください[1]。
神経障害があると、ほかの合併症のリスクも上がりますか?
ガイドラインは、糖尿病性神経障害が糖尿病網膜症・糖尿病性腎症のリスクファクターであることを示す複数の研究を紹介しています[1]。たとえば、耐糖能異常などの段階で神経障害を認めると網膜症が約4倍、アルブミン尿陽性が2倍の頻度に増加したという報告や、神経障害の重症度が網膜症・腎症の進行と有意に関連していた(オッズ比2.13)という報告があります[1]。細小血管症である神経障害・網膜症・腎症は互いに関連しあって進行すると考えられているため、神経障害の兆候に気づいたら、目や腎臓の検査も定期的に受けることが勧められます[1]。
糖尿病性神経障害はどのくらいの人がなりますか?
診断の仕方によって数字は変わります。日本糖尿病学会のマニュアルによれば、痛みやしびれなどの自覚症状だけで判断すると5人に1人程度、これにアキレス腱反射や振動覚検査などの所見を加えると3人に1人程度、神経伝導検査のごく軽微な異常まで含めると9割以上という報告もあります[2]。多くの総説では、糖尿病患者の約半数にDPNが認められるとまとめられています[2]。
神経伝導検査は痛いですか、どこで受けられますか?
神経伝導検査は皮膚の上から弱い電気刺激を与えて神経の伝わり方を調べる検査で、専門的な設備のある医療機関(神経内科・脳神経内科や糖尿病専門施設など)で行われます[2]。日本糖尿病学会のマニュアルでは、外来で使えるハンディタイプの簡易機器(DPNCheck)を使う方法も紹介されていますが、対応できるかどうかは医療機関によって異なります[2]。検査の痛みの程度や所要時間は個人差があるため、心配な場合は受診前に医療機関へ確認してください。

更新日:2026年7月18日。本記事の内容に誤りや古い情報にお気づきの際は、ページ下部の連絡先からお知らせください。事実を確認のうえ訂正します。数値・推奨は各ガイドラインの改定により変わることがあります。

参考文献

  1. 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第10章 糖尿病性神経障害 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/10.pdf
  2. 日本糖尿病学会「糖尿病性神経障害の評価・診断マニュアル(DPN)」 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/dpn/dpn-manual.pdf
  3. 糖尿病情報センター(国立健康危機管理研究機構)「神経障害」 https://dmic.jihs.go.jp/general/about-dm/060/060/01.html
  4. American Diabetes Association「12. Retinopathy, Neuropathy, and Foot Care: Standards of Care in Diabetes—2026」Diabetes Care 49(Suppl.1):S261(PMC12690177) https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12690177/
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本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。

Trinh Van Dieu

Trinh Van Dieu

ITエンジニア(17年)・Japanese Health 運営者

ベトナム在住のITエンジニア。17年の技術経験を活かし、日本の公的医療機関の情報をAI技術で整理・発信しています。

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