糖尿病で太る薬・痩せる薬の違いと体重管理法
この記事でわかること
目次
- 糖尿病で太りやすいと感じる仕組み——インスリン抵抗性と治療薬の同化作用
- 治療前・血糖コントロール不良の高血糖はむしろ痩せる——見落とされがちなもう一つの体重変化
- 体重が「増えやすい」治療薬——インスリン製剤とSU薬の特徴
- 肥満とインスリン抵抗性の関係——なぜ体重増加が糖尿病を悪化させることがあるのか
- 体重が「増えにくい・減りやすい」治療薬——SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・メトホルミン
- 肥満を伴う糖尿病では、どの薬が積極的に検討されるのか
- やせる目的で糖尿病治療薬を自己判断で使ってはいけない理由
- 日本のガイドラインが示す体重管理の目標と具体的な方法
- 受診時に持参できるチェックリスト(印刷用)
- よくある質問
- あわせて読みたい
- 参考文献
結論から言うと、糖尿病になると必ず太るわけではありません。体重が「増えやすいか・減りやすいか」は病気そのものよりも、使っている治療薬の種類で大きく変わります。日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」では、インスリン製剤は同化作用により体重増加をもたらすとされ、1型糖尿病患者を対象としたDCCT研究では強化インスリン療法群で体重の増加が平均4.6kg多かったと報告されています[2]。一方でSGLT2阻害薬は「体重も減少させた」、GLP-1受容体作動薬は「体重増加の抑制」や「体重減少効果」が確認されており[1]、同じ「糖尿病の薬」でも体重への影響は正反対です。
この症状、いつ受診すべきか確認しますか?
回答に合わせて必要な質問だけを表示します。診断は行いません。
症状はいつから続いていますか?
回答により質問数が変わります・途中でいつでも記事に戻れます
さらに、糖尿病標準診療マニュアル2026のガイドラインによれば、治療を始める前の高血糖そのものが体重減少の原因になることもあります[4]。「太った」「痩せた」どちらの変化も自己判断で片づけず、この記事で仕組みを理解したうえで、必ず主治医に相談してください。
要点まとめ
- 体重が「増えやすい」薬はインスリン製剤とSU薬。同化作用や食欲亢進が関係し、DCCT研究では体重増加が平均4.6kg多かった[2]
- 体重が「増えにくい・減りやすい」薬はSGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・メトホルミン・DPP-4阻害薬[1]
- 治療前・血糖コントロール不良の高血糖はむしろ「口渇・多飲・多尿・体重減少」という典型症状を起こす[4]
- 体重減少に悪心・嘔吐・倦怠感を伴う場合はケトアシドーシスの可能性があり、すぐに医療機関へ連絡が必要[4]
- やせる目的でGLP-1受容体作動薬を自己判断で使うことは、同マニュアルのガイドラインで適応外とされており、薬の変更・中止は必ず主治医と相談する[4]
編集方針:JHO編集部がAIツールの支援を受け、日本糖尿病学会・日本糖尿病生活習慣病ヒューマンデータ学会・厚生労働省など公的機関・学会のガイドラインと照合して作成しました。最終確認は人の目で行っています。医師による個別診断・処方判断の代わりにはなりません。薬剤情報はガイドライン改定や新薬承認により変わることがあります(2026年7月時点の情報)。
更新日:2026年7月18日。誤りや古い情報にお気づきの際は、お問い合わせフォームよりお知らせください。事実を確認のうえ訂正いたします。
🔧 薬剤別・体重への影響 早見表
| 薬剤分類 | 体重への影響 | 主な機序 |
|---|---|---|
| インスリン製剤 | 増加しやすい | 同化作用(ブドウ糖・脂肪の体内への取り込み促進)[2] |
| SU薬(グリメピリド等) | 増加しやすい | インスリン分泌促進。食事・運動療法がおろそかになると増加しやすい[1] |
| チアゾリジン薬(ピオグリタゾン) | 増加しやすい | 体液貯留作用と脂肪細胞の分化促進作用[1] |
| ビグアナイド薬(メトホルミン) | 増えにくい(中立) | 低血糖を起こしにくく、体重も増えにくい[1] |
| DPP-4阻害薬 | 増えにくい(中立) | 基本的には体重を増加させにくい[1] |
| SGLT2阻害薬 | 減少しやすい | 尿中へのブドウ糖排泄増加により体重が減少すると考えられる[1] |
| GLP-1受容体作動薬 | 減少しやすい | 食欲抑制作用が関与している可能性がある[1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第5章・第6章[1][2]/JHO編集部が作表。あなたが実際に使っている薬でどちらに当てはまるかは、お薬手帳やお薬説明書の分類名で確認してください。自己判断での薬の変更・中止はしないでください。
糖尿病で太りやすいと感じる仕組み——インスリン抵抗性と治療薬の同化作用
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第5章・第6章[1][2]/JHO編集部が作図
「糖尿病になってから太った」と感じる人が多いのは事実ですが、これは糖尿病という病気そのものが直接体重を増やすわけではなく、多くの場合は治療薬の作用が関係しています。日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」は、インスリン療法の副作用として、低血糖・体重増加・網膜症の悪化・インスリンアレルギー・インスリン抗体の産生・皮下硬結などを挙げたうえで、「インスリンの過剰投与により、肝臓からの糖放出の抑制や末梢組織における糖利用が促進・維持されることによって低血糖をきたす。また、インスリンの同化作用が体重増加をもたらす」と、同学会のガイドラインは説明しています[2]。同化作用とは、血液中のブドウ糖を筋肉や脂肪組織に取り込ませてエネルギーとして貯蔵する働きのことで、血糖コントロールには不可欠な作用である一方、貯蔵が脂肪として進めば体重増加につながります。
実際の臨床データとして、1型糖尿病患者を対象としたDCCT(The Diabetes Control and Complications Trial)研究では、従来インスリン療法群に比べて強化インスリン療法群において重篤な低血糖が約3.3倍多くみられ、また体重の増加が平均4.6kg多かったと報告されています[2]。また、経口血糖降下薬を使用中の2型糖尿病患者を対象とした4-T studyでは、経口血糖降下薬と持効型溶解インスリン製剤との併用群に比べて、経口血糖降下薬とボーラスインスリン(1日3回注射)との併用群において総インスリン量の増加がみられ、低血糖の頻度と体重の増加が観察されたことが、日本糖尿病学会のガイドラインで報告されています[2]。同じく2型糖尿病患者を対象としたThe United Kingdom Prospective Diabetes Study(UKPDS)33・34では、SU薬による治療群に比べてインスリン療法群において体重増加が大きかったと報告されています[2]。これらの研究は、血糖コントロールを厳格にするほど、より多くのインスリンや強力な薬剤が必要になり、その分だけ体重が増えやすくなるという構図を示しています。
SU薬(スルホニル尿素薬)についても、日本糖尿病学会のガイドラインは「インスリン分泌の保たれている患者では血糖降下作用を発揮しやすいが、その反面、低血糖を起こしやすい。また、食事療法、運動療法がおろそかになると体重増加が起こりやすい」と説明しています[1]。さらに「食事療法、運動療法が疎かになると体重が増加しやすいため、高度の肥満などインスリン抵抗性の強い患者にはよい適応ではない」と、同学会のガイドラインでも述べられており[1]、もともと肥満やインスリン抵抗性が強い人にSU薬を使う場合には、体重面での注意がより必要になります。チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)も同様に、「体液貯留作用と脂肪細胞の分化促進作用があるため、体重がしばしば増加し、ときに浮腫を認める」と日本糖尿病学会のガイドラインで説明されており[1]、糖尿病標準診療マニュアル2026でも「体重増加・浮腫に注意して最少量から投与開始する」という処方上の注意が、同マニュアルに明記されています[4]。なお糖尿病標準診療マニュアル2026のガイドラインは、チアゾリジン薬をメトホルミンと併用した場合には「体重増加は軽減」するとも記載しています[4]。日本糖尿病学会のガイドラインはチアゾリジン薬の作用機序についてさらに詳しく、「脂肪細胞の分化を促して白色脂肪細胞における脂肪蓄積を促進させ、これにより、肥満に伴う骨格筋や肝臓の異所性脂肪蓄積を改善する」と説明しており[1]、体重自体は増えても、脂肪のつき方が変わることでインスリンの効きがよくなる場合があるという、単純な「太る=悪い」では説明しきれない側面も示されています。ただし副作用として「体液貯留作用と脂肪細胞の分化を促進する作用があるため、体重がしばしば増加し、ときに浮腫を認める」ことに加えて、「循環血漿量の増加により心機能を悪化させる可能性があり、心不全やその既往がある場合は投与禁忌」であること、「再現性をもって骨折の増加が認められて」おり、特に閉経後の高齢女性では使用の可否を慎重に検討する必要があると、同学会のガイドラインは注意を促しています[1]。
今の血圧・脈拍を確かめる
数値を入れると、日本高血圧学会の血圧値の分類と「次にすること」を表示します。記録はこの端末の中だけに保存され、登録は不要です。
身長と体重からBMIも調べる
血圧手帳(この端末に保存)
これは診断ではありません。入力された数値を日本高血圧学会の血圧値の分類(高血圧の基準は診察室 140/90mmHg以上・家庭 135/85mmHg以上)に当てはめて「受診の目安」を機械的に示すもので、医師の診察に代わるものではありません。日本高血圧学会「高血圧管理・治療ガイドライン2025」では、降圧目標は年齢によらず診察室 130/80mmHg未満・家庭 125/75mmHg未満とされています。脈拍の目安は学会の分類ではなく一般的な参考範囲です。
治療前・血糖コントロール不良の高血糖はむしろ痩せる——見落とされがちなもう一つの体重変化
「糖尿病=太る」というイメージが強いものの、実際には治療を始める前や血糖コントロールが乱れているときには、逆に体重が減ることがあります。日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会「糖尿病標準診療マニュアル2026」が示す糖尿病の診断基準では、糖尿病の典型的症状として「口渇,多飲,多尿,体重減少」の4つが並んで挙げられており、血糖値が「糖尿病型」を示し、かつこれらの典型的症状が存在する場合には糖尿病と診断するとされています[4]。つまり体重減少は、糖尿病そのものの代表的なサインの一つとして、医学的にも明記されている症状です。
この体重減少は、血糖値が高い状態が続くことで、体が本来利用できるはずのブドウ糖を細胞に取り込めなくなり、脂肪や筋肉を分解してエネルギーを得ようとすることや、尿から余分な糖を排泄する際に水分も一緒に失われることが関係していると考えられています。特に、体重減少に全身倦怠感や悪心・嘔吐を伴う場合は注意が必要です。糖尿病標準診療マニュアル2026は、SGLT2阻害薬服用中の患者について「全身倦怠・悪心嘔吐・体重減少などを伴う場合には、血糖値が正常に近くてもケトアシドーシスの可能性があるので、尿ケトン体を確認し、持続する場合に、血中ケトン体を検査すること」と、同マニュアルのガイドラインは注意を促しています[4]。血糖値が正常に近くてもケトアシドーシス(正常血糖ケトアシドーシス)が起こりうるという点は見落とされやすく、体重減少・倦怠感・嘔吐が重なった場合には、血糖値だけで安心せず速やかに医療機関へ連絡することが重要です。
厚生労働省の生活習慣病ポータルサイト「e-ヘルスネット」も、肥満は糖尿病のリスクを高める一方で、「日本人ではやせていても糖尿病になりやすい人がいます」と説明しています[5]。欧米人に比べてもともとインスリン分泌能が低い体質の人が多いとされる日本人では、体重が重いかどうかだけで糖尿病のリスクや体重変化のパターンを判断することはできません。「太っているから糖尿病になった」「痩せているから糖尿病とは無縁」という単純な図式ではなく、体質・治療薬・生活習慣が複雑に絡み合って体重が変化することを理解しておく必要があります。
体重が「増えやすい」治療薬——インスリン製剤とSU薬の特徴
| 薬剤 | 体重増加に関する記述 | 出典 |
|---|---|---|
| インスリン製剤 | 同化作用が体重増加をもたらす。DCCT研究で強化療法群の体重増加が平均4.6kg多い | [2] |
| SU薬 | 食事・運動療法がおろそかになると体重増加が起こりやすい。高度の肥満・インスリン抵抗性の強い患者には良い適応ではない | [1] |
| チアゾリジン薬 | 体液貯留作用と脂肪細胞の分化促進作用により体重がしばしば増加、ときに浮腫を認める | [1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第5章・第6章[1][2]
インスリン療法は、血糖値をしっかり下げる効果が高い一方で、体重増加という副作用と表裏一体の関係にあります。これはインスリンが本来持つ「エネルギーを体に取り込み、貯蔵する」という生理的な働きの延長線上にあるためで、薬の効果が弱いから太るのではなく、むしろ効果がしっかり出ているからこそ、余ったエネルギーが体脂肪として蓄積されやすくなる、という側面があります。SU薬もインスリンの分泌を強く促す薬であるため、同様の傾向があります。ただし、糖尿病診療ガイドライン2024は、SU薬による体重増加は「食事療法、運動療法がおろそかになると」起こりやすいとも述べており[1]、薬の作用だけでなく食事・運動療法を継続できているかどうかが体重の変化に影響することを示しています。インスリンやSU薬を使っていて体重が気になる場合、自己判断で量を減らしたり中止したりすると血糖コントロールが急激に悪化し、高血糖やケトアシドーシスのリスクが高まるため、必ず主治医に相談したうえで、食事量や運動量、薬の種類の見直しを検討してもらうことが大切です。
肥満とインスリン抵抗性の関係——なぜ体重増加が糖尿病を悪化させることがあるのか
糖尿病標準診療マニュアル2026は、2型糖尿病の発症について「β細胞量の減少によるインスリン分泌低下やインスリン抵抗性をきたす素因を含む複数の遺伝因子、過食・運動不足・肥満などの環境因子、加齢などが関係している」と、同マニュアルのガイドラインは説明しています[4]。インスリン抵抗性とは、インスリンというホルモンが体内で分泌されていても、筋肉や肝臓、脂肪組織がその作用を受け取りにくくなっている状態のことです。体重が増え、特に内臓脂肪が蓄積すると、脂肪組織から分泌される物質のバランスが変化し、インスリンの効きが悪くなりやすいことが知られています。インスリンの効きが悪くなると、体はより多くのインスリンを分泌して血糖値を保とうとし、その結果、体内を巡るインスリンの量そのものが増え、さらに脂肪が蓄積しやすくなる、という悪循環に陥ることがあります。
この悪循環は、治療薬による体重増加とも関係します。インスリン製剤やSU薬でインスリンの量・作用を強めると血糖値は下がりますが、同時に同化作用によって体重が増えやすくなり、増えた体重(特に内臓脂肪)がさらにインスリン抵抗性を強める可能性があります。日本糖尿病学会のガイドラインがSU薬について「高度の肥満などインスリン抵抗性の強い患者にはよい適応ではない」としているのは[1]、まさにこの悪循環を避けるための考え方です。逆に、メトホルミンは「末梢組織でのインスリン感受性を高める」ことで血糖値を下げる薬であるため、体重を増やさずにインスリン抵抗性そのものを改善する方向に働くと、同学会のガイドラインは述べています[1]。どの薬を使うにしても、体重・食事・運動という土台を整えることが、薬の効果を十分に引き出すためにも重要だとされています。
体重が「増えにくい・減りやすい」治療薬——SGLT2阻害薬・GLP-1受容体作動薬・メトホルミン
| 薬剤 | 体重に関する記述 | 出典 |
|---|---|---|
| SGLT2阻害薬 | 尿中へのブドウ糖排泄増加により体重が減少すると考えられる。国内臨床試験で低血糖の発症頻度を増やさずHbA1cを有意に低下、体重も減少 | [1] |
| GLP-1受容体作動薬(注射・経口) | メタ解析で体重増加の抑制を確認。食欲抑制作用が関与している可能性。経口セマグルチドは有意な体重減少効果 | [1] |
| ビグアナイド薬(メトホルミン) | 単剤では低血糖を起こしにくく、体重も増えにくいという利点がある | [1] |
| DPP-4阻害薬 | 基本的には体重を増加させにくい | [1] |
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第5章[1]
SGLT2阻害薬は、腎臓の近位尿細管でのブドウ糖の再吸収を抑制し、余分な糖を尿として体外に排泄させることで血糖値を下げる薬です。糖尿病診療ガイドライン2024は「尿中へのブドウ糖排泄の増加により体重が減少すると考えられる」としたうえで、「国内の臨床試験では、低血糖の発症頻度を増加させることなく、HbA1cを有意に低下させ、体重も減少させた」と報告しています[1]。さらに「メトホルミンやインスリン療法中の患者に併用しても低血糖の発現頻度を増加させることなく、単独投与とほぼ同様の血糖降下作用や体重減少効果を認めた」ともされ[1]、インスリンで体重が増えやすくなっている人にSGLT2阻害薬を追加することで、体重増加を相殺する狙いで使われる場合もあります。ただし中等度の腎機能障害がある場合には血糖コントロール改善効果が弱まる可能性があることや、性器感染症・体液量減少・急性腎障害などの副作用に注意が必要であることも同ガイドラインは指摘しています[1]。
GLP-1受容体作動薬は、血糖値に応じてインスリン分泌を促し、同時にグルカゴン分泌を抑えることで血糖値を改善する薬です。糖尿病診療ガイドライン2024は「メタ解析では対照群と比較して、HbA1c改善および体重増加の抑制が認められた。この効果には、GLP-1受容体作動薬の食欲抑制作用が関与している可能性がある」と説明しています[1]。経口のセマグルチドについても「他の経口血糖降下薬と比べて有意なHbA1c低下効果と体重減少効果を認めており、服薬アドヒアランスの点からもその有用性が期待される」と、同学会のガイドラインはまとめています[1]。週1回注射のGIP/GLP-1受容体デュアルアゴニストであるチルゼパチドについても、日本人2型糖尿病患者を対象とした臨床第Ⅲ相試験で「用量依存的な体重減少を認めた」と報告されています[1]。主な副作用は悪心・便秘・下痢・食欲減退などの消化器症状で、低用量から開始して徐々に増量することが推奨されています[1]。
メトホルミン(ビグアナイド薬)は、肝臓からのブドウ糖放出を抑え、筋肉を中心とした末梢組織でのインスリン感受性を高めることで血糖値を改善する薬です。ガイドラインは「単剤では低血糖を起こしにくく、また体重も増えにくいという利点がある」としています[1]。DPP-4阻害薬についても「基本的には体重を増加させにくい」とされており[1]、体重増加を避けたい場合の選択肢の一つとして位置づけられています。
肥満を伴う糖尿病では、どの薬が積極的に検討されるのか
肥満を伴う2型糖尿病患者に対して、実際の診療現場でどのように薬剤が選ばれているかについても、糖尿病標準診療マニュアル2026には具体的な記載があります。SGLT2阻害薬については、「心血管疾患の既往,心不全,微量アルブミン尿・蛋白尿,肥満を有する場合は積極的に投与開始してよい」と、同マニュアルのガイドラインは示しています[4]。同様に経口GLP-1受容体作動薬(セマグルチド)についても、「心血管疾患の既往,肥満を有する場合は積極的に投与開始してよい」と、同マニュアルのガイドラインに記載されています[4]。つまり、肥満を伴う2型糖尿病であることは、これらの薬剤を選ぶ際の積極的な理由の一つとして、すでにガイドラインに位置づけられているということです。
経口セマグルチドの具体的な使い方についても、同マニュアルは「1日1回3mgから開始し、4週間以上投与した後、1日1回7mgに増量する。1日1回7mgを4週間以上投与しても効果不十分な場合には、1日1回14mgに増量することができる」と、同マニュアルのガイドラインはしたうえで[4]、「服用の直前に錠剤をシートから取り出す」「空腹時に約120ml以下の水で服用し、服用時および服用後30分は飲食および他の薬剤の服用を避ける」といった、吸収率を保つための細かな服用ルールを、同マニュアルのガイドラインは示しています[4]。また「DPP-4阻害薬との併用は避ける」とも同マニュアルに明記されており[4]、体重に良い影響が期待できる薬同士であっても、組み合わせ方には専門的な判断が必要であることがわかります。一方でSGLT2阻害薬は、1型糖尿病患者の使用にはケトーシスやケトアシドーシスなどのリスクが伴うことを十分に認識すべきであり、専門医に紹介することが望ましいと、同マニュアルのガイドラインはしており[4]、腎機能(eGFR)によって開始・継続の可否も同マニュアルに細かく規定されています[4]。体重への影響だけを見て自分に合う薬を判断するのではなく、心血管疾患・腎機能・1型か2型か・他の合併症の有無など、多くの条件を踏まえたうえで主治医が薬剤を選んでいることを理解しておくとよいでしょう。
🚦 受診の目安——体重の変化ですぐに医療機関へ相談すべきサイン
やせる目的で糖尿病治療薬を自己判断で使ってはいけない理由
SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬に体重減少効果があることが知られるようになり、糖尿病ではない人が「やせ薬」として自由診療でこれらの薬を使う例が問題になっています。糖尿病標準診療マニュアル2026は、肥満症治療薬の安全・適正使用について「2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬を美容・痩身・ダイエット等を目的として自由診療で処方するのは適応外である」と、同マニュアルのガイドラインに明記しています[4]。肥満症そのものへの治療薬としてはセマグルチド製剤(ウゴービ皮下注)やチルゼパチド製剤(ゼップバウンド皮下注)が別途承認されていますが、これらの使用にあたっても「厚生労働省の最適使用推進ガイドラインや日本肥満学会の『肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント』を遵守すること」とされ[4]、糖尿病治療薬を美容目的で流用することとは明確に区別されています。同マニュアルは「不適切な薬物療法によって患者の健康を脅かす危険を常に念頭に置き、誤解を招きかねない不適切な広告表示や処方を厳に戒め、国内承認状況を踏まえた薬剤の適正な処方を行うこと」とも、同マニュアルのガイドラインは注意を促しています[4]。
体重が増えている場合も同様に、自己判断でインスリンやSU薬を減らしたり中止したりすることは避けてください。糖尿病診療ガイドライン2024が示すように、インスリンやSU薬の体重増加作用は血糖コントロール効果と表裏一体であり、量を減らせば血糖値が上がり、高血糖の症状や合併症のリスクが高まる可能性があります[1][2]。体重の変化が気になるときは、薬の種類そのものを見直せる場合もあるため、自己判断で薬を操作するのではなく、必ず主治医や薬剤師に相談し、食事・運動療法の見直しや薬剤の変更を検討してもらうことが遠回りのようで最も安全な方法です。
日本のガイドラインが示す体重管理の目標と具体的な方法
日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会「糖尿病標準診療マニュアル2026」は、過体重・肥満を伴う2型糖尿病の血糖コントロールのためにエネルギー摂取量の制限が推奨されるとしたうえで、「BMI 25 kg/m2以上の場合、一般に5%以上の減量が目標」としています(ただし75歳以上の後期高齢者では、フレイルやADL低下、身長の短縮なども考慮したうえで現体重に基づいて判断すると、同マニュアルのガイドラインはしています)[4]。BMIは体重(kg)を身長(m)の2乗で割って求める体格指数で、25以上が肥満の目安と、同マニュアルのガイドラインはしています[4]。5%の減量という目標は、例えば体重70kgの人であれば3.5kg程度に相当し、極端な急減量ではなく、無理のないペースでの継続的な減量が想定されています。
運動療法についても、同マニュアルは具体的な目安を示しています。「歩行なら1回15〜30分間、1日2回(1日の歩数約8,000〜9,000歩)、週に3日以上が望ましい」としたうえで、「ただし、日常生活において身体活動量を増やすだけでも長期間継続すれば効果がある」と、同マニュアルのガイドラインは補足しています[4]。また「レジスタンス運動も血糖管理に有効であり、歩行運動などと併用すると相加効果がある」とも、同マニュアルのガイドラインはしており[4]、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることが推奨されています。座りっぱなしの時間についても、同マニュアルは「日常の座位時間が長くならないようにして、軽い活動を合間に行うことが勧められる」と、同マニュアルのガイドラインはしています[4]。ただし、空腹時血糖値250mg/dl以上・尿ケトン体陽性・眼底出血・腎不全・心疾患・骨関節疾患・壊疽・急性感染症・高度の自律神経障害などがある場合は、運動を禁止・制限すべきと、同マニュアルのガイドラインはしているため[4]、運動療法を始める前や強度を上げる前には、必ず主治医に体の状態を確認してもらってください。
食事療法については、糖尿病標準診療マニュアル2026は「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」(日本糖尿病学会編)を参照するよう案内したうえで、「管理栄養士による支援が有用である」としています[4]。興味深いことに、同マニュアルは「個別化が必要であるが、適正な総エネルギー量の推算式や三大栄養素の比率についてのエビデンスはない」とも明記しています[4]。つまり、「1日の摂取カロリーはこの計算式で」「炭水化物・たんぱく質・脂質の割合はこの比率で」といった、万人に当てはまる唯一の正解があるわけではなく、年齢・体格・活動量・合併症の有無などをふまえて個別に組み立てる必要がある、というのが現時点でのガイドラインの立場です。また同マニュアルは、「2型糖尿病の血糖コントロールのために、6〜12ヵ月以内の短期間であれば炭水化物制限は有効である」としつつ[4]、「不規則な食事摂取は高血糖の一因となる」とも注意を促しています[4]。極端な糖質制限や欠食を自己流で続けるのではなく、栄養バランスと食事のリズムの両方を意識することが、体重・血糖の両方の管理につながると考えられます。
体重管理の基本は、薬の種類にかかわらず「食事療法・運動療法をベースにしたうえで、必要な薬物療法を組み合わせる」ことです。体重が増えやすい薬を使っている場合でも、食事量や間食の見直し、日々の歩数を増やす工夫などによって、増加をある程度抑えられる可能性があります。逆に体重が減りやすい薬を使っている場合でも、極端な食事制限を重ねると、必要な栄養やエネルギーまで不足してしまうことがあるため、管理栄養士による栄養指導が、同マニュアルのガイドラインで有用とされています[4]。
受診時に持参できるチェックリスト(印刷用)
- 体重の変化はいつから、何kgくらいか(できれば時系列のメモ)
- 現在使っている糖尿病治療薬の名前(お薬手帳を持参)
- 体重減少の場合:口渇・多飲・多尿・倦怠感・悪心嘔吐の有無
- 体重増加の場合:食事量・間食・運動量に変化がなかったか
- 低血糖症状(動悸・冷や汗・強い空腹感)を経験したことがあるか
- 医師に確認したいこと(今の薬は体重が増えやすい/減りやすいタイプか、薬の変更は可能か)
体重変化の個人差については、薬剤の種類・用量・併用薬・遺伝的な体質・食事内容・活動量など多くの要因が絡み合うため、「この薬を使えば必ず何kg変化する」といった一律の予測は、今回参照した資料には記載が見当たりませんでした。同じ薬を使っても体重の変化には個人差があることを踏まえ、実際の体重の推移は主治医とともに定期的に確認することが大切です。
よくある質問
SGLT2阻害薬やGLP-1受容体作動薬は「やせ薬」として使えますか?
体重を増やしたくない場合、どの薬を選べばよいですか?
体重を5%減らすとどんな効果がありますか?
痩せ型なのに糖尿病と言われました。太っていないのに太りやすい薬を使う意味はありますか?
糖質制限をすれば薬に頼らず体重も血糖値も改善できますか?
参考文献
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第5章 血糖降下薬による治療(インスリンを除く)2024年 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/05.pdf
- 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2024」第6章 インスリンによる治療 2024年 https://www.jds.or.jp/uploads/files/publications/gl2024/06.pdf
- 日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会「糖尿病標準診療マニュアル2026」2026年 https://human-data.or.jp/wp-content/uploads/2026/03/dm_manual_2026.pdf
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「糖尿病」健康日本21アクション支援システム https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/metabolic/m-05-002.html
📚 糖尿病についてもっと知る
この記事について(運営者情報・免責事項) タップで表示
医療情報に関する重要なお知らせ
本記事はAI技術を活用し、厚生労働省・WHO等の公的医療機関の情報に基づいて作成されています。医療専門家による個別の監修は受けておりません。健康上の判断や治療については、必ず医師にご相談ください。詳しくは編集ポリシーをご覧ください。
