家庭血圧の測り方|朝晩の正しいタイミングと測定の注意点
この記事でわかること
目次
- 血圧とは何か——最高血圧・最低血圧の基礎知識
- 家庭血圧とは?診察室血圧よりも重視される仕組み
- 今日から始める家庭血圧の測り方——手順まとめ
- 家庭血圧の測り方——朝晩の測定条件と回数
- なぜ「1機会2回・長期間」が原則なのか——測定回数をめぐる根拠
- 家庭血圧の基準値135/85mmHgの意味——診察室血圧との違い
- 日本のガイドラインにおける診察室血圧と家庭血圧の基準比較
- やってしまいがちな測定ミス——注意したい測り方の落とし穴
- 何日測ればいいか?——「1回でも長く」が原則
- 測定を続けるコツと環境要因
- 血圧手帳の書き方・受診に持っていくもの
- 受診の目安——いつ医師に相談すればいいか
- まとめ——家庭血圧の測り方で押さえておきたいこと
- よくある質問
- 参考文献
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日本高血圧学会の資料によると、家庭血圧の測り方は、朝晩1日2回・決まった条件で・上腕式血圧計を使うのが基本です。朝は起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前、晩は就寝前に、1〜2分座って安静にしてから測定します[1]。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
同学会のパンフレットによると、家庭血圧の基準は135/85mmHg以上です[1]。診察室での血圧が正常でも家庭血圧だけが高い「仮面高血圧」は、持続性高血圧と同じかそれ以上に危険とされているため、家庭血圧を測らなければ見逃されてしまいます[1]。日本高血圧学会は、診察室血圧と家庭血圧の間で診断に差がある場合、家庭血圧による判定を優先するとしています[3]。
要点まとめ
- 日本高血圧学会の基準では、家庭血圧は135/85mmHg以上(診察室血圧の140/90mmHgより低い値)[1]
- 同学会の資料では、朝は「起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前」、晩は「就寝前」に測定[1]
- 同学会のパンフレットは、1機会につき原則2回測定してその平均を取り、週5日以上の記録を主治医に見せることをすすめている[1]
- 日本内科学会雑誌の解説によると、正常血圧者では2日、高血圧の人では5〜7日ほど測り続けると、その人本来の血圧値に値が収束していく[2]
- 月刊地域医学の解説によると、血圧が高いだけでなく、激しい頭痛・意識がもうろうとする・呂律が回らないなど神経症状を伴う場合はただちに受診が必要[5]
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、公的機関・学会・査読論文と照合して作成。最終確認は人の目。医師による個別診断の代わりにはなりません。数値・分類はガイドライン改定により変わることがあります(2026年7月時点)。
あなたの血圧タイプ早見表
| 診察室血圧 | 家庭血圧 | タイプ | 対応 |
|---|---|---|---|
| 正常(140/90未満) | 正常(135/85未満) | 正常血圧 | 今のところ問題なし[1] |
| 高い(140/90以上) | 正常(135/85未満) | 白衣高血圧 | 今は問題ないが定期的に検診・検査を[1] |
| 正常(140/90未満) | 高い(135/85以上) | 仮面高血圧 | 持続性高血圧と同等以上に危険。すぐに治療または治療の変更が必要な場合がある[1] |
| 高い(140/90以上) | 高い(135/85以上) | 持続性高血圧 | すぐに治療または治療の変更が必要[1] |
日本高血圧学会のパンフレットは、この4分類を使って「あなたは白衣高血圧や仮面高血圧ではありませんか?」と家庭血圧測定を呼びかけています[1]。
血圧とは何か——最高血圧・最低血圧の基礎知識
国立循環器病研究センター病院の患者向け資料によると、血圧とは、心臓から送り出された血液が動脈の内壁を押す力のことです[4]。同資料は、血圧は体のすべての血管にありますが、家庭血圧計で測る血圧は、普通は動脈、特に上腕動脈の圧力を指すと説明しています[4]。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張の程度で決まり、血管の弾力性、腎臓や神経系・内分泌系・血管内皮からの物質など多くの因子によって調整されており、食塩の摂取量も重要な因子のひとつだと、同センター病院の資料は説明しています[4]。
心臓は収縮と拡張を繰り返して血液を送り出しているため、動脈の中の血圧も心臓の動きに応じて上がったり下がったりします。国立循環器病研究センター病院の説明では、動脈の血圧が心臓の収縮によって最高に達したときの値が「最高血圧(収縮期血圧)」、心臓の拡張によって最低に達したときの値が「最低血圧(拡張期血圧)」です[4]。血圧を「上の血圧」「下の血圧」と呼ぶのは、この最高血圧・最低血圧を指しています。同じく国立循環器病研究センター病院の資料は、くり返し測っても血圧が正常より高い場合を「高血圧症」と呼び、診察室でのくり返しの測定で最高血圧が140mmHg以上、あるいは最低血圧が90mmHg以上であれば高血圧と診断されるとしています[4]。同センター病院の資料によると、高血圧症の約90%は原因のはっきりしない「本態性高血圧症」で、遺伝的な因子や生活習慣などの環境因子が関わっているとされています[4]。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
家庭血圧とは?診察室血圧よりも重視される仕組み
国立循環器病研究センター病院の資料は、血圧は運動・安静・入浴・排便・食事・睡眠・体調・精神的な緊張など、さまざまな条件で大きく変動すると説明しています[4]。同資料は、血圧は通常、朝の目覚めとともに上昇して日中は高く、夜間・睡眠中は低くなり、また冬は夏より高くなるとも説明しています[4]。つまり「1回だけ測った値」は、その瞬間の条件をたまたま映しただけの数字であり、それだけで高血圧かどうかを判断することはできません。同センター病院の資料も、たまたま測った血圧が高いときには血圧が高いといえても「高血圧症」とは言い切れず、くり返し測っても血圧が正常より高い場合をいうと説明しています[4]。
病院の診察室で測る血圧(診察室血圧)は、緊張や白衣を見ることによる一時的な上昇(白衣高血圧)の影響を受けやすく、逆に自宅ではリラックスして血圧が正常に戻る人もいれば、反対に自宅でだけ血圧が上がる人もいます。日本高血圧学会のパンフレットは、この2つの状態を見分けるために家庭血圧測定をすすめています[1]。日本内科学会雑誌に掲載された今井潤らの解説によると、全国規模8,506人を対象にした調査では、高血圧の有病者3,156人のうち77%(2,430人)が家庭血圧計を保有しており、非高血圧の受療者でも38.5%(2,060人)が保有していたと報告されています[2]。同解説はまた、全国1,928名の医師を対象にした調査で、日常診療で家庭血圧測定を患者にすすめると回答した医師が90%にのぼり、家庭血圧と診察室血圧のどちらを重視するかという問いには49%の医師が家庭血圧、42%の医師が両者同等と回答したと紹介しています[2]。日本内科学会雑誌の同解説によれば、家庭血圧を高血圧診療の基本情報と捉えている医師は91%に達するということです[2]。
日本高血圧学会が定める高血圧治療ガイドライン2014(JSH2014)では、家庭血圧は診察室血圧よりも信頼性・再現性が高く、脳心血管疾患ならびに標的臓器障害との関連が強いことが数多く報告されているとし、診察室血圧と家庭血圧の間で診断の差がある場合には家庭血圧による判定を優先することが明記されました[3]。日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019の作成過程をまとめた資料でも、この考え方は引き継がれ、家庭血圧を指標とした降圧治療のほうが望ましいかどうかが臨床研究の対象として検討されています[3]。
上の図は、朝と晩それぞれで守るべき測定条件をまとめたものです。日本高血圧学会の資料でも、朝晩とも測定の直前に1〜2分は椅子に座って安静にしてから測ることが求められています[1]。国立循環器病研究センター病院の資料は、測る前には5〜10分程度は安静にし、条件を一定にした状態で測ることが望ましいとも案内しています[4]。
今日から始める家庭血圧の測り方——手順まとめ
ここまでの情報を、実際に測るときの手順として並べ直すと、次のようになります。いずれも日本高血圧学会のパンフレットと国立循環器病研究センター病院の患者向け資料に基づく内容です[1][4]。
- 上腕式の血圧計を用意する。日本高血圧学会などの2019年一般向け解説冊子では、血圧計は上腕にカフを巻くタイプを用いることがすすめられている[6]。
- 同学会のパンフレットでは、朝は起床後1時間以内・トイレを済ませたあと・朝食前・薬を飲む前に、晩は就寝直前に測ると決めることがすすめられている[1]。
- 同パンフレットでは、椅子に座り、1〜2分は安静にしてから測定を始めることが条件とされている[1]。
- 国立循環器病研究センター病院の資料では、血圧計を心臓・上腕と同じ高さに置き、きついシャツなどで腕を締め付けていないか確認することがすすめられている[4]。
- 同資料では、いつも同じ腕で測り、左右差が10mmHg以上ある場合は高い方の腕を毎回使うことが案内されている[4]。
- 日本高血圧学会のパンフレットでは、1機会につき原則2回測定し、その平均を血圧手帳に記録する。日本内科学会雑誌の解説によれば、1回しか測れなかった日も、その値をそのまま記録することが基本とされている[1][2]。
- 同学会のパンフレットでは、これを週5日以上、できるだけ長期間続けることがすすめられている[1]。
- 国立循環器病研究センター病院の資料では、記録がたまったら受診時に持参し、医師と一緒に振り返ることが案内されている[4]。
家庭血圧の測り方——朝晩の測定条件と回数
日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」パンフレットでは、家庭血圧の正しい測定条件として、上腕式の血圧計を選ぶこと、朝と晩の1日2回測ること、そして測定前にトイレを済ませて1〜2分椅子に座ってから測ることをすすめています[1]。国立循環器病研究センター病院の患者向け資料でも、いつも同じ腕・同じ姿勢・同じ時間帯に測るよう案内されています[4]。
| タイミング | 条件 | 備考 |
|---|---|---|
| 朝の測定 | 起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前 | 1〜2分椅子に座って安静にしてから測定[1] |
| 晩の測定 | 就寝直前(就床前) | 1〜2分の安静座位のみが条件とされ、2019年の一般向け解説冊子でも同じ内容が案内されている[2][6] |
| 1機会の回数 | 原則2回測定し、その平均を取る | 週に5日以上測定した結果を主治医に見せる[1] |
| 血圧計の高さ | 血圧計は腕と同じ高さに置く | きついシャツなどで腕の上部を締め付けない[4] |
出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」[1]/国立循環器病研究センター病院「高血圧」[4]
日本内科学会雑誌に掲載された今井潤らの解説によると、朝の測定条件(起床後1時間以内・排尿後・1〜2分の安静座位後・朝食前・降圧薬服用前)はすでに広く一般化し、よく守られている一方、晩の測定条件はガイドラインでは「就床前・1〜2分の安静座位」しか定められておらず、入浴・飲酒・食事・夜間の服薬との前後関係までは規定されていないと指摘されています[2]。同解説は、厳密な条件を課しすぎると測定そのものが続かなくなるおそれがあるとして、まずは「就床前に測ること」自体を優先する現実的な考え方を示しています[2]。同解説によれば、飲酒や入浴は血圧を下げる方向に働き、夕食前・服薬前の血圧は薬の効果が薄れる時間帯(トラフ)の値を映すことがあるため、可能であれば入浴後1時間以上たってから測る、飲酒の前に測る、あるいは入浴・飲酒からどれくらい時間が経ったかを記録用紙に書き添えることも、家庭血圧の情報としての価値を高めるとされています[2]。
血圧計そのものの選び方についても、ガイドラインの立場ははっきりしています。日本高血圧学会・日本高血圧協会・COMLが2019年に発行した一般向け解説冊子「高血圧治療ガイドライン2019」は、血圧計は上腕にカフを巻くタイプを用いること、手首に巻くタイプはどうしても値が不正確になりがちなので注意して使うことをすすめています[6]。これより古い2007年の日本内科学会雑誌の解説でも、当時の「家庭血圧測定条件設定の指針」およびJSH2004を根拠に、上腕カフ血圧計の使用が推奨され、手首血圧計は静水圧補正と手首の解剖学的な特性の問題から使用が勧められていないと説明されており、市販されている家庭血圧計の約30%は手首血圧計であることが知られていたと紹介されています[2]。同解説(2007年時点)は、装置の軽便性や静音性など手首血圧計の利点も多いとした上で、この点への対応が十分になされた装置が普及すれば将来は状況が変わる可能性があるとも述べていましたが、2019年の公式解説冊子でも上腕式が引き続きすすめられている点から、この考え方は現在まで変わっていないとみられます[6]。
なぜ「1機会2回・長期間」が原則なのか——測定回数をめぐる根拠
「1回測ればいいのか、複数回測って平均を取るべきか」は、家庭血圧の測定条件の中でも特に議論が分かれてきたポイントです。今井潤らの解説は、家庭血圧の評価に一機会何度測定させるべきかについて、次のような根拠を挙げて「一機会1回以上を長期に亘り行い、その全てを記載し、医療者はその判断に各機会1回目の測定の長期の平均値を用いる」という考え方を支持しています[2]。
| 根拠 | 内容 |
|---|---|
| 長期測定の優先 | 家庭血圧は長期間にわたり測定するものであり、一機会に複数回の測定を求めるより、一機会に1回でもよいから長期間測定を求めるべきである[2] |
| 負担と続けやすさ | 一機会に複数回の測定を常に求めることは被験者の負担を増やし、測定の続けやすさを下げてしまう[2] |
| 平均集束効果 | 正常血圧者では2日、高血圧患者では5〜7日ほどで、測定を重ねるうちに値がその人本来の血圧値に近づく現象が認められる[2] |
| 施設間で共通の値 | 朝晩それぞれの1回目の測定は、どの施設・どの個人でも共通の条件で得られる値であり、比較がしやすい[2] |
出典:今井潤ほか、日本内科学会雑誌96(1):86-93、2007年[2]
一方で、同解説は「2回目、3回目の測定値のほうが安定して低い値になるはずだ」という考え方についても触れ、Kawabeらの報告では家庭血圧測定者の30〜40%で、逆に1回目より2回目、2回目より3回目の値が上昇するという結果が示されていることを紹介しています[2]。同解説によれば、2回目・3回目の値が常に低く安定するとは言い切れず、現時点では1機会1回目の測定値の長期間の平均を診断の根拠とすることが最も実用的だと結論づけられています[2]。ただし、これは複数回測定すること自体を否定するものではなく、同解説は、実際の診療では朝の1回目の値が非常に高くて不安を感じた場合には、続けて複数回測り安心を得ることも大切だとし、重要なのは「測定したすべての値を記録すること」だと強調しています[2]。
家庭血圧の基準値135/85mmHgの意味——診察室血圧との違い
日本高血圧学会のパンフレットは、家庭血圧135/85mmHg以上が、脳卒中や心筋梗塞にかかる率を2〜3倍にも増やす危険な高血圧だとしています[1]。診察室血圧の基準である140/90mmHgより低いのは、自宅で測る血圧の方が実際の日常の血圧に近く、診察室で一時的に緊張して上がる分を差し引いた値になっているためです。
日本のガイドラインにおける診察室血圧と家庭血圧の基準比較
| 項目 | 診察室血圧 | 家庭血圧 |
|---|---|---|
| 高血圧と判定する基準 | 収縮期140mmHg以上または拡張期90mmHg以上[4] | 収縮期135mmHg以上または拡張期85mmHg以上[1][2] |
| 診断で差がある場合の優先順位 | 診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による判定が優先される(JSH2014)[3] | |
出典:国立循環器病研究センター病院「高血圧」[4]/日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」[1]/日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン2019 CQ1[3]
この差は、日本高血圧学会が長年にわたり、診察室では正常なのに家庭血圧だけが高い「仮面高血圧」が、症状のないまま脳心血管病のリスクを持続性高血圧と同程度にまで高めることを重視してきたことの表れです[1]。逆に、同学会のパンフレットによると、家庭血圧は正常なのに診察室でだけ血圧が上がる「白衣高血圧」は、今のところ緊急の治療は不要とされていますが、将来持続性高血圧に移行する危険性があるため、定期的な受診・検査が勧められています[1]。
家庭血圧の基準値には、国際的にも整理の歴史があります。ここから先は今井潤らが日本内科学会雑誌にまとめた総説(レビュー論文)の記述に沿った紹介であり、当編集部がJNC・WHOの一次資料そのものを直接確認したものではない点をお断りしておきます。同総説によると、1997年に米国合同委員会(JNC-VI)が家庭血圧の高血圧診断基準を135/85mmHg以上と規定したとされ、続いて1999年に世界保健機関・国際高血圧学会(WHO-ISH)は、随時血圧(診察室血圧)140/90mmHgに相当する家庭血圧は125/80mmHgであるとし、これ未満が正常血圧にあたるという考え方を示した、と紹介されています[2]。同総説の記述によると、これに続いて2003年に欧州高血圧学会が、そして日本高血圧学会も家庭血圧測定条件設定の指針を公表したとされています[2]。同総説は、家庭血圧測定が最も普及している日本の指針が、現状に即した指針であると考えられるとしつつも、測定条件の細部ではなお国内外で同じ結論が得られていない点があると述べています[2]。このように、135/85mmHgという基準ひとつをとっても、各国の学会がそれぞれの調査・研究を積み重ねて到達した数字であることが分かります。同総説によると、2005年には米国心臓協会(AHA)が、また同年に欧州高血圧学会が、それぞれ家庭・自己測定血圧に関するガイドラインを発表したとされ、これらは「血圧をいかに測るか——日米欧血圧測定ガイドライン集——」として日本語にまとめて出版されている、と同総説は紹介しています[2]。同総説は、その中でも家庭血圧測定が最も普及している日本の指針が、現状に即した内容になっていると評価しています[2]。つまり家庭血圧の測り方は、日本国内だけでなく米国・欧州の学会も足並みをそろえて整備してきた、国際的に共有された医療の基本動作だといえます(ただし米国・欧州側の一次資料の内容は、今井潤らの総説を経由した孫引きである点にご留意ください)。
すぐに受診が必要なサイン
- 月刊地域医学の解説によると、血圧が高いだけでなく、脳・心臓・腎臓・大血管など諸臓器の急性の障害が進行していると考えられる状態(高血圧緊急症)が疑われるとき[5]
- 月刊地域医学の同解説では、具体的には、高血圧性脳症や急性大動脈解離、高血圧性心不全、急性冠症候群などの疑いがある場合で、これらは全例が入院の対象となるとされています[5]
- 激しい頭痛、ろれつが回らない、手足に力が入らない、意識がもうろうとするなど神経症状を伴う場合は、単なる血圧の変動と自己判断せず、ただちに医療機関を受診してください
- 参考として、月刊地域医学に掲載された解説は「単に血圧が高値であるだけで高血圧緊急症とはいわない」とも述べており、数値の高さだけでなく症状の有無が重要な判断材料になると同誌の解説は述べています[5]
| 高血圧緊急症にあたるとされる状態 | 対応 |
|---|---|
| 高血圧性脳症 | すべて入院の対象。速やかな降圧がその後の経過に関わるため、それぞれの分野の専門医にすぐ紹介するべきとされる[5] |
| 悪性高血圧 | |
| 急性大動脈解離 | |
| 高血圧性心不全 | |
| 急性冠症候群 | |
| 褐色細胞性クリーゼ・子癇 |
出典:堀井学「こんな高血圧は紹介しよう」月刊地域医学28(1)、2014年[5]
同解説はあわせて、救急外来を受診する一過性の血圧上昇のほとんどは、精神的な要因やパニック発作が根底にあることが多いとも述べており、褐色細胞腫によるものを除けば、こうした一過性の血圧上昇に対して緊急に降圧薬を使うことはしないとされています[5]。血圧が高いという数字だけを見て自己判断で追加の薬を飲んだりせず、神経症状の有無を確認し、判断に迷うときは医療機関に相談することが基本です。
「家庭血圧が何mmHg以上なら救急要請すべきか」という具体的な数値の目安について、今回参照した日本語の一次資料(学会発行資料・学会誌掲載論文)には、そのものずばりの数値基準の記載は見当たりませんでした。月刊地域医学の解説が示す考え方は、数値の高さそのものよりも「諸臓器の急性障害が進行しているかどうか」を重視するものです[5]。数値だけで自己判断せず、迷ったときは医療機関や救急相談窓口に相談してください。
やってしまいがちな測定ミス——注意したい測り方の落とし穴
日本高血圧学会や国立循環器病研究センター病院の資料が挙げている、家庭血圧測定でありがちな注意点を整理しました。数値で示されている影響量はそのまま引用し、日本語の一次資料で定量化された数値が見当たらないものは「定量的な数値データなし」と明記しています。
| ありがちなミス | 何が問題か | 数値で分かっていること |
|---|---|---|
| 朝食後・服薬後に測ってしまう | 日本高血圧学会が示す朝の測定条件(起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前)から外れる[1] | 定量的な数値データなし(条件は明記されているが、ずれた場合の変化量[mmHg]の記載は見当たらず) |
| 座らずに測る・安静にせず測ってしまう | 国立循環器病研究センター病院の資料では、座った姿勢で1〜2分安静後に測ることが条件とされる[4] | 定量的な数値データなし |
| いつも違う腕で測る | 同資料によると、左右の腕で血圧値に差があることがある[4] | 左右差が10mmHg以上ある場合は、高い方の腕で測るよう案内されている[4] |
| 血圧計を腕より高い・低い位置に置く | 同資料では、血圧計は腕と同じ高さに置くことが条件とされる[4] | 定量的な数値データなし |
| きつい服の上から測る | 同資料では、腕の上部を締め付けないことが条件とされる[4] | 定量的な数値データなし |
| 測定直前まで動き回っている | 同資料によると、運動・入浴・食事・精神的緊張などで血圧は著しく変わる[4] | 測る前に5〜10分程度は安静にすることが望ましいとされている[4] |
| 手首式血圧計を使う | 日本高血圧学会の2019年一般向け解説冊子では、上腕にカフを巻くタイプの使用がすすめられている[6] | 同冊子は「手首に巻くタイプは、どうしても値が不正確になりがちなので注意して使ってください」としている[6](変化量[mmHg]としての数値データなし) |
| 脚を組んで測る | 同冊子は、イスに脚を組まずに腰掛けて測ることを条件としている[6] | 定量的な数値データなし |
| 測定中に話をする・力を入れて動く | 同冊子は、測定中は話をしない、力を入れたり動いたりしないことを条件としている[6] | 定量的な数値データなし |
| 測定前にコーヒーなどでカフェインを摂る | 同冊子は、測定前はたばこを吸わない・飲酒しない・カフェインを摂らないことを条件としている[6] | 定量的な数値データなし |
| 一機会に1回しか測らず、その1回だけで判断する | 日本高血圧学会のパンフレットでは、原則は1機会2回測定してその平均を取ることとされる[1] | 定量的な数値データなし(測定回数による具体的な差[mmHg]の記載は見当たらず) |
| 数日測っただけで「自分の血圧はこれだ」と判断する | 短期間の値は日々の変動の影響を受けやすい | 日本内科学会雑誌の解説では、正常血圧者では2日、高血圧の人では5〜7日ほどで平均が収束するとされている[2] |
| 低い値だけを選んで記録する・都合の悪い値を記録しない | 同解説では、測定のたびにすべての値を記録することが基本とされる[2] | 定量的な数値データなし(選択的な記録が診断に与える誤差量[mmHg]の記載は見当たらず) |
| 測定の直前にタバコを吸ってしまう | 国立循環器病研究センター病院の資料では、喫煙は血管を収縮させ、一時的に血圧を上げるとされている[4] | 定量的な数値データなし(上昇量[mmHg]としての記載は見当たらず、「一時的に血圧が上がる」という定性的な説明にとどまる) |
出典:日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」[1]/今井潤ほか、日本内科学会雑誌96(1)[2]/国立循環器病研究センター病院「高血圧」[4]/日本高血圧学会ほか「一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子」[6]
表の中で唯一、具体的な数値(10mmHg)が示されているのは「左右どちらの腕で測るか」という点です。国立循環器病研究センター病院の資料は、人によって左右の腕で血圧に差があり、左と右で血圧が10mmHg以上違う場合は、高い方の腕で測るよう案内しています[4]。それ以外の項目、たとえば「朝食後に測るとどれくらい数値が変わるか」「座らずに測るとどれくらい高く出るか」といった変化量そのものを定量的に示した記載は、今回参照した日本語の一次資料(学会発行資料・学会誌掲載論文)の中には見当たりませんでした。これは「影響がない」という意味ではなく、あくまで「今回確認した資料の範囲では数値化されたデータが見当たらなかった」ということです。条件が守れていないと自覚した測定値は、記録に「条件がずれた」旨のメモを添えて医師に伝えるとよいでしょう。
測定回数の指導についても、実態にはばらつきがあります。今井潤らの調査では、医師に1機会何回の測定を指導しているか尋ねたところ、1回を指導する医師が17%、2回が36%、3回が10%、特に指示しないとする医師が34%と、指導内容は一定していませんでした[2]。同調査によると、家庭血圧計を持つ高血圧有病者2,212名では、1回のみ測定するとした人が34%、2回とした人が48%、3回とした人が15%という結果でした[2]。同解説はさらに、家庭血圧の測定頻度は年齢によって異なり、若壮年者では測定頻度が少なく、高齢者では測定頻度が高い傾向があるとし、これが「少なくとも1回は測りましょう」という、より緩やかな指導が妥当だとする根拠のひとつになっていると説明しています[2]。とはいえ日本内科学会雑誌の同解説によれば、高齢者などで一機会に複数回測る場合は、その全ての値を記録するよう指導することが必要だとされています[2]。
何日測ればいいか?——「1回でも長く」が原則
日本内科学会雑誌に掲載された今井潤らの解説は、家庭血圧の評価には「一機会に複数回の測定を求めるより、一機会に1回でもよいから被験者に長期間測定を求めるべきである」という考え方を紹介しています[2]。その根拠のひとつとして、同解説は、長期間の測定の間には「平均集束効果」と呼ばれる現象が現れ、通常正常血圧者では2日、高血圧の患者では5〜7日ほどで、測定を重ねるうちに値がその人本来の血圧値に近づいていくと説明しています[2]。
同解説では、現状の家庭血圧の基準値(135/85mmHg以上)は、各機会1回目の測定値の長期間の平均値をもとに定められたものであり、2回目・3回目の測定値の平均を使うべきだという考え方には十分な根拠がまだ与えられていないとも述べています[2]。つまり日本内科学会雑誌の同解説によれば、「1回しか測れなかった日の値」も、決して捨てずにすべて記録することが基本だとされています[2]。日本高血圧学会のパンフレットも、週に5日以上測定した結果を主治医に見せることをすすめています[1]。
測定を続けるコツと環境要因
家庭血圧は「測って終わり」ではなく「続けて記録すること」に意味があります。国立循環器病研究センター病院の患者向け資料は、血圧計は定期的に、使い始めとその後は数年に1回の点検が必要だとしています[4]。血圧計本体の精度がずれていては、どれだけ条件を守って測っても意味のある記録にならないため、取扱説明書に従った点検・校正も測定条件の一部だと考えるとよいでしょう。
季節による変化にも注意が必要です。国立循環器病研究センター病院の同資料は、血圧は冬は夏より高くなる傾向があると説明しています[4]。冬場に家庭血圧が普段より高めに出たとしても、それだけで慌てて自己判断で薬を増やしたりせず、記録を続けて医師に相談することが基本です。また、国立循環器病研究センター病院の同資料では、高血圧の薬を服用している場合は、主治医の指示がない限り自分の判断で薬を調節したり中止したりしないこと、薬を途中で中止すると血圧は以前の値に戻り、時にはそれ以上に上昇して合併症を起こすことがあること、副作用や何か異常を感じたときは主治医に相談することが案内されています[4]。
血圧手帳の書き方・受診に持っていくもの
国立循環器病研究センター病院の患者向け資料は、できる限り長期間、すべての測定値を記録するよう案内しています[4]。日本高血圧学会のパンフレットも、週5日以上測定した記録を主治医に見せることをすすめています[1]。日本内科学会雑誌に掲載された今井潤らの解説も、都合の良い値だけを選んで記録するのではなく、測定したすべての値を記録し、その医学的な評価は患者自身ではなく医療者が行うという基本的な立場を忘れてはならないと強調しています[2]。
受診時に持っていくチェックリスト
- 血圧手帳(朝・晩それぞれの測定日・時刻・数値をすべて記録したもの)
- いつから家庭血圧を測り始めたか
- 現在服用中の薬の名前・量・服用時間
- 体の調子が悪かった日や、いつもと違う条件で測った日のメモ
- 血圧計の機種(上腕式か手首式か)
- 医師に聞きたいこと(家庭血圧と診察室血圧のどちらを重視すべきか、薬の調整が必要かなど)
受診の目安——いつ医師に相談すればいいか
日本高血圧学会のパンフレットが示す考え方に沿うと、受診の目安は次のように整理できます[1]。
- 同パンフレットによると、家庭血圧が135/85mmHg以上で、診察室血圧も高い(持続性高血圧)場合は、すぐに治療または治療の変更が必要とされています[1]
- 同パンフレットでは、診察室血圧は正常でも家庭血圧だけが高い(仮面高血圧)場合も、持続性高血圧と同じかそれ以上の危険度とされ、すぐに治療または治療の変更が必要とされています[1]
- 同パンフレットでは、診察室血圧だけが高く家庭血圧は正常(白衣高血圧)の場合は、今のところ緊急の治療は不要ですが、将来持続性高血圧に発展する危険性があるため、定期的な検診・検査が勧められています[1]
- 月刊地域医学の解説によると、血圧の値にかかわらず、激しい頭痛・意識障害・呂律が回らない・片側の手足に力が入らないといった神経症状を伴う場合や、諸臓器の急性障害が進行していると考えられる場合はただちに受診が必要です[5]
月刊地域医学に掲載された解説では、治療抵抗性高血圧(診療所で2〜3剤の降圧薬を投与しても有効な降圧が得られない状態)や、妊娠に関連した高血圧、臓器障害を合併した高血圧などは専門医への紹介を検討すべき病態として挙げられています[5]。同解説は、治療抵抗性高血圧が疑われる場合にまず確認すべき点として、白衣高血圧を否定するための24時間自由行動下血圧や家庭血圧の測定、血圧計の故障・不具合やマンシェットカフ幅が適正かどうかの確認、本人だけでなく家族にも服薬状況を確認するアドヒアランスのチェック、生活習慣(肥満の進行・過度の飲酒)の見直しなどを挙げています[5]。つまり「薬を増やす前に、まず正しく測れているか・正しく飲めているかを見直す」という考え方です。
また同解説は、二次性高血圧(腎実質性高血圧、腎血管性高血圧、原発性アルドステロン症など原因が特定できる高血圧)は高血圧患者の約10%にみられるとされ、特に若年者の高血圧では二次性高血圧を疑うことが重要だとしています[5]。同解説によると、家庭血圧の記録を見せる際には、いつから高血圧が始まったか、随伴症状の有無、家族歴、内服薬なども併せて医師に伝えることがすすめられています[5]。自己判断で薬をやめたり量を変えたりせず、記録した家庭血圧の推移を持って、まずはかかりつけの医師に相談することが基本です。
まとめ——家庭血圧の測り方で押さえておきたいこと
家庭血圧の測り方で最も大切なのは、特別な技術ではなく「同じ条件を、できるだけ長く続けること」です。日本高血圧学会のパンフレットによると、朝は起床後1時間以内・排尿後・朝食前・服薬前、晩は就寝直前という2つのタイミングを固定し、そのたびに1〜2分は座って安静にしてから、上腕式の血圧計で測ることが基本とされています[1]。同パンフレットでは、1機会につき原則2回測定してその平均を取りますが、日本内科学会雑誌の解説によれば、1回しか測れなかった日も含めて、すべての値をありのまま記録することがすすめられています[1][2]。同解説によると、これを週5日以上、できれば数週間・数ヶ月という単位で続けることで、正常血圧者では2日、高血圧の人では5〜7日ほどで、その人本来の血圧値に近い値が見えてきます[2]。
そして、日本高血圧学会の基準では、家庭血圧が135/85mmHg以上であれば、たとえ診察室血圧が正常であっても油断はできません[1]。同学会は、診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による判定を優先するとしています[3]。記録した血圧手帳を持って、まずはかかりつけの医師に相談することが、家庭血圧測定を意味のあるものにする最後の一歩です。
よくある質問
家庭血圧と病院の血圧、どちらを信じればいいですか?
家族の分もまとめて1台の血圧計で測っても大丈夫ですか?
参考文献
- 特定非営利活動法人日本高血圧学会「家庭で血圧を測定しましょう」(家庭血圧測定パンフレット) https://www.jpnsh.jp/data/selfmonitoring.pdf
- 今井潤、大久保孝義、菊谷昌浩、橋本潤一郎「家庭血圧測定の指針とその臨床応用」日本内科学会雑誌96巻1号:86-93頁、2007年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/1/96_1_86/_pdf/-char/ja
- 日本高血圧学会高血圧治療ガイドライン作成委員会「高血圧治療ガイドライン2019 CQ1」 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019/CQ1.pdf
- 国立循環器病研究センター病院「高血圧」(文責:河野雄平) https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/hypertension-2/
- 堀井学「こんな高血圧は紹介しよう」月刊地域医学28巻1号:36-39頁、2014年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiikiigaku/28/1/28_36/_pdf/-char/ja
- 特定非営利活動法人日本高血圧学会・特定非営利活動法人日本高血圧協会・認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML「一般向け『高血圧治療ガイドライン2019』解説冊子」2019年10月25日発行 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf
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更新日:2026年7月21日。本記事の内容に誤りや古い情報があれば、お気づきの点をお問い合わせフォームよりご連絡いただけますと幸いです。
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